第7巻は、入院していた将也の容態は無事に回復し、退院後に文化祭が催されるに伴い復学します。
硝子と共に校内の文化祭を訪れ、永束が監督した映画を観たり、多くの生徒とのふれあいを持ち楽しさと向き合っていく将也でした。
やがて時が過ぎ、将也やクラスメイト達は、卒業や進路という現実と直面していく事となります…。
漫画『聲の形』7巻には第53話から最終話が収録されています。
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目次
第53話 橋へ
将也は、学校で硝子と普通に話をして、クラスメイト達と楽しく過ごしている夢を見ていました。
夢の中で将也は、このまま順調に行くと思っていましたが、誰かに手を引っ張られている感覚を覚えます。
将也は気が付くと、池の橋に立つ硝子がいて、彼女に声を掛けようとした瞬間、病院のベッドの上で目を覚ました将也でした。
“生きてる…俺…生きてる…”と将也は思いつつも、早く硝子のもとへ行かなければと考え起き上がります。
しかし、将也の体には呼吸器等が沢山付けられていたうえ、彼がそれを強引に外そうとした瞬間、病室の緊急連絡のブザーが鳴ります。
直ぐに駆けつけた看護師に対し、将也は硝子の安否や母親・美也子への連絡を願望するも、口がカラカラに乾いていて思う様に喋れません。
どうにか水が欲しい事は伝わり、看護師が水を取りに行っている間に、将也は体の呼吸器を外し、入院着のまま病院から抜け出します。
足元がふらつきながらも池の橋に着いた将也が目にしたのは、一人涙ぐむ硝子の姿でした…。
将也の硝子に会いたいという気持ちが、生死を越えた奇跡を起こした様に思われた感じに思えました。
また将也は、自分の体がどうなっていようが構わないと考えるくらいに、硝子への想いが強かったのではないかと感じられました。
第54話 君へ
池の橋で将也は硝子と遭遇し、硝子も感激のあまりその場で跪きます。
将也は、自分はもう元気だと言い、“西宮さん、ごめんなさい”と手話で伝えます。
硝子もある事を手話で伝え大粒の涙を流し、それに答えるかの様に将也も同じ事を考えていたと伝えます。
そして、“本当は君に泣いてほしくないけど…泣いてすむなら…泣いてほしい”と将也もその場で号泣します。
更に、“もっとみんなと一緒にいたい、たくさん話をしたり、遊んだりしたい、それを手伝ってほしい、君に生きるのを手伝ってほしい”と必死に伝えた将也でした。
見つめ合う二人のもとへ懐中電灯の光が照らされ、そこへ現れたのは…。
将也と硝子、互いの想いが通じ合い、感情として爆発した感じで熱くこみ上げてくるものがあると感じられました。
特に、“生きるのを手伝ってほしい”と言ったのは、硝子への告白の様に見え、将也は本気で彼女と向き合い始めたのかなと思いました。
第55話 帰宅
将也は容態が落ち着き、2週間が経過した頃に退院し、美也子に連れられて帰宅する事となりました。
自宅の玄関では、将也の姉の子供・マリアが土に埋めていたネギに水をやっており、将也に気付くと彼の足にしがみつき泣き出します。
マリアは将也が死んだと勘違いしており、将也は死んでないとマリアを宥めます。
日曜日になり、将也が部屋で横になっているとマリアに呼ばれ、渋々食堂の方へ向かいます。
そこには、硝子、結絃、八重子ら西宮一家が訪ねており、八重子は美也子に将也の入院費を封筒に入れて渡してきます。
保険に入っていたから大丈夫だと美也子が告げたのに対し、“そういうことではないんです！ケジメをつけさせて下さい”と答えます。
すると美也子は、封筒から一枚だけお札を取り出し、皆でお寿司を食べようと言います。
石田家、西宮家で出前寿司を囲み食事を取る事となりますが、将也は硝子を見ながら“西宮…痩せたなぁ…”と思っていたのでした。
そこへ八重子が将也へ、負傷した尻や肩は大丈夫かと尋ねたところ、全然大丈夫で痒いくらいだと答えます。
