日本を代表する漫画家・手塚治虫の名作の1つである医療ドラマで、これまでアニメ・テレビドラマ・映画化もされた程の人気作品です。
「医師免許」を持たず高額な治療費を要求するものの、驚異の腕で患者を治療します。
孤独な天才外科医“ブラックジャック”が毎回、様々な人間を相手に“メス”を入れていきます。
自分の置かれている状態や逆境に対し、どう接していくか、また同這い上がっていくかが、物語の重要なポイントとなっている様に感じられています。
登場人物達の歩む道をブラックジャックが支えたりメッセージを伝えつつ、物語が展開していると思えます。
『ブラックジャック』は短編集なのでどの作品から読んでも楽しめるのが見どころです。
目次
- 1 漫画『ブラックジャック』を全巻読むことが出来るか調べた結果…
- 2 ブラックジャック【手塚治虫文庫全集】1巻ネタバレ
- 3 ブラックジャック【手塚治虫文庫全集】2巻ネタバレ
- 4 ブラックジャック【手塚治虫文庫全集】3巻ネタバレ
- 5 ブラックジャック【手塚治虫文庫全集】4巻ネタバレ
- 6 ブラックジャック【手塚治虫文庫全集】5巻ネタバレ
- 7 ブラックジャック【手塚治虫文庫全集】6巻ネタバレ
- 8 ブラックジャック【手塚治虫文庫全集】7巻ネタバレ
- 9 ブラックジャック【手塚治虫文庫全集】8巻ネタバレ
- 10 ブラックジャック【手塚治虫文庫全集】9巻ネタバレ
- 11 ブラックジャック【手塚治虫文庫全集】10巻ネタバレ
- 12 ブラックジャック【手塚治虫文庫全集】11巻ネタバレ
- 13 ブラックジャック【手塚治虫文庫全集】12巻ネタバレ
- 14 知らなきゃ損する!漫画好きのための電子書籍サービス
漫画『ブラックジャック』を全巻読むことが出来るか調べた結果…
ちなみに、手塚治虫先生の代表作の『ブラックジャック』ですが、『マンガワン』で全話読めるようです。
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ブラックジャック【手塚治虫文庫全集】1巻ネタバレ
医者はどこだ!、海のストレンジャー、ミユキとベン、アナフィラキシー、人間鳥、雪の夜ばなし、海賊の腕、とざされた記憶、ふたりの修二、鬼子母神の息子、ナダレ、畸形嚢胞(きけいのうほう)、ピノコ愛してる、後遺症、ダーティー・ジャック、ピノコ再び、灰色の館、二度死んだ少年が収録されています。
医者はどこだ!
ヨーロッパ某国の実業家・ニクラの息子アクドが、街で車を派手に乗り回した挙句、電柱に衝突し重傷を負います。病院に運ばれますが、怪我の状態が酷くどの医者も“直せる保証が無い”との一点張りでした。そんななか唯一、一人だけ治せるという医者が現れます。『先生の名は?』『ブラックジャックとよばれているそうです』
日本からやって来た彼は、病院に向かい包帯に巻かれたアクドの様子を見ます。治す為には別の人間の肉体が必要だと言ってきます。ニクラは己の権力を使い、息子アクドの為に体を犠牲にする人間を探す事にします。
そこで警察も利用し、アクドが起こした自動車事故の現場近くに居合わせた、仕立て屋の息子・デビイを連行します。そして、裁判で彼を強制的に“死刑判決”にしてしまいます。
悲しみに暮れるデビイの腕に麻酔が入り、意識がなくなります。デビイと傷だらけのアクドの肉体が並べられ、ブラックジャックの手術が開始されました。手術から2か月後、包帯が取れた顔は紛れもなくアクドで、ニクラは大喜びです。しかし、アクドの反応がおかしく、間もなくニクラのもとから姿を消してしまいます。向かった先は…
人間鳥
『人力飛行コンクール』という大イベントが開催、多くの参加者が自主作品で空へ羽ばたこうと競っていました。そんな中で一人、天高く大空へ羽ばたく様に飛んでいる一人の女性に会衆一同が注目しました。
その女性が足を挫いて地上に降りると、周囲が彼女に集まります。彼女をよく見ると何と、その女性の腕と空を飛ぶ羽が“一体化”していたのです。周りからの“好奇の眼差し”がより一層深くなり、彼女は思わずその場から逃げる様に、自分の家に飛んでいきます。
