『ひゃくえむ。』の魚豊先生による地動説マンガの傑作！『チ。－地球の運動についてー』第3巻は、バデーニは天体に関する書類がある場所へ向かい、仕事を引き継ぐと告げます。
強引な条件を提案しつつ、オクジーも合意し責務を行う事となりました。
そんななか、バデーニとオクジーは街中で、掲示板に貼られた天体に関する問題を解答する一人の少女と遭遇します…。
『チ。－地球の運動についてー』３巻には第13話～第21話までが収録されています。
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漫画『チ。－地球の運動についてー』２巻ネタバレ｜代闘士のオクジーの反抗…
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目次
第13話
バデーニは、石箱の中にあった書類から見られた主張、独創的発想、そして限界を述べます。
書類の著者は相当優秀で、宇宙の数学的記述ができている一方、発表できる完成度に達しておらず、この仕事を引き継ぐのは慎重な知性や大胆な度胸を持ち合わせた英傑ではともバデーニは言います。
そんな人はどこにもいないのではとオクジーが言いかけた瞬間、即座に“いる。私だ。”とバデーニが告げ、彼が書類に関する任務を引き継ぐ事となりました。
それにあたり、バデーニはある三つの決まりをオクジーに提案します。
一つは後進を作らず、バデーニが死ぬまでに内容が証明できなかったら、書類を全て燃やすという事です。
重要なのはバデーニ自身が完成、発表するという事です。
二つ目は、オクジーに食事と寝床の提供を条件に観測者として研究に参加させる事です。
そして三つ目は、利益が生じた場合の分け前は「9：1」で、9割はバデーニだと告げます。
するとオクジーは、その条件はダメだ、自分達が受け取れるのは全体の9割までだと答えます。
またオクジーは、石箱の中にあった“利益の1割をポトツキに1割渡す”と書かれた手紙を、バデーニへ差し出します。
バデーニはオクジーの見ている目の前で、手紙を燃やし“これでもう書いてない。”と言い、立ち去ろうとします。
オクジーは、もしここで手紙を書いた人の想いを無視したら、歴史の様なものが失われるのではと、バデーニを引き止めようとします。
バデーニは聖書以外の歴史は興味に無いと答え、気に留めませんでした。
翌日、バデーニに連れられて目的地へ向けて街に到着したオクジーは、街で入れ物を持って施しを願い出る民に対し、僅かな金を与えていました。
施しは無意味で、そんな事をしても天国に行けると思っていないとバデーニが言います。
一方、バデーニは街へやって来た“目的”をオクジーに伝えます…。
バデーニには、絶大な自信と揺るがない傲慢さが、彼の行動から見てとれるのかもしれません。
それでもオクジーは、道を切り開いていく為に、バデーニについていくしかないのかなと思えました。
第14話
オクジー達は、街の掲示板に貼られた天体に関する難しい問題を解答している一人の少女を発見します。
場面は一転し、ある研究会が開かれ、出席者である研究員達が出席しようとしていました。
街で問題を解答していた14歳の少女・ヨレンタは、研究会への出席を申し出ていたものの、研究員達から見下されたヨレンタは参加させてもらえませんでした。
それでもヨレンタは、井戸に潜り込み、そこへと反響する研究室の音へ耳を傾けながら、研究会でのやり取りを盗聴していました。
その日もヨレンタは、“古代ギリシャ天文学の修正⁉”等といった心躍らせる内容を聞き、“私、ツイてます…！”と思っていたのでした。
研究員達が集会場から出て来たところへヨレンタが名乗り出て、自分も研究会へ参加させて欲しいと告げるも、聞き入れてもらえませんでした。
困っているヨレンタに声を掛けたのが、研究員のコルベであり、“君は自分のやってることを信じて進むんだ。いざって時、退いたら終わりだ。”と励まします。
また、ヨレンタが完成させた論文について、コルベは絶賛し“コレが評価されたら図書館から移って、天文台の仕事になる。”とも告げたのでした…。
ヨレンタの様に、何か新しい行動を起こそうとすると周りから止められたり、出鼻を挫かれるなんて事があるのかなと思いました。
そんななかでも、ヨレンタの目標に向けて燃やす闘志は強い様に見えました。