そう言いつつ、将也が箸で寿司をつまもうとしたところ力が入らずテーブルに落とします…。
自分に厳しい八重子に対し、その行動を柔和な形で受け入れる美也子の関係が良く、様々な人間関係も時を経て距離を縮めて行くのかなと思いました。
また体の痛みをこらえつつ、周囲に無理して明るく振る舞おうとする将也が痛ましい一方、マリアの純粋な行動も伝わって来ると思えました。
第56話 登校
学校で文化祭が開催し永束が監督した映画も上映される事を受けて、将也は久々に学校へ向かう事となりました。
将也は硝子と待ち合わせし学校へ向かい、その道中でも“聞くんだみんなの声を、いいことも悪いことも”と準備万端の体制で挑んだつもりでした。
しかし、いざ学校に着き在学生達に自分の存在を指摘されると、思わず校門の壁に頭を突き、下を向いてしまう将也でした。
それでも将也は、硝子にそっとシャツの袖を引っ張られながら校内へ入って行きます。
校内へ入ると、妖精の恰好をした結絃がいて映画上映会の客寄せをやっていました。
結絃に半ば押される様に上映会の部屋に入った将也と硝子でした。
ちょうど映画の上映が始まった時であり、上映作品は白黒で無声というレトロな雰囲気のものでした。
映画のストーリーは、真柴演じる一人の少年が首吊りを図ろうとした矢先に現れた妖精により、願いを叶えてあげると告げられたところから始まります。
少年は、妖精により幼少期の頃に戻り、かつて自分の人生を台無しにした者へ復讐を遂げますが、待っていたのは壮絶な結末だったという内容でした。
川井が書いた脚本のもとで、それぞれの役をイキイキと演じる真柴、植野、永束、そして硝子の姿を見て、将也は彼等の力に驚かされていました。
映画上映が終わり、観客から拍手が起こるなか、将也が行った行動は…。
将也の行動から見ても、自分自身のプライドが立ち塞がって、中々一方前に踏み出せない事があるのではないでしょうか。
それでも、クラスメイト達の笑顔や行動を見る事により、構えていた“鎧”の様なものが剝がれていったと考えられます。
第57話 さいかい
映画の出来栄えに思わず声を上げた将也へ、観客達の視線が一斉に向けられます。
将也は恥ずかしくなり部屋を飛び出し、結絃からどうしたのかと尋ねられた際、トイレだと答えます。
自分の行った行為を後悔し自問自答している将也のもとへ、ノックする音が聞こえます。
将也がトイレの個室を開け外へ出ると、数人の生徒がいました。
生徒達に対し、将也は下を向きながら話していました。
将也は、ちゃんと顔を合わせるつもりで学校へ来たが、池の橋で暴言を言ってしまった事が気掛かりで、皆の顔を見るのが怖かったと言います。
すると、“僕の顔なら見れる？僕には暴言言ってない”と真柴が言い、彼も殴った事を将也に謝ります。
それに続くかの様に、永束や佐原、そして川井や植野も将也へ気を遣って声を掛けてきました。
将也は“ごめん…みんなのこと知らないこと知らないことの方が多いのに傷付けるようなこといって”と改めて皆に謝罪し、彼等に対する“警戒心”が解かれていきました。
そして将也は、“みんなと…みんなで文化祭、見て回りたい”と告げ、一同で校内を回る事となりました…。
久々に学校へ行っても中々自分を開放できない将也に対し、真柴らクラスメイト達の温かく包む優しさが感じられました。
そんな優しさに触れたのか、将也も徐々にですが、自分は何がしたいのかという事がハッキリしてきた気がします。
第58話 成果
日曜日、永束に半ば強引に、映画の選考会へ連れて行かれた将也やクラスメイト達でした。
永束は自分が監督した作品に自信を持っていましたが、映画選考会の審査員から厳しい評価をされてしまいます。
制作映画の映像、脚本、衣装、更には主演の真柴や監督を務めた永束の外見も指摘したうえで、あらゆる面から酷評しました。
永束達は結局、賞を貰えずに、受け取ったのは参加賞のスケッチブックだけであり、それは付き添いで来た結絃が受け取る事となりました。