彼女の家には、自身の姿をこの姿に手術したブラックジャックの姿がありました。女性の名前は『成田以留香』で生まれつき足が不自由でした。“私も昔、同じ様な立場だった”と、ブラックジャックが、せめて彼女の“空を飛びたい”願いをかなえたのでした。
その頃、以留香を執念深く追いかけ、家の外で話を聞いていた男が無断で家に入り込み、金儲けの為に彼女を捕まえようとします。以留香はスキを見て逃げ出すも、その男だけでなく多くの人間が、猟銃を使用してまで執拗に彼女を追い回します。
傷付いた以留香をブラックジャックが助け、“人殺しめ!”と周囲に罵倒してその場を去り、診療所へ向かいます。以留香を元の体に戻し義足で歩ける様にするとブラックジャックが提案したのに対し、人の冷たい視線や扱いに嫌気がさした以留香はある決断をします…。
海賊の腕
中学生の一ノ関和夫は将来が期待される程、器械体操に優れており周りの生徒からも脚光を浴びていました。しかし以前より左手の腫れが気になり、同級生の古河が彼の腕の状態を伝えた事により、いやいや病院に連れて行かれる事となります。
すると、「ガス壊疽」により和夫の腕は腐っている状態が分かります。病院医師から頼まれて来たブラックジャックも、“(彼の)腕を切断する他ない”と言います。
手術が終わり、退院後の彼の姿を見た生徒達は唖然とします。和夫の左腕はまるで「ピーターパン」のフック船長の様に、2本のカギの形をした金属の義手となっていました。それ以降、周りからは“海賊”というあだ名が付けられます。
和夫はできなくなった鉄棒の前で、やり場のない怒りをぶつける様に“くそったれ!”と言いつつ、義手を鉄棒へ何度も叩き付けます。すると、義手から“イタイ!イタイジャナイカ!”という声が聞こえてきます。
更に和夫が義手に話しかけると、“ゲンキダセヨ、タイソウガデキナクテモ、ナニカホカニデキルヨウニナレ”と、彼を励まします。その言葉もあり、和夫は全く違う分野の道を開花させ、やがて“義手の正体”も明らかとなります…。
ふたりの修二
『東西電鉄』役員会議で織田社長は、次期取締役を長男・修二に継がせようと躍起になっていたうえ、副社長の明智に権力が奪われる危機感を感じていました。その時、社長夫人から近くの地下街で火災が発生し息子・修二が巻き込まれたのではないかという連絡が来ます。
事故現場に長女・久美も駆け付け、修二の姿が見つからない中、消防隊の一人が“修二の腕時計”を見つけ出し、“発見された焼死体が付けていた”とも告げられ、織田社長と久美は悲しみに暮れます。
遺体安置所では、テレビ局が火災事故について取材しており、レポーターが織田社長にマイクを向け、亡くなったのは誰だと聞きます。すると社長は、何故か“(死んだのは)娘の久美です”と答えます。
その日一ヶ月織田社長は、娘・久美に“一生のお願いだ、今日限りで女を捨てて『修二』の名で男になってくれ!”と無茶な要求をしますが、織田家が会社を引き続ぐには、この選択しかありませんでした。
更に社長宅にブラックジャックがやって来ると、社長は久美を手術で男性に変える事(性転換)を要求してきます。拒否する久美に対し、ブラックジャックは“一ヶ月で立派な男に変身させてみせる”と告げます。
一ヶ月後、街の郊外にある学校へ『織田修二』としてきた久美でしたが、同校で驚愕の事実を知る事となります。何と火災事故で死んだはずの修二本人が校内で現れたうえ、彼の口から火災やその後の出来事が明かされます。
また『修二』を演じる久美を疑い始めた、『東西電鉄』の社長の座を狙う重役達が、彼女に魔の手が忍び寄る一方、“手術”をしたブラックジャックから思いもよらない真実が明かされます…。
畸形嚢胞(きけいのうほう)
夜遅く、ブラックジャックのもとへ1通の電話がかかって来ます。それは、ある位の高い人物の主治医と名乗る者からの電話で、是非手術に協力して欲しいと頼みこんで来ます。不思議に思いつつ現場へ向かいます。そこには顔はお面で隠し、腹部が異常に膨れ上がった女性がベッドで横になっていました。
