第1巻は、小学校6年生の石田将也は友人二人と勉強そっちのけで、ヤンチャな事をして遊んでばかりしていました。
しかし友人達から付き合いに距離を置かれ、将也は孤独感を持ち始めます。
その矢先、将也が通う学校に一人の少女・西宮硝子が転校して来ますが、彼女はある問題を抱えていました…。
漫画『聲の形』１巻には第１話から第５話までが収録されています。
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目次
第1話 石田将也
高校生の少年・石田将也は、校内にある手話サークルの場にて聴覚障害者の少女・西宮硝子を見つけます。
しかし、硝子は将也を見るなり逃げ出してしまい、将也は慌てて彼女の事を追いかけます。
将也と硝子との出会いは小学校時代であり、場面は6年前に遡ります。
小学生だった将也は、二人の友人とプロレスごっこをしたり、橋の上から川へ飛び込みをしたりとやりたい放題でした。
そんな将也に対し母親の美也子は手を焼いており、自ら営む美容室の中を泥だらけで入って来る息子や友人達に呆れ果てていました。
シャワーを浴びて着替えた将也や友人達は、部屋でゲームをしたり漫画を読んだりしますが、友人の一人が漫画の続きが読みたいと言います。
将也は姉の部屋にあると言い、そこへ取りに行くと、昼寝をしている姉と彼氏らしき男性がいました。
将也は知らない男がいたと言い彼等は驚き、将也の姉が付き合っていたゆーたろー君とは別れたのかと聞きます。
今の彼氏はげんき君というらしく、これで30人目との事です。
姉は“人生は退屈との戦いだ”と言っていたと、将也は話します。
後日、将也の学校のクラスの女子生徒達が、転校生がやって来るという話題で盛り上がっていました。
その様子を将也は冷めた、かつ退屈そうな様子で見ていました。
将也は姉と同様、退屈が嫌いで、どうすれば毎日が退屈でなくなるかばかり考えていました。
いつもの様に、学校帰りに将也は友人達と川へ飛び込みますが、将也は川の近くに置いていた自分の靴が無くなっている事に気付きます。
友人が調べたところ、犯人は第二小の生徒だという事が分かり、同級生の女子生徒・植野に協力してもらいその生徒を呼びつけます。
そして、将也は第二小の大柄な生徒を殴りつけ靴を奪い返します。
しかしその帰り際に、将也の姉の彼氏であるげんき君と遭遇し、彼により将也は腹部を思い切り殴られます。
その場で倒れ込む将也の姿を見て、友人達は顔面蒼白となり、その場から逃げ出しました。
げんき君は靴を奪った生徒の兄であり、弟に暴行した将也への報復に来たのでした。
その後、家で母親の美也子から傷の手当てを受けるなか、将也は“退屈に圧勝した日とは今日のことをいうのだろう！”と思い、全く懲りていない様子でした。
将也が再び漫画を取りに姉の部屋に向かうと、今度はガッチリとした体形のブラジル人・ペドロがいて、姉はげんき君と別れた様です。
別の日の放課後、将也はまた友人達を誘って遊びに行こうとします。
友人の一人である島田は塾があるとアッサリ断り、もう一人の友人・広瀬もこの辺でやめないかと言ってきました。
一人帰宅して黙々とゲームをする将也は、“やばい…このままじゃ退屈に蒔けてしまう…負けてしまう”と鬱々とした気分になっていました。
翌日、将也は教室で何も考えずに、ただひたすらにシャープペンシルを押し続けていました。
そこへ、担任の教師により転校生の紹介がありました。
その転校生である西宮硝子は、生徒達の前で自己紹介を始めますが…。
退屈を持て余す将也の前に現れた硝子の笑顔には、これから起こるであろう波乱というものがまだ感じられないと思われます。
将也もそうですが、少ししか出ない彼の姉ら周りの人物も、“平凡”とは程遠い様なキャラクターで強烈な印象を残すと感じられました。
番外編 7か月前
将也の母親・美也子が営む床屋へやって来たのは硝子であり、彼女は長く散らばった髪をしていて頭には木の葉やゴミも付いていました。
店の待合席でヘアカタログを読む硝子に美也子が声を掛けるも、硝子は気付きません。
美也子が硝子の顔を見て手招きをすると、漸く気付いた硝子が美也子へ案内された奥の席へ移動します。
美也子はどんな髪形にするかと硝子に聞きつつ、彼女の髪が濡れていたり葉っぱが付いているのに違和感を感じます。
硝子はヘアカタログに載っていたボブヘアの写真を指差し、美也子は硝子が無口な子だと思いつつ、硝子の髪を洗いカットの準備を始めます。