会場を後にした永束や植野、川井達は、永束の指示のもとで作った作品だからこんな事になった、脚本や衣装デザインに変な要素を入れたから等と言い争いを始めます。
硝子が必死に喧嘩を止めようとするも、一向に収まる気配がありません。
すると、将也が“ふざけるな‼みんな最高だろうが‼”と叫び、審査員が分かっていない、もう一度見て貰える様に言ってくると告げます。
そう口にする将也の前に現れたのは…。
永束の様に何か新しい事を行うおうとすると何かしら批判されるというのはどこの世界にもある様に思えて、出る杭は打たれる傾向がある感じがありました。
そうしたなかでも、将也が“最高”だと励ました言葉は力づけられるものとなり、永束達に対する進路の応援メッセージとなったのではないでしょうか。
第59話 進路
学校内で行われたファッションショーに参加した佐原は、たちまち後輩達の脚光を浴びていました。
片付けを行う佐原のもとへ将也達が駆けつけ、佐原もまた撮った写真を見せて欲しいと結絃に言います。
ファッションショーの写真の出来具合が良く、結絃は佐原の後輩からチヤホヤされ、自分達の学校に来ないかとも言われていました。
そうこうしているうちに佐原は、出場したファッションコンクールの結果発表がある為に東京に向かうと言い出し、事前にバスや宿泊先を予約したうえで、共に出場した植野を連れて立ち去って行きます。
その後、将也は硝子と池の橋に向かい、将也は、卒業後の進路はどうするのかと尋ねます。
すると、硝子は自分のやりたい事と母・八重子のやってほしい事、どっちを取るか迷っていると手話で答えます。
将也は、自分のやりたい方を選ばなければ後悔すると伝え、何をやりたいのかと硝子に聞きます。
初めは答えるのに躊躇していた硝子でしたが、やがて将也に心を開き、ハサミを切る手話をして“美容師”を目指している事を伝えます。
また硝子は、尊敬している聴覚障害者の先生から貰った推薦状を取り出し、この先生のもとで働きながら資格を取る為に東京へ向かう事を将也に伝えます。
“だめだよ、東京なんか‼”と将也は叫び、東京は犯罪が多かったりして怖い場所だと訴え、硝子を必死に止めようとします。
また東京はすごく遠く、八重子や結絃も寂しがる事も伝え、“そーまでして行きたい⁉”と叫ぶ将也に対し、硝子は…。
周りが次々と進路を決めて行くなか、将也は明確な道を決められていない焦りが、硝子とのやり取りで感じられます。
また硝子に対しても、東京へ行って欲しくないという焦り等が、手早い手話から感じ取れ、将也の必死さが伺えました。
第60話 何者
佐原や植野がコンクールでグランプリを獲得し卒業後に上京する事も決まり、そんな彼女達を応援できるのに、硝子だけは応援できない将也でした。
将也の中には、硝子に東京へ行ってほしくないという思いがあったのでした。
将也の母親・美也子は、そんなに硝子の事が気になるなら一緒に東京へ行けばいい、好きにすればいいと息子に言います。
その矢先に将也の携帯電話へ、結絃や家族の事があるから東京ではなくて地元でチャレンジするという内容の硝子からのメールが届きます。
そのメールを見た将也は、硝子に対する罪悪感の様なものを感じていました。
翌日、学校にて硝子から来たメールの事を永束、真柴、川井に話しつつ、そのまま今後の進路についての話題になります。
将也は地元の大学へ行くと言い、漠然と地元にいるものだとも話します。
永束は映画の道を目指し、教師を目指し杭瀬大に入ると言い、“卒業したら何者でもなくなるから、早くやるべきことを見つけなきゃって思うんだよね”と真剣な眼差しで話した真柴でした。
川井はどうするのかと真柴が聞くと、“君と同じ♪”と答え、真柴と同じ大学に入学する様です。
帰宅した将也は、何で理容師の仕事をやろうと思ったのかと美也子に聞くと、“楽しそうじゃない”と言いハサミで切るマネをします。