膨れた原因は、『奇形嚢腫』(双子で生まれるはずが、1人できそこなり、もう1人の体内に包まれてしまう症状。育つうち体の中で“できそこなったものも大きくなる事もある。)です。これまでも何人かの医者が手術に立ち会ったものの彼等は狂い出し、手術は中止となってしまった故に、“嚢腫の呪い”だという事です。
半信半疑で手術を始めようとしたブラックジャックへ“嚢腫”から『切るな!』という叫び声がよぎり、同時に体に激しい激痛がしました。『まて、私はお前を切り取るが生かしておく。』 そう言ってブラックジャックは腹部に麻酔をしメスで腹部を切り取り、“できそこなった”腕や臓器等を取り出し、一旦は培養器に入れます。そして、“生命体”を驚きの方法で生かす事にしました…。
灰色の館
ブラックジャックは治療の依頼を受け、ピノコと共に山奥にある大きな館に向かいます。患者は館主の女性の兄で、彼の顔は3年前の酷い火傷により人間の顔の面影が無く、彼を地下室に隠していました。
ブラックジャックは、彼をどうにか寝かせ手術に取り掛かりますが、顔のみならず声帯や舌等も使えなくなっているうえ、頭部も何者かに殴られた跡がある事が分かります。ブラックジャックは、彼は殴られた後に焼かれたのではないかと考えます。
ふとブラックジャックは、館主の女性に“お兄さんが本当に治って、良いと思っていますか?”と聞くと、彼女は思わず言葉を詰まらせます。
また、ブラックジャックが宿泊した館近くのホテル従業員は“兄妹仲は悪く、お兄さんは残忍で妹さんをよくいじめていました。ところが、急に行方知れずになりました。”と、言ってきます…。
ブラックジャック1巻 感想まとめ
手塚治虫文庫全集のブラックジャック1巻の感想としては…リアルな手術場面に圧倒されつつ、人間の醜い部分にもしっかりと焦点を当てており、とても感情移入できました。
権力を悪用する、“時代劇の悪代官”にも引けを取らない様な者にも、鋭い“メス”を入れるブラックジャックの行動が痛烈でした。
心に闇を抱えた人物にも、様々なエピソードがあるという事を伝えてくれたのも、この作品が初めてだったかもしれません。
ブラックジャック【手塚治虫文庫全集】2巻ネタバレ
『ブラックジャック』手塚治虫文庫全集2巻に収録されている作品は…
木の芽、発作、その子を殺すな!、誘拐、万引き犬、灰とダイヤモンド、パク船長、白葉さま、ときには真珠のように、ピノコ生きてる、化身、閉ざされた三人、獅子面病、ある教師と生徒、なにかが山を、ふたりのジャン、ピノコ還る、純華飯店、焼け焦げた人形、赤ちゃんのバラード、誤診、目撃者が収録されています。
木の芽
小学生の青木幹男は最近、体から“木の芽”を体からばら撒く様になり、同級生からも不思議がられます。幹男の兄・茂も弟の様子に違和感を覚え、医者に見せる事を勧めますが、幹男は強く拒みます。
そこへ彼等の家にブラックジャックが訪ねて来ます。実は兄・茂が、ブラックジャックに3ヶ月前に弟の事で手紙を送っていたのでした。茂はブラックジャックに親には弟・幹男の事は言っておらず、幹男が“病人”と知ったら悲しむと言います。
ブラックジャックは“病人ではない、言われる身にもなってみろ!”と激しく反論します。その後、幹男は学校の医務室で治療する事になりました。幹男の状態は酷くなる一方で、教室で同級生から“おばけだ!”と言われる程に“葉”で覆われた状態になります。
兄・茂が弟・幹男を直ぐに教室から医務室へ連れていきます。その頃ブラックジャックが兄弟の母親を訪ね、『オプンチア』というサボテンの一種について聞くと、母親の夫(兄弟の父親)が商社勤めの関係でブラジルにいた時、『オプンチア』を育てていたそうです。
そして帰国する直前に、幹男が生まれたとの事です。経緯を話したブラックジャックがその場で“幹男の体から生えた芽”を見せると、母親が“サボテンの双葉の様だ”と言ったのに対し、“実は幹男君の体から生えました”と言った瞬間、母親は絶句します。
その頃、医務室では兄・茂も手が付けられない程、幹男の体は大変な事になっていました…。
その子を殺すな!
