第11巻は、トルフィンとエイナルが“奴隷”としての役目をやり終え、次なる目的を模索し始めます。一方、ケティル達が（デンマーク王候補である）クヌートと対面する際、その際にケティルの末っ子・オルマルがクヌートの前で兵士への志願を申し出るも、多くの者の前で大恥をかきますが…。
漫画『ヴィンランド・サガ』11巻には72話～78話までが収録されています。
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壮絶…ヴァルハラなんて全部嘘⁉漫画『ヴィンランド・サガ』10巻ネタバレや感想など
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目次
第72話 呪いの首
クヌート達が乗る船数隻は、デンマーク・ユトランド半島・イエリングに到着、クヌートにとってはイングランドからの久々の帰国となります。 ウルフの報告によると、クヌートの兄・ハラルドの体調は思わしくなくもって数日との事です。
近くで子供達が“玉打ち遊び（布にくるんだ球状のものを丸い板で飛ばし合うバトミントンの様な遊び）”で楽しんでいる姿を見て、クヌートは自分も子供の時に“玉打ち遊び”が得意なハラルドがよく遊んでくれたり、イングランド遠征の時には彼に助けられた事を話します。
しかし、子供達が飛ばした“玉”がクヌートの足元へ落ちた時、その“玉”が彼の目には“生首”に見えてしまい絶句したのでした。
クヌートは、ハラルドが療養している部屋に向かいます。僅かな言葉を発する程までに弱まっていたハラルドでしたが、精一杯の力で“くぬ…と、そなたにデンマークをゆずる…”と、目の前にいたクヌートへ言い、その言葉に周りにいた人間も驚きます。
クヌートは、そんな事を言わずに早く元気になって、また一緒に“玉打ち遊び”をやろうとハラルドを励まします。しかしその瞬間、クヌートがハラルドの顔を見ると、先程遭遇した“生首”の顔に変わっていました。
そしてその“生首”は、クヌートへ“よくも素知らぬ顔でそんな嘘がつけるものだ。自身が毒を盛った相手を見舞うか、とんだ茶番だな。ハラルドはそなたに好意的であった、何故殺す必要がある？そなたの心には野心がある、それが呪いだ、王冠の呪いなのだ。
逃れられはせぬ、そなたはデンマークとイングランド、二つの王冠を被り、余の倍、苦しむ事になろう“と忠告したのでした…。
トルフィンと同様に、クヌートもそれまでの“争いの傷跡”が亡霊となって表れていますが、クヌートの場合はトルフィンとはまた違ったパターンで怖い現れ方となって強い印象を残しています。恨みつらみ・怒り・悲しみは様々な形となって現れるのかなと思いました。
第73話 自由になったら
トルフィンとエイナルは登場内の木を全て切り倒し、“奴隷”としての任務をほぼやり終えます。この開拓地での夏の収穫分で、トルフィン達の自由が買い戻せる事となるのです。自由の身となるとはいえ、エイナルはアルネイズの事が気がかりで、ケティルが彼女を手放さない限り、彼女は自由の身になる事は難しい様です。
一方のトルフィンも、故郷・アイスランドに帰るかとエイナルから言われると“多分…”とあやふやな答えを出すも、“エイナル、お前はどう思う、世の中から…戦争と奴隷を失くす事はできないかな…”と真剣な眼差しで言いました。
二人のもとへ農場主であるケティルがやって来て、改めて彼等が“自由の身”となる事を伝えると同時に、療養中のハラルドの見舞いの為にイエリング王宮へ行く事をスヴェルケルに伝えてくれと二人に話します。ケティルは思い出した様に、“自由身分”となったら自分の所で奉公する気はないか？とも聞いて来たうえで、そのまま見舞いへ向かいます。