第15話
ヨレンタが書いた論文を、コルベは自分の名義に替えたと話します。
それを聞いたヨレンタ自身は唖然とするも、女性名義で発表は危険で魔女扱いされるとコルベは言います。
そして、コルベが自分の論文として発表し評価されれば、ヨレンタも彼の助手として天文台へ引き抜けると告げます。
従って、ヨレンタの名義は“ないよ。もう諦めて。この世はそういうものだから。”とも、彼女に言いました。
論文が書けたらまた声を掛けてと告げコルベが立ち去ろうとした時、研究所の大家であるピャスト伯が、ヨレンタやコルベらの前に現れます。
ピャストはよく聞き取れなかったものの、ヨレンタが論文を書いたのではと問いかけます。
“自力で答えろ”と尋ねるピャストに対し、ヨレンタが出した答えは…。
ピャストからヨレンタが、自分で作った論文かと聞かれた際に素直に言えなかった様に、人の顔色を伺う様な場合がある事が多い気がしました。
目標を見定めたうえで、道を突き進む事は中々難しいのかなと思いました。
第16話
街の掲示板に貼られた問題を解いていたヨレンタのもとへバデーニとオクジーが声を掛け、掲示板の問題は自分達が提示したものだとバデーニは言います。
ヨレンタは慌てて、自分は解答者ではなく、問題用紙に男性名が書いてあると説明します。
自分は雑用係で職場の主人（解答者）に掲示板に張り出してくれと頼まれただけだと話すヨレンタに対し、バデーニはその解答者に会わせて欲しいと言い出します。
バデーニの後押しもあり、ヨレンタは仕方なく下宿先の応接室へバデーニとオクジーを連れて行く事となりました。
応接室へ向かっている途中で、一同は互いに自己紹介を始めます。そこでヨレンタは、バデーニが以前いた修道院や普遍論争について知り、驚きつつも食い付く様に聞き入れます。
自分の主人もバデーニと同じ普遍論だとヨレンタは言い、“真理の探究には、ある種の大胆さは不可欠”という姿勢で掲示板の問題にも取り組んでいたと告げました。
ヨレンタの言葉を聞いたバデーニは、“ツイてるぞ、幸運な人物に巡り合った。”とオクジーに話します。
また、掲示板の問題を解いたのはヨレンタ本人であり、半日で解答した計算力や発想は申し分ないとも告げます。
更にバデーニは、“地動説（あのはなし）をしても安全そうだ。密告される可能性はない。”という思いを抱きつつ、応接室へ向かうのでした…。
バデーニの、ヨレンタの才能を見抜く視点は、かなり鋭いものだったのかなと思いました。
更に、地動説の話を持ち掛ける際は、巧みな話術でヨレンタを安心させるところが、よくできているなと感じました。
第17話
“地球が動いている”という真理をバデーニから聞いたヨレンタは、そんな事を本気で研究するなんて恐ろしいと口にします。
危険を感じたヨレンタは、コルベに報告へ向かいます。
コルベは研究会に行っており、彼の部屋にはいませんでした。
部屋でおとなしく待とうとしたヨレンタでしたが、そのまま井戸へ向かい研究会のやり取りを盗聴し始めたのでした。
すると、会衆の前で咳き込むなかで話すピャストの声が、ヨレンタの耳に聞こえて来ました。
ピャストは、自分はこの先長くないと告げる一方、“天国へ行く前になんとしてでも、“我々の宇宙論”を完成させねばならん。”と言います。
またピャストは、コルベの論文が綿密な考察ができていると話し、会衆は拍手します。
研究会が終わったのを見計らって、井戸から出て来たヨレンタの前に現れたのがピャストでした。
ピャストはヨレンタの才能、かつ彼女が女性差別を受けている事を理解していました。
もし見せたい論文があるなら持って来る様に、ヨレンタに言います。
その夜、ヨレンタはコルベのもとを訪れ、ある事を話しかけます。
コルベの部屋へ勝手に入り資料を閲覧した事と、異端のバデーニ達についての報告でした。
しかし、ヨレンタは直ぐに話題を切り替え、その場を立ち去りました。
翌日、掲示板にてヨレンタは、バデーニやオクジー達と再会します。
そして、掲示板の問題解答者は自分であると打ち明けます…。
ピャストの先が長くない事を聞いたヨレンタが、事を急がねばと思い己の力を発揮し始めたかの様に見えました。
一方で冷静さに欠けるのか、バデーニやコルベに対しても、慌てた言動をしてしまっているかの様に感じられました。
第18話