超能力者のハリ・アドラは自らの手を、病気患者の体にメスを一切使わずに突っ込み、体内の腫瘍を取り出す驚異の能力で、マスコミからも取り上げられていました。
彼の評判はすぐさま「週刊秘密」の目に留まり、その雑誌編集者はハリ・アドラにブラックジャックと勝負をさせようとします。ブラックジャックが“無免許であるうえ、患者から大金を巻き上げている悪徳医”であるとハリ・アドラに伝え、彼を招きます。
その頃、ブラックジャックはある「子宮外妊娠(子宮の外である腹腔(腹の隙間)や卵管で胎児が育つ状態)」の患者の手術に携わっており、X線で調べたところ、その胎児はもう助かる見込みはありませんでした。
その手術室へ突然、ハリ・アドラが踏み込んできて、ブラックジャックに“手術ハサセナイ、胎児ヲ殺スナ!”と言い、ブラックジャックが取り出そうとしたメスを、彼の超能力で次々と折ってしまいます。
仕方なくブラックジャックはその場は身を引き、ハリ・アドラが患者の腹部に手を当て“神ヨ…私ニ力ヲ…”と言い、体内へ突っ込んだ後に胎児らしき生物を取り出すも、それは彼にとって“失望”へと陥る事となる結果となります…。
万引き犬
一匹の野良犬がダンプカーに轢かれた場面に、ブラックジャックとピノコが偶然居合わせます。ブラックジャックは“ほっとけ”と言うもピノコが“助げで~!死ぬー!”と周囲がどよめく程に泣きわめいたので、仕方なく犬を連れて帰る事にしました。
ブラックジャックがその犬の様子を見ると、肋骨が半分も折れ肺に刺さっているという重傷でした。治療が済み、ブラックジャック宅になついてしまったその犬は、ぐーたらな様子故に“ラルゴ”(音楽用語で『とてもスロー』)と名付けられました。
このラルゴ、簡単なお使いもろくにできないうえに、ピノコが『品評回』へ参加させた挙句、会場審査員のネックレスをひったくるわで、ブラックジャックの手を焼いていました。
しかし、一見鈍そうなラルゴの行動が思わぬ形で彼等の命を救う事となります…。
白葉さま
長髪・白装束に袴を身にまとった“女祈祷師・白葉さま”は、ある一軒家の子供の様子に対し“タタリじゃ!”と言ってきます。そして、“蛇の怨念が子供の体に憑りついたのじゃ!”とか“この霊を取り去るには霊水の力を借りるにほかなし!”等と言い、子供の家族を脅していました。
そこへ突然ブラックジャックが現れ、“お前さんを追いかけて来た。賭けをしてみるかい?