奴隷としての暮らしが長かったうえ、アルネイズの事も頭に過ぎっていたエイナルはその事で少し悩んでいる様子でした。そんな時、“遅っせーぞ、ジジ―ッ！殺す気かーッ!!”という“蛇”の怒鳴り声が、聞こえてきます。彼が聞くには、夕飯の時間なのにスヴェルケルが帰って来ない事に怒っている様子でした（昼食も食べていませんでした）。
住居に帰って来たトルフィンとエイナルも、この日はスヴェルケルを見ていない様子に“蛇”は嫌な予感がして急いで畑の方に駆け出していきます…。
目的を成し遂げようとしている時は、がむしゃらにやっているものの、いざ終わってみると寂しいのかもしれません。でもそこから、新しい目的を見つけ出す事も人生の楽しみかもしれません。それにしても“蛇”は御飯の支度は全て高齢のスヴェルケルにまかせていたのでしょうか…？
第74話 逃亡奴隷
畑で倒れていたスヴェルケルが家へ運ばれ、療養していたところへ（女主人の言いつけで）アルネイズが訪ねて来て、彼女が（エイナルらの分も含めた）手料理を作ります。腹を空かせていたエイナルや“蛇”らはスヴェルケルよりも先に料理に飛びつき舌鼓を打ちます。
アルネイズが料理を口に運ぼうとするも、“…いらん、今は腹が空いておらん”と断るスヴェルケルでした。ただ頑固さが伝わると同時に、彼のお腹が鳴った途端にエイナル達は思わず笑い出します。
楽しい雰囲気にアルネイズは“なんだか自由だった頃に戻ったみたい…”と思わず口にします。
そこへ奉公人のキツネがやって来て、“蛇”を訪ねます。聞くところによると3日前に、別の農場から奴隷が逃亡したとの事で、しかも農場の主人・キャルラクと彼の息子達を皆殺しにし、家に火をつけたというかなりの凶暴者だそうです…。
スヴェルケルはトルフィンやエイナル達に人生のアドバイスを与えている一方で、ほのぼのとした一面が垣間見れた回だと思いました。どんな人物でも、普段とは違う面を見せる事で周りとの共感を得られそうです。
第75話 王と剣
ハラルドが住む館の敷地内にて、クヌートと ウルフが真剣を交えた稽古を行っており（クヌートは鎧を着用し完全武装）、その戦いぶりは観ていた周囲がヒヤヒヤする程に迫力があるものでした。
クヌートが息を切らし壁にもたれかかるも、ウルフが顔を背けた瞬間にクヌートの盾が飛んできます。慌てたウルフが盾を払いのけるも、既にその時にはクヌートの剣がウルフの顔に向けられ、同時に“参り申した…”という言葉で勝負が付きました。
その後、クヌートと グンナリが城内にてデンマークの土地の調査について話し、そこからケティルの農場も話題に上がります。クヌートは多少の犠牲をしてでも、土地の接収を行う事を提案し、“こんな世の中で武力を持たぬ王に何ができる”と自身の考えを貫こうとしていました。
同じ頃、イエリングの城下町にある船着場で、ケティルは約1時間前にハラルドが亡くなっていた事を知らされ失望し、その場で塞ぎ込みます。同時にクヌートが国王代理だという事も聞き、息子・トールギルにクヌートへ良い関係を築く為に取り次ぐ様に頼み、トールギルはそれを承諾します。その矢先、ケティルの末っ子・オルマルが目を話したスキに町へ飛び出し、またもやひと悶着起こしていました…。
王は訓練も命懸けで、常に危険と向き合わせである事が分かります。力を持って欲しいものを手に入れようとする権力者というものは、いつの時代も恐ろしいものだと思いました。
第76話 オルマル晴れ舞台
ケティル・トールギル・オルマルの3人はクヌートと城内で顔を合わす事となりました。中へ入ると、椅子に座り身構えたクヌートの姿があり、3人は彼の前に跪きます。