また美也子は、結絃が市の写真コンクールで優秀賞を獲った事を話し、その記事を将也に見せます。
結絃に冷蔵庫のゼリーを持っていく様に美也子に言われた将也は、そのまま部屋へ向かうとセーラー服姿の結絃が座っており、将也にも座る様に言ってきます…。
進路という厳しい現実に直面するなか、将也達はクリアな形でなくても自分なりにそれぞれの夢を抱いている事が伺えます。
また、川井や将也の母・美也子みたいに、人生をポジティブにとらえながら歩んで行ける人がとても羨ましい様にも思えました。
第61話 卒業
硝子の東京行きが確実となったなか、将也も自分の進路を確実としたいと考えていました。
理容専門学校の案内書をポストで受け取り帰宅した将也は、部屋で熟睡していたのが姉と思い布団を剥がしますが、待っていたのは植野でした。
植野は一緒に話したいと言い、将也は動揺しつつ、植野を連れて近くの公園に向かいます。
植野は自らが東京に行く事と同時に、硝子も上京する事を言い、硝子が好きなら一緒に来れば良いのではと将也に勧めます。
それに対し、将也は家業を継ぐ為に地元にある学校へ行くと告げると、それなら硝子と一緒ではと植野は話します。
硝子が目指すのは“理容師”ではなくて“美容師”であり、自分の家業とは異なると将也は言います。
植野は、将也が知らない事が3つあると言い、1つ目は硝子が“美容師”ではなく“理容師”を目指している事でありそれを聞かされた将也は驚きます。
2つ目は、マンションから川へ落ちた将也を助け出したのは島田達だったという事です。
島田達は小学校時代、将也に好意があったものの、雰囲気的に関係を無かった事にしたかったのではと植野は言い、自分もそうだったと話します。
植野は、将也の机にラクガキした事、硝子へ悪口を言ったり上グツを汚したりした事を謝罪しつつ、“私…さあ、ダメな奴なんだァ…こんなになっても私…あの子のこと、好きになれないし、好きになりたくないって思ってる”と自覚していました。
時間だから帰ると告げる植野に対し、将也が3つ目の事を聞こうとしますが…。
植野から、これまで隠されていた事実が明かされた将也でしたが、そんな将也の顔が晴れやかな感じにも見えました。
植野が語る3つ目を明かされなかったものの、将也はもしかしたらその内容を察していたのかもしれません。
最終話 聲の形
成人式に出席する為に、将也はネクタイを探す等の準備で大慌ての様子でした。
美也子のもとへ行くと、八重子が髪をカットしてもらっていました。
硝子がもう家を出て会場へ向かったかと将也が聞くと、まだの様だと八重子は答え、着付けや髪のセットを行っている様子の携帯画像を見せます。
佐原と植野は二人でブランドを立ち上げるとの事で、八重子は娘・硝子の進路を心配していました。
そこへ、将也の姉の夫であるペドロがネクタイを見つけて将也に渡して来てくれました。
将也の姉のお腹にはペドロとの二番目の子供がいて、将也の姉はペドロに早く仕事を見つける様に言いました。
将也が成人式会場へ向かうと、永束や川井、真柴らが既に来ており、彼等と合流し式へ出席します。
席に座り話を聞いている将也のもとへ佐原からメールが来て、硝子や植野達と来ている事を示します。
式が終わり、一同でロビーに集まり結絃に記念写真を撮ってもらいます。
そして、卒業校である小学校の同窓会の会場へ向かおうとする将也であり、“この扉の向こうにあるのはきっとつらい過去だ、でももう一つある、可能性だ”と思いつつ、硝子と共に会場の扉を開こうとするのでした…。
最後の最後で、ペドロや将也の姉ら強烈なキャラクターが出て来る事により、最終話により強いスパイスが掛かっていると思われます。
そして、将也達が成人し次なる新しい扉を開こうとする形は、有終の美を飾るには良く、希望が見える終わり方だったのではないでしょうか。
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