この子の病気が治せなければ、お前さんの前で土下座して医者を辞めると誓うよ。”と彼女に言います。
子供の体は、『魚鱗癬』(皮膚が固くなり、ひび割れができ魚の鱗の様になってしまう状態)という皮膚病の一種でかなり重傷でした。ブラックジャックは“全身の皮膚を移植しなければならない”と言い4~5日程、近くの旅館へ泊り様子を伺う事にします。
帰り際に“女祈祷師”がブラックジャックに話しかけ、“ただの言い逃れ”と言ってきます。また“医者に何ができるの?治せない病気があるくせに。”と言ってきます。ブラックジャックはそれに対し“治せないものは例えば…、お前さんのひねくれた心の傷だな。”と言い返します。
宿泊先にいたブラックジャックのもとへ“一家心中”があったという電話があり、その子供の遺体を送ってくれるように連絡します。そして、ブラックジャックの所に届けられ、“女祈祷師”の妨害を押しのけつつ、子供を救う為の皮膚移植の大手術が始められます…。
ときには真珠のように
ブラックジャックのもとへ1通の小包が届き、ピノコが受け取ります。包の中に入っていたのは、石の塊の様なものに収められたメスでした。また、同封された紙には『J・H』という文字が書かれていました。初めは何の事やら全く見当が付きませんでしたが、ブラックジャックの頭にふと『本間丈太郎』という名前がよぎります。
この人物は外科医で、ブラックジャックにとって“恩師”で、『医者』になる道を作ってくれました。
この“メス”を送って来た事には何か訳があると思い、本間丈太郎のもとを訪ねる事にしました。現在は山奥の一軒家で、本間は老衰で寝たきりの状態となっていました。
ブラックジャックは、本間に“石の塊に入ったメス”を見せます。すると本間は昔、瀕死の重傷を負った彼(ブラックジャック)を手術で救い出した時の事を話します。
本間は手術の際、“メスに関する重大なミス”を犯してしまったと告白すると、そのまま意識を失います…。
ある教師と生徒
小学生の久男は寝込む程、学校へ行く事を嫌がっていました。その理由は担任の村正で、彼は授業で勉強のできない生徒に対し、暴力と同じくらいキツイ言葉を浴びせるスパルタ教育を行っていました。
久男はそんな担任の村正を嫌い、学校も休みがちになります。そんなある日、母親が久男を何とか学校へ行かせたものの、彼は通学途中で“怪我をしたら長いこと学校へ行かずに済む。そうだ、ほんの少し怪我をしよう”という考えを抱きます。
そして、半ば停車していた軽トラックに身を投げ出した瞬間、その軽トラがスピードを上げて走り出し、久男を撥ねてしまいます。久男の事故は授業中の村正の耳にも入り、病院に電話で尋ねると、久男は足と右手を切断しなければならない程、重傷だと告げられます。
村正から、久男への手術依頼・電話で、ブラックジャックは病院へ向かいます。村正は先に病院に行き久男の母親と対面し、彼女から実は“久男が学校へ行くのを嫌がり、自ら車へ飛び込んだ”事を聞かされショックを受け、そのまま病院を後にします。
村正がいなくなった直後に病院へブラックジャックがやって来て、“交通事故のオペをやらせて欲しい”と、久男のレントゲン写真を見たりして、足の様子を伺います。その矢先、外から悲鳴が聞こえ、今度は病院前で久男の担任・村正が車に惹かれてしまいます…。
ブラックジャック【手塚治虫文庫全集】3巻ネタバレ
『ブラック・ジャック手塚治虫文庫全集』3巻には…