クヌートは、ケティルが収めた献上品を誉め、またそれらの品である作物についても口にし、今後もデンマークの国力を支える礎として誇りを持って仕事に励む様に言います。ケティルは礼を言いつつ、ホッと胸をなでおろしたかに見えました。
ところがその直後、オルマルが立ち上がり、“クヌート階下！お願いがあります!!オレを階下の軍団に入れてください！”とクヌートの前で申し出、ケティルが慌てて止めようとするも、オルマルの気持ちは変わりませんでした。
するとクヌートは、オルマルへ“その者の剣の腕前をみてやろう”と言い出し、兵士の夕食だという豚の丸焼きを差し出し“人体とみなし斬ってみせよ”と言って見せます。
オルマルは奇声を放ち力まかせに剣を振り、豚の丸焼きに何度も叩き付けるも、少々の切り傷が付く程度で、見切りをつけた様にクヌートが“そなたの従士団入りに関しては明日通達する”とその場を後にします。
その晩、自身の実力の無さ・不甲斐なさに落ち込み泣き崩れるオルマルでしたが、その裏ではクヌートとウルフが密かに“あの若者（オルマル）は使える”と話していました…。
デカい口を叩く者程、実力がイマイチである事をオルマルが見事に体で表してしまった様な感じですね。ただ、誰でも様々な面で何度も恥をかいたうえで成長していくのかな？と彼の姿をみて思いました。
第77話 侮辱
クヌートとの対面の翌日、オルマルはすっかり抜け殻の様に椅子とテーブルにもたれかかり、周囲の男達から『豚に完敗した男』として貶されていました。更に一人の男がオルマルのテーブルの前に歩み寄り、重ねる様にオルマルを侮辱し周りの者とあざ笑ってきます。
彼等のやり方にオルマルの怒りは限界に達し、剣を抜き振り回すも、彼等にさえもあっさりと打ちのめされてしまいます。そんなオルマルのもとへ、近くで食事をしていた兄・トールギルが近づいて来ます。
倒れていたオルマルの服を掴み上げ、“立てオラアアーッ！オルマルゥ!!よく聞けオルマル、侮辱を受けた戦士の取るべき道は2つだけだ、殺すか・死ぬか、殺せないならここで死ね、戦ってここで男になれ、今日がその日だ”と真正面から訴えオルマルを再び彼を貶した男の方へ向き直します。
“野郎を殺せ、ぶち殺せ！”と感化させると、オルマルは言われるがままに男へ剣を向けて突進していきます。男は彼を対して気にも留めず、軽く避けようと思ったその時、突然どこからか飛んで来たコインが男の右目に刺さり、男が怯んだスキを狙ってオルマルが剣で男の首を突き刺します…。
トールギルがオルマルへ“戦士としての教訓”を体で叩き込んだ様に見え、恐怖さえ感じるのではないでしょうか。戦争は人間を狂気にさせる事を徹底的に教え込もうとしていた様に思われます。
第78話 反逆罪
オルマルが自身を貶した男を刺殺すると、トールギルも剣を抜いてきた周囲の男達をメッタ斬りにします。その後駆け付けたケティルが目の前の血みどろ光景に顔面蒼白となります。それに対し、トールギルは“オルマルが侮辱を受けて決闘になり名誉を守った、剣をぶら下げてるなら侮辱が高くつくって事ぐれェ分かってたはずだ、分かっててオルマルをナメたんだ、死んで当然の無作法者だぜ”と言い切ります。
更には騒動を聞きつけやって来た王の兵士達に対し、トールギルは剣を出し彼等の首や腕を切り裂き、予期せぬ事態にケティルとオルマルは目を疑います。トールギルは一人残った兵士に剣を向け“何でオルマルを勝たせた、誰が黒幕で、何が目的だ？”と謎めいた事を言ってきます…。
クヌートが巧みにケティルを騙している様に思われたものの、とっくにトールギルが見抜いており、容赦なく兵士を斬り倒すところがシビアだと思いました。しかも事実を白状させるためには徹底的に痛めつける行動も強烈です。
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