ピャストは天動説に人生を捧げていて、真理を重んじているとヨレンタが話したのに対し、バデーニはピャストへ会いに行く事となりました。
ヨレンタに連れられて向かった先には、寝室で咳き込んで血を吐きながらベッドで横たわっているピャストの姿がありました。
バデーニは、自分達の研究の為に観測記録を貸して欲しいと話すも、ピャストは帰れと冷たくあしらいます。
バデーニが行おうとしていた事が、C教が認める宇宙論と異なっているうえ、ピャスト自身が行ってきた研究を間違いだと主張する様なものだと言われてしまいます。
全く耳を傾ける気が無いピャストに、バデーニ達は一旦その場を退散する事となりました。
バデーニ達が帰って行くなか、ピャストは自身の若き日を思い巡らしていました。
ピャストはある名家に生まれながら、一族の恥とされて親族の天体研究施設へ送られます。
しかし、そこで見た巨大な天体施設と金属のアストロラーベに圧倒されたピャストでした。
そして、その場にいた施設の教授は、この施設で目指すのは“宇宙の、完成だよ。”とピャストに告げます…。
ピャストはバデーニ達を冷たく扱いつつも、彼等を自分の若い時と重ねつつ、何か新しい発展を期待していた様に思えます。
かつて天体施設で見た“壮大な宇宙”は、決して忘れる事ができなかったのかもしれません。
第19話
ピャストは、教授のみしか入れないという資料室へ連れて行かれます。
そこには膨大な資料があり、修正してきた“宇宙の正しい形だ。”と教授は言います。
とはいえ誤差は多く、真理に辿り着くには選ばれし一人である為、完成まで誰にも明かすまいと誓っていたとピャストは言います。
何故、自分に見せたのかとピャストが尋ねると、“その一人とは、私ではなく君かもしれんからだ。”と教授が答えました。
教授から資料を受け取ったピャストでしたが、後日、自分には不相応だとして資料を返してしまいました。
それから5年後、教授は病気で生い先が短い身となり、病床につく彼の横にピャストはいました。
“いつか…天国で私に聞かせてくれ…真理を。”と言い残し、教授は息を引き取ります…。
教授から任務を与えられたピャストは、荷が重すぎてそれを断っている事から、天体に対して純粋な気持ちを持っている事が伺えます。
教授の天体に掛けた願いは叶わなかったものの、ピャストへ夢を託す事ができたのではないでしょうか。
第20話
ピャストが夜空を見て観測していた際に、コルベがやって来ます。
ピャストは、“死ぬ前に、見なければならん物がある。”と話します。
その後、病床についていたピャストはバデーニ達を呼び出し、観測記録を見せる条件として満ちた金星を観測する様に指示します。
天動説では金星が満ちる事は絶対にありませんが、ピャストは若かりし頃に見た金星を見間違いだと証明したかったのです。
満ちた金星を見る事ができなかったら、“地球中心（現状の宇宙）は退けられる”ともピャストは言いました。
そして、観測の時を迎えます…。
ピャストは自分が燃え尽きる前に、悔いが残るまいと全身全霊を尽くしたかった様に思われます。
まして、金星目撃といった人生で滅多に無い様な経験でしたら、追及してみたいという思いが何が何でも生じるとも考えられます。
第21話
金星が満ちている事が分かったものの、長年の研究が否定されるのを恐れたピャストは納得がいきませんでした。
しかし結局は、それらの研究を一瞬で否定できる力があり、無慈悲で平等な超越したものこそが真理だとバデーニに諭される事となりました。
そして、ピャストは泣きながら、バデーニへ資料室の鍵を渡すのでした。
バデーニは、訪れた資料室を見て“驚異的だ”と告げ、オクジーへ資料を村へ運ぶ様に指示し、ヨレンタに研究を外れる様にも言いました。
一方の、ヨレンタからは地動説を完成させて欲しいと告げ、バデーニは約束します。
その頃、ピャストは夜空の下で何かを書いている様でした。
彼は酷く咳き込みながら、“や…やっと、お話…でき…ま…し…真…り…を。”と告げたのでした…。
人生を掛けてきたものが瞬時に批判されたら、そりゃ落ち込むだろうなと、ピャストの涙から直ぐに見て取れると思えました。
ピャストからバデーニという感じで、新しい事を行う者は新しい世代へと受け継がれていく状態が伝えられているのかと感じられました。
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