そこへ硝子の母親らしき女性が来店し、娘がどんな髪形にするかを尋ねます。
美也子は、ヘアカタログのボブヘアの写真を硝子の母親に見せてこんな感じにすると告げるも、母親はダメだと答えます。
そして、ヘアカタログの別ページに掲載されたベリーショートのページを見せて、男の子みたいに短く切る様に美也子に言います。
戸惑う美也子は、硝子へヘアカタログのベリーショートのページを見せて確認を取ろうとします。
すると母親は“無駄よ、聞こえないもの”と言い、その言葉に美也子は驚きます。
母親によると、硝子は学校でいじめられており、付けていた補聴器も川に投げられてしまったそうです。
そして、硝子を障害に理解がある学校へ転校させると母親は言います。
それにあたり、硝子には男の子の様に強くなって欲しいという願いで、髪を短くする様に母親が言ったのでした。
美也子は“お母さんはこの髪形がいいらしいですよ。どうしますか？”というメモをヘアカタログのベリーショートのページに貼り付けて硝子に見せます。
それを見た硝子、そして美也子が選んだ答えは…。
硝子の母親は一見すると、無愛想かつ冷淡な感じですが、娘・硝子が受けてきたいじめを見てきた故か、そうならざるを得なかったのかもしれません。
ただ、美容室にて娘に良かれと思ってやった行為がイマイチ伝わらなかった様にも見えました。
第2話 仕方の無いこと
転校生である西宮硝子に対し、周囲の生徒が気を遣って接します。
その一方で、将也は硝子の耳元で突然大きな声を発したり、授業にて硝子が教科書を上手く読めない様子を真似するといった、心無い行為をします。
将也は職員室に呼ばれ、担任教師の竹内から注意を受け、硝子に障害がある事をからかったりマネしてはいけないと言ってきます。
これはモラルかつ仕方の無い事だと告げる竹内に対し、将也はいまいちピンと来ない様でした。
硝子は、同級生達とは伝えたい事をメモ書きで伝えており、授業中も先生にあてられる時も同じでした。
何かする度に時間が掛かってしまう硝子の行為に、周りは偏見の目で見る様になります。
更に、近くなった合唱コンクールに向けての練習の時も、歌になっていない硝子の歌声に生徒達は大きな不安を覚えます。
音楽担当の女性教師である喜多は懸命に硝子の合唱コンクールへの参加を補佐するも、本番での結果は散々でした。
それでも喜多は教室にて、帰りの会を使って手話を勉強して硝子を助けようと話し、一人の女子生徒の佐原が名乗り出ました。
硝子と佐原が親しくなったかの様に見えましたが、同じクラスメイトの植野から“ポイント稼ぎ”と中傷されて以降、学校に来なくなりました。
ある日、硝子が教室に来ると黒板には、彼女に対する誹謗中傷の言葉が沢山書かれていました。
そこへ数人の生徒とやって来た将也は、酷い事するなと口にしつつ黒板の文字を消したのでした。
硝子は、メモ書きで“みんな、ありがとう”と将也ら数人の生徒に感謝の意を伝えます。
しかし、黒板に誹謗中傷の言葉を書いたのは将也であり、このまま硝子に対する行動を続けたらどうなるか、“興味が出た”と将也は思ったのでした…。
硝子に対してストレートにからかう将也や、どう接していいか分からない生徒達、それぞれの心理状況や人間模様がハッキリしている一方で複雑に絡んでいると思えました。
担任教師の竹内が、熱意を持たずに生徒と接する様を見ていると、案外現実はこんなものかなと感じたりもしました。
第3話 ははははは
将也の硝子に対するいじめはエスカレートし、硝子が付けていた補聴器を彼女の耳から取って壊す行為までしてしまいます。
するとある日、担任の竹内と校長が教壇に立ち、生徒地に報告があると言います。
その日は硝子が学校を休んでおり、報告内容は硝子の母親からの電話によるものでした。
それによると、この5ヶ月で硝子が付けていた補聴器が8個も紛失したり故障していて、補聴器の賠償額は170万円程にも及んでいるそうです。
学校内でイジメが起こっているのではと校長は言い、ここで名乗りでれば学校で解決できなくもない、逆に犯人が分からないと警察へ頼む事になるとも話します。
校長の話を聞いた将也は青ざめた顔になり、そっと手を挙げようとします。
その時、それまで冷淡な態度だった担任の竹内が校長の目を見計らって、突然将也へお前がやったんだろと怒鳴り散らします。