白いライオン、恐怖菌、光る目、電話が三度なった、二つの愛、めぐり会い、ちぢむ!!、人面痩、はるかなる国から、アリの足、ストラディバリウス、ふたりの黒い医者、ブラック・クィーン、にいちゃんをかえせ!!、コルシカの兄弟、針、ネコと庄造と、オオカミ少女、のろわれた手術、火と灰の中、ふたりのピノコが収録されています。
光る目
哲男は学校でいつも番長一味にいじめられ、お金もたかられていました。そんな哲男は、母親が呆れる程に“宇宙人”や“SF”に熱中し、夜は家の屋根で“宇宙人よ、僕を助けに来ておくれ”と唱えるまで、行動はエスカレートしていました。授業中、哲男は目が回る様に教室で倒れ、直ぐに医務室へ運ばれました。“目に原因がある”と言われ後日、専門医に診てもらう事となりました。
その夜、自宅にて目の痛みを訴える哲男の様子を母親が見に行くと、暗い部屋の中で哲男の目がキラリと光っていました。この姿に母親が戸惑う一方、哲男は“宇宙人がやって来て、僕の体に乗り移ってくれたんだ”と思い込みます。
哲男はこの“目”を利用し自分をいじめて来た番長を逆に脅し、“お前は一ヶ月後に死ぬ“と嘘の予言を言って怖がらせました。しかし、その目は決して“宇宙人が乗り移った”わけではなく、病気とは認めない哲男を、母親が強引に病院へ連れていきます。
哲男の目が光ったのは“猫眼現象”という「緑内障」から起こるもので、目の奥には大きなできものがあり手術が必要でした。哲男は病院でも手術を拒み、“宇宙人が目を治すの嫌だ!”と駄々をこねました。するとそこにいたブラックジャックが、“そんなに見えなくなりたいか、甘ったれるな!”と激しく責します。哲男も“光る目の間は脅かせるのに、治ったらまたいじめられる”と、本性を露わにします。
それでもブラックジャックは、“私は君をもとの目に治してやる。その時また番長に会うかどうか、君の結城次第だ。”と、哲男に通告します。そしてブラックジャックは手術を開始する頃、ある人物に会って話をつけていました…。
ふたりの黒い医者
ブラックジャックとピノコが新幹線のホームを歩いていると、前方から黒い服に身を包み左目に眼帯をした、怪しげな男が歩いて来ました。ブラックジャックはピノコへ先に宿泊先に行く様に言った後、その眼帯の男に会う事にしました。
その男の名はドクター・キリコで、“安楽死を専門とした医者”でした。『また、人を殺すんだな?』というブラックジャックの言葉にも耳を貸さず、『俺は金次第で、安楽死を遂げさせる』と言ってキリコはその場を立ち去ります。
そしてキリコはある病院の一室に向かい、1人の女性に会います。その女性は2年前にトラック事故で背骨を折り、体が全く動かない状態でした。一生このままだと医者からも言われた故に、これ以上家族に迷惑をかけたくない思いから、自分の生命保険金500万円をかけてキリコに“安楽死”を依頼してきました。キリコは2日後の夜に実行すると言います。
一方その頃、彼女の息子・娘がブラックジャックに会い、母親を助けて欲しいと願い出ます。彼等は自分達が働いて用意した百万円を差し出すと、ブラックジャックは2日後の晩に手術を行うと言ってきます。
2日後、女性の部屋に先にやって来たのはキリコでした。キリコは“安楽死”の装置を取り付け、電源を入れ彼女の意識が朦朧とし始めた時、部屋の戸が開きブラックジャックと女性の息子・娘が険しい顔で入って来ます…
にいちゃんをかえせ!!
