第17巻は、昔トルフィンにより自身の家族を殺された女猟師・ヒルドが偶然にもトルフィン達と遭遇します。彼等に毒を飲ませたヒルドは、解毒剤を条件にトルフィンに勝負を申し出ます。エイナル達の命を救う為にトルフィンは一人、ヒルドとの勝負に挑みますが…。
漫画『ヴィンランド・サガ』17巻には第116話～第122話までが収録されています。
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漫画『ヴィンランド・サガ』16巻ネタバレや感想など｜過去に縛られるトルフィン
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目次
第116話 狩る者狩られる者③
女猟師・ヒルドのボウガンの矢が、彼女の親の敵であるトルフィンに向けられるも、エイナルがスキを見て焚き火の鍋をヒルドのボウガンに投げ付け、必死にトルフィンを守ろうとします。ヒルドも引き下がらず、一歩でも動いた者から撃つとボウガンを構え続けます。
更に、“こいつが私にした仕打ちを、私に吐いた言葉を『昔の言葉』で片付けられてたまるか”とし、“嫌でも思い出させてやるぜ”と言い取り出したのは『解毒剤』の入った小ビンでした。彼等が先程食した熊の肉を煮た鍋汁の中には毒が入っていたのでした。
ヒルドは、自分と仲間の命が惜しかったら、自分から『解毒剤』を奪いに来る様に勝負を申し出て、その場を去ります（トルフィンのみ来る様に言いました）。
周りが慌てふためく一方、トルフィンは背中に背負っていたカルリをエイナルに委ね、“誰も死なせないし、オレも死なない、『最後の手段』がきっと見つかるはずだ”として一人、ヒルドとの勝負へ向かいます…。
ヒルドは“昔の残酷だった頃のトルフィン”を知っており、エイナル達は“今の優しいトルフィン”しか知らないので和解に難しい状態ですね。現実の世界でも、『最後の手段』が恐怖の選択にならない事を願いたいですね。
第117話 狩る者狩られる者④
鳥がさえずりウサギが飛び跳ねるなか、トルフィンは一人立ち止まり、“ヒルドさん、聞こえてますか⁉オレはあなたと…あなたのご家族に取り返しのつかない事をしました。虫のいい事を言っているのは承知しています。
でも、どうか生きて償う為の時間をオレにください!!”と叫びますが、その瞬間彼に向かって矢が飛んできます。
トルフィンも雪道の足跡をもとにヒルドを追いかけるも、“止め足”（追う者を惑わす術の一つで、足跡を踏んで後退し、茂み等に飛び込む事により足跡が途絶えた様に見える）を使われたり、ボウガンを使用した罠を仕掛けられたり、一枚上手でした。
トルフィンは木の陰に隠れ、矢が刺さった腕の治療を行いました。目の前にあった洞窟の奥を見たトルフィンの目には、自分が殺した者の霊が恨むごとく泣き叫ぶ姿が見えているかの様でした…。
トルフィンが過去に行ったリスクは大きい様で、一生これは付いて回るのかなと感じました。拭い去ろうともぬぐい切れないリスクとして…。
第118話 狩る者狩られる者⑤
トルフィンの訴えに対し、ヒルドは彼を赦す気は無く“なら私の家族を全員生き返らせろ、それができないなら死んで償え”と呟いていたのでした。ヒルドの父親は村で船等を作る工場を営んでいて、彼女も仕事を手伝いつつ、家族4人で幸せに暮らしていました。
しかしそんな日々も長く続かず、ある日皆で食事をしている時に突然、村がアシェラッド率いる軍隊に襲われます。ヒルドの家族も、彼女の母親が玄関で突然兵士に槍で襲撃されてしまいました。
ヒルドの父・フラヴンケルはハンマーを構え、ヒルドと彼女の妹・フレヴナに森まで逃げる様に叫びます。ヒルドは無我夢中で暗い森の奥まで逃げるも、妹・フレヴナとはぐれてしまいます。
ヒルドは必死で妹の名を叫んでいた時、突如何者かが彼女の口を塞ぎ、見ると血まみれになった父・フラヴンケルでした。
フラヴンケルは、彼女を抱きしめ“よく聞きなさいヒルド、そして忘れてはならない。お前がこの先、恨みと怒りに押し潰されそうになった時、イエス様の言葉を思い出すんだ、人を赦しなさい、赦す心だけがお前を救ってくれる”と伝え、これが彼の最後の言葉となりました…。
人生を狂わされたヒルドにとって、父・フラヴンケルが残した言葉は人生最大のメッセージだと思われます。そうなると、ヒルドは目の前のトルフィンと共に自分自身と戦っていると考えられます。
第119話 狩る者狩られる者⑥
フラヴンケルとヒルドの前に現れたのは、冷徹な顔をしたトルフィンでした。フラヴンケルがハンマーを振り上げるも、いとも簡単にかわしトルフィンのナイフがフラヴンケルの首筋に刺さり、大量の血が吹き出ると共にその場で倒れ込みます。
もはや一瞬の出来事で、“娘を一人にはさせない”というフラヴンケルの願いは脆くも崩れ去り、娘・ヒルドも目の前で起きた現実を受け入れる事ができませんでした。
そんな彼女にトルフィンは、“これァ狩りだ、強ェ奴が弱ェ奴を狩る、当然の事だ”、恨むならテメエの弱さを恨むな”と冷たく言い放ちます。