焦る将也に対し、竹内をはじめ周りの生徒からも見放される態度を取られてしまいます。
そのうえ将也は、手のひらを返す様にクラスメイト達からいじめを受ける立場となり、学校内の池に投げ出されます。
将也は池の中で、以前自分が池に放り投げた硝子の日記を見つけます。
硝子の日記には、転校初日の頃はクラスメイト達から歓迎の言葉が書かれており、それに対し“ありがとう”という硝子の言葉が書いてありました。
しかし、次第に誹謗中傷の言葉が書かれる様になり、その度に硝子は“ごめんなさい”と綴っていたのでした。
将也が帰宅すると、学校で起きた一連の事を聞いた母親の美也子は目に涙を溜め“ほんと…なさけないよ”と口にします。
美也子は補聴器の弁償の為のお金を銀行口座から引き出し、硝子の母親に謝罪へ向かいます。
その間、将也が近くの公園で歩いていたところへ偶然に硝子と出会い、硝子は将也にニッコリと微笑んだのでした…。
将也のいじめは決して許されない行為ですが、竹内や周囲のクラスメイト達の人の顔色を伺って態度を変える行動も卑劣な様に見えました。
そのなかで、硝子の純粋な思いに将也がどこまで気付くのか、つい淡い期待を抱いてしまうのではないでしょうか。
第4話 クソったれ西宮
学校でのイジメの標的が硝子から将也に移り変わったの様に見え、上履きや椅子を隠される等、その内容は日に日に酷くなっていきました。
将也は担任の竹内に相談するも全く相手にされず、硝子をイジメた者に友人を裁く権利は無く全て“自己責任”だと言われます。
竹内の言葉通り、将也は自分で決着をつけようと考え、早めに学校に行き新品の上履きを自分の下駄箱に置いて、靴を奪った犯人を見つけ出そうと試みます。
遠くから様子を伺っていた将也が目にしたのは硝子の姿でしたが、彼女は将也の下駄箱を通り過ぎて行きます。
硝子は教室の花を添えた後、机に書かれた誹謗中傷の言葉を消していたのでした。
硝子がまたイジメられているのかと思った将也が再び入口に向かうと、クラスメイトの島田と広瀬が上履きをゴミ箱に捨てていたのを目にします。
将也は激怒し彼等と取っ組み合いの喧嘩をし、島田と広瀬はそのまま去って行きます。
島田と広瀬に“くそったれ”という思いが芽生え、その思いは硝子にも向けていて、そのまま気を失います。
将也が気が付くと、硝子が顔を拭いており、その様子に驚きます。
硝子の親切な行動に戸惑いつつ、“言いたいことあんなら言えよっ‼一度でも腹の底にある気持ち言ったことあんのかよ‼”と将也は叫び、硝子を蹴ってしまいます。
すると、硝子が将也に平手打ちしたのを機に、二人はその場で殴り合いをしてしまいます。
それから1ヶ月後、硝子は何も言わずに転校していき、将也はある事に気付いたのでした…。
硝子に将也がここまでやってしまうかと残念に思う一方、漸く将也が硝子の思いに気づいたので、出会いは中々上手く行かないなと思いました。
しかし、体を張って思いを伝えた硝子は強いと感じ、その強さが将也に伝わったのだと思いました。
第5話 拒絶人間
将也は中学、高校へと進学しますが、小学校時代のいじめの過去を島田が周りに言いふらした事もあり、将也は完全に孤立していました。
高校3年生の春になっても周囲と馴染めずにいる将也は、周囲の生徒が“嫌いだ”と思っており、何より“そう思ってしまう自分が嫌いだ”と考えていました。
将也は、自分がこの先も孤立したままの状態で老いていき、この世を去って行く姿を想像していました。
“どーせ死ぬんだ、死ぬならさっさとやり残したことを片づけよう”と考えた将也は意を決して、務めていたアルバイトを辞めてその日までの報酬を貰い、電化製品や本等の身の回りの物を売ったりしてお金を集めます。
将也はうたた寝をしている母親・美也子のもとへ行き、補聴器の弁償代の積み立てとして集めたお金を封筒に入れて、そっと美也子の枕元に置きます。
“こんな息子でごめんな…”と美也子に告げ、将也は彼女のもとを去って行きます。
そして、将也が一目散に会いに行った相手とは…。
それまでの人生が一変し、逆に悲惨な行く先を考えて決心した将也の行動が描かれていますが、これも若さ故の突発的な行動なのかなと思えました。
それでも、大きな目的を為す如く、心に留めていた者へ向かって行くところから、将也にはどこか純粋な一面があった様に感じられました。
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