テレビのヒーロー番組『ビッグマスク』に子供達が夢中で観ている中、一人ユキオは“おもしろくない”とそっぽを向いていました。実はユキオの兄・タカオはスーツアクターで、『ビッグマスク』の悪役である怪人・ゴーラスを演じていました。
その事でユキオは友達にからかわれ、喧嘩となってしまいます。その頃、『ビッグマスク』の撮影所では年末が近づく過密スケジュール撮影に挑む、タカオの姿がありました。しかしその一方で、彼の体に異変が起こり始めていました。
周囲のスタッフが驚く程にタカオの足は腫れあがり、撮影所内で倒れてしまいます。それ以来、タカオは家に帰って来なくなります。兄の安否を心配していたユキオのもとへやって来たのが、ブラックジャックでした。ブラックジャックはタカオ・ユキオ兄弟の母親と面会し、“タカオさんは確かに預かりました、場合によっては切ります。”と話していたのを、ユキオが外から盗み聞きしていました。
ユキオは、ブラックジャックが“タカオを人質に取り切り刻んでしまうのでは?”と思い込み、こっそりブラックジャックの車に忍び込み、家にも侵入します。そしてタカオが寝ている部屋に入ると、彼の変わり果てた姿があり、思わずユキオは大声を上げその場から走り去ってしまいます…。
ネコと庄造と
雪が降りしきる寒い夜、ブラックジャックのもとへ“自分の子供が鉛筆を飲み込んだので診て欲しい”と、1通の電話が来ます。内科医への相談を勧めても聞く耳を持たない状態で、ブラックジャックはとりあえず相手の家に行く事にします。
玄関で1匹の猫と1人の中年男性がいました。迎え入れた奥の部屋で1匹の子猫が布団で寝ているのを指し“14歳の息子です”と言ってきます。ブラックジャックは“動物病院と勘違いされては困る”と怒ると、男性は逆上しブラックジャックを追い出します。
地元病院・院長によると、この男性は『庄造さん』という方で、以前は家族と共に崖の上の家に住んでいました。しかし大雪に見舞われた際に雪の重さで崖が崩れ、家も押し潰され奥さんと子供が亡くなり、庄造さんも頭を強く打ち脳の働きがおかしくなりました。
庄造さんの病気は『脳血腫』(脳内で起きた出血により血液が貯まり形成された状態)で、症状は家近くにいた野良猫の家族を“亡くなった奥さん・お子さん”と思い込み一緒に暮らす程までに酷くなっていました。治療するにも脳底に血腫がある為に副作用で死ぬ危険性を恐れ誰も手術をしたがりませんでした。
そこでブラックジャックは治療費2500万円を男性が勤める会社へ請求し、男性には“息子さんを治療する”と言い聞かせ子猫と男性共に麻酔をかけ、男性の脳にある血腫を取り除く手術に取り掛かります…。
オオカミ少女
ブラックジャックは、雪が降りしきる某国を訪れていました。この国の山奥では“オオカミ少女”が住んでいると人々の間で噂になっていました。
ブラックジャックが『国境越えバス』に乗車しようした時、税務職員に“以前この国の政治職員シッ・チャカ・メッチャカの手術をした”事を指摘されます。この人物は手術後に亡命をした為、ブラックジャックは“事件関係者”としてその場で逮捕されようとします。
ブラックジャックは鞄に仕掛けてした“目潰し”で周囲をくらまし、その場から車で逃げだします。山奥の坂道でガス欠となり、そこから歩いて行こうとしますが、途中で気を失ってしまいます。
そこへ遠くから一人の少女がやって来て、彼を小屋まで連れ出し介抱します。ブラックジャックは礼を言うも、彼女は顔を見せたがりません。
よく見ると、彼女の口元は唇やあごが分かれている状態で、これを『唇裂』『口蓋裂』または『狼咽(ウルフスラッケン)』とも言います。彼女の名はレーカで町に生まれたものの、この顔故に“オオカミ少女”と呼ばれいじめに遭い、山へ逃げて来たとの事です。
ブラックジャックはレーカに、自分を助けてくれた借りができたとして、“オオカミから赤頭巾へ変身させてやる”と言ってきます。これが後にレーカにとって嬉しくもあり、悲劇的な展開を迎える事となります…。
ブラックジャック3巻 感想まとめ
普段はクールで感情にとらわれないブラックジャックですが、たまに“熱血漢”の様な一面を見せる所もあり、意外性を感じさせました。