そのうち数人の兵士達が集まって来て、トルフィンはヒルドを平手打ちし早くこの場を去る様に言います。追いかける兵士から必死に逃げる様に走るヒルドでしたが、途中で足を滑らせ、崖の下に落ちてしまいます。
薄れゆく意識の中で“人を赦しなさい、お前ならできる”という父・フラヴンケルの言葉がよぎると共に家族を奪ったトルフィンや兵士達を赦す事ができない自分自身の姿もありました。
ふと目を覚ますと、頭と左足が手当てされた状態で、目の前には老いた猟師の姿がありました…。
運命は時に今後の人生を残酷にさせるものだという事を実に痛々しく描いている回だと思いました。この出来事さえなければ…なんて事は人生で必ず一度や二度はありますが、家族や幸せを奪われる程辛いものは無いと思います。
第120話 狩る者狩られる者⑦
ヒルドは一人の老猟師に助けられ、彼から狩りの伝授を願い出ますが、猟師への道は容易ではありませんでした。
動物が荒らした木や足跡を見て“何の動物が何頭どの行動を取ったか”を読む事も求められ、弓矢においても（通りかかるウサギを撃てずに）迷いが生じ、中々上手くいきませんでした。しかし、血のにじむ様な練習を重ね、何度も（木で作った）的の中心を当てられるまでに上達します。
ヒルドは“師匠（ヒルドを助けた老猟師）の弓を触らせて頂けませんか”と、『弩（ボウガンの様なもの）』を借り矢を放つと、木の的は粉々に砕けました。
その威力に驚く彼女に、猟師は矢を装着する様に指示します。予想以上に弩は重く、女性一人の手に負えませんでした。それでも“作ってみます、女の私にも扱える弩を…”と自ら設計図を描き、町の職人の協力も得て“自分特製の弩”を作り上げていきます。
そんなある夜、ヒルドと猟師が山へ熊を狩りに行った時の事です。“怒りを捨てろ、ヒルド”、それが猟師のヒルドへ交わした最後の言葉でした…。
復讐する事に憑りつかれる様に鍛錬に鍛錬を重ねていたヒルドでしたが、教えを受けた師匠である猟師からも怒りを捨てる様に言われた事は、驚きだったのでないでしょうか。
怒り無しにどうやればいいのだろうかという感じでしょうか。
第121話 狩る者狩られる者⑧
トルフィンは何としても解毒剤を手に入れるべくヒルドとの勝負に挑み、雪山の中で彼女を探し続けていました。ふと、人影を感じ遠くから見ると、何とそれは待っているはずのエイナルで、トルフィンは焦ります。
一方、別の場所でエイナルを見たヒルドは思いもよらない事にむしろ警戒し始め、これからの行動を考えていました。そんな時、ヒルドの目に、遠くで立ち止まるトルフィンの姿がありました。
ヒルドが一発、矢を放つとトルフィンが即座に避け、矢が大木に刺さったと同時にヒルドに向かって突進していきます。
トルフィンはヒルドが2発目の矢を装着するまでに時間が掛かると読み、その間を狙って彼女に接近しようと試みました。しかしその行動は既に読まれており、ヒルド自作の弩は2発目以降も、いとも簡単に次々と装着できてしまうものでした。
ヒルドに飛びかかろうとしていた時、トルフィンの両足には無残にも矢が突き刺さり、血が滲み出ていたのでした。
そして、ヒルドは“これは狩りだ、強い奴が弱い奴を狩る、当然の事だ、恨むならテメエの弱さを恨むな…、思い出したか、お前が私に言った言葉だ”と、かつてトルフィンが自分に言い放った言葉を言い返したのでした…。
昔トルフィンに浴びせられた言葉を本人に言い返す程ですので、ヒルドの彼に対する怒りの思いは相当なものである事が伺えます。その怒りに真っ向から立ち向かっていくトルフィンの精神も強いと思われます。
第122話 狩る者狩られる者⑨
ヒルドに足を撃たれ、次は命を狙われようとしていたトルフィンでしたが、同時に彼は自分が“今まで殺した人達の亡霊に束縛され体が動けない状態”となっていました。
ちょうどその時、二人の前にエイナルが駆けつけてヒルドにトルフィンを殺すなと、そして“人を殺した事があるのか、ヒルドさん？オレも無い、でも、人を殺した後、どうなるかは知っている、トルフィンを見ていれば分かる、毎晩夢の中で自分が殺した人の亡霊に責め苛まれるんだ”と訴えます。
後からやって来たグズリーズも、トルフィンは良い奴だから殺さないでと言い、トルフィン（エルフの義理の息子の方）が背負っている赤ん坊カルリも訴える様に泣きじゃくっていました。
そんな彼等の訴えに逆らう様に、ヒルドは持っていた解毒剤の瓶を遠くへ放り投げ、“私の家族の無念はどう晴らす、私の怒りはどこへ行けばいい！今すぐ私の家族を生き返らせろ、それができないなら、お前には死ぬより他に償う方法はない!!話は終わりだ!!”と、
トルフィンに矢が放たれようとした時、弩を持っていた腕が突然上に向けられ、トルフィンが射抜かれる事はありませんでした…。
もはやヒルドは、怒りの思いに憑りつかれたかの如く“復讐の鬼”と化して、こういう人には何を言っても無駄なのかな？と思いました。現実の世界でも、この回の終盤の様な“奇跡”が起これば良いんですけどね…。
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