『光る目』では子供に叱責したり、『にいちゃんをかえせ!!』では、兄弟の為にひと役買って“悪役”になり切る等、人間らしい面が親しみを感じます。
ブラックジャック【手塚治虫文庫全集】4巻ネタバレ
『ブラック・ジャック』4巻には、えらばれたマスク、ガス、からだが石に、けいれん、イレズミの男、こっぱみじん、なんという舌、スター誕生、ドラキュラに捧ぐ、地下壕にて、弁があった!、ピノコ・ラブストーリー、宝島、ハローCQ、地下水道、デベソの達、絵が死んでいる!、満月病、報復、おばあちゃんが収録されています。
ガス
ピノコがブラックジャック宅にて掃除をしていた時、多量の埃でむせて咳をし、自分が風邪を引いたと勘違いをします。ピノコはブラックジャックの鞄を無断で開け、そこからカプセル錠剤を取り出し、口に入れ飲み込みます。
その後、ブラックジャックが鞄の中に錠剤が無い事に気付き、ピノコに尋ねます。ピノコの『飲んじゃった』という言葉に顔面蒼白となります。そして思わず『あれは猛毒だ、青酸カリだぞ!』と叫びました。
その錠剤は2~3日前に自殺未遂患者が持っていたものでした。ピノコによると、約30分前に飲んだと言うので、もうあと30分経つと錠剤が溶けて死ぬと聞かされ、ピノコは思わず泣き出します。
ブラックジャックは急いでピノコに『胃洗浄』をさせ、胃の中の物を吐かせようとするも何も出て来ず、『十二指腸』まで通ったと悟ります。『ピノコ…死ぬなよ、何とか助けてやるぞ!』という思いを胸に、ブラックジャックはピノコを手術室へ連れていきます…。
からだが石に
ブラックジャックは、“政府が治療の為に百万リラ(=ユーロ、現在で約12億円)をかけている”という患者の少年に会う為に、イタリアへ向かいました。少年が療養している教会へ向かうと神父をはじめ、親や知り合いの人達がその少年を看病していました。
少年の足はまるで石の様に硬直し、ブラックジャックがフォークで突いてみても、彼は何も感じないとの事です。この症状が現れだしたのは3年前で、更にその半年後には足の筋肉の“硬化”が現われたそうです。
彼の病気は『進行性化骨性筋炎』といい、体の筋肉が骨に変わり、足から腹・胸部へと浸透し、最後には心臓が止まってしまうものです。そのうえ完全な治療法は無く、2~3年が限界と言われていました。
そんな時にブラックジャックがやって来て、“一つだけ助かる方法がある”と言ってきます。
それは、少年の“脳神経を別の肉体へ移植する”事でした。成功する可能性は極めて低いです。
そのうえ、『神経がちゃんと繋がるか』『(他人の肉体である為)拒否反応の恐れ』『肉体(死体)待ち』等と、難点は尽きませんでした。
時が刻々と過ぎていくなか、事態に焦った少年の父親が、とんでもない暴挙に走ってしまいます…。
けいれん
ブラックジャックは手術の最中、顔色が優れず手のけいれんを起こし、急遽別の医師に変わってもらう事となりました。“ブラックジャックももう駄目か…”と落ち込んでいる時に、大先輩であるポン骨大学・山田野医師が訪ね様子を伺っていました。
その後もブラックジャックは手術中にけいれんを起こし、代行をお願いする状態が続いていました。そこで山田野医師は、今は亡きブラックジャックの恩師・本間丈太郎医師のもとを訪れ、少年時代のブラックジャックの『診療記録』を取り出します。
当時の状況を記した記録によると、“外傷は酷く、頭蓋骨や手足はズタズタ、内臓も損傷していた。また『開放性弁状気胸』(胸の傷に空気が入り、空気が胸に入っても出ずに溜まり、肺が押し固められ息ができず苦しみ続ける)で呼吸困難の状態”との事でした。
ブラックジャックが弁状気胸で死ぬ思いを経験した故、気胸の手術の際に昔の苦しみを思い出し、強迫観念に脅かされ手術ができなくなったのではと山田野医師は考えます。山田野医師はブラックジャックを救おうとある方法で、“恐れ”を取り自信を持たせようとします…。
イレズミの男
ブラックジャックは、“以前手術した患者の事で会いたい”と『R大学医学部113号室』へある人物へ呼ばれます。部屋に入った瞬間、鍵がかかり閉じ込められてしまいます。頭蓋骨や臓器等の標本が保存してある棚の奥から、“手紙”の主だという若い男が出て来ます。
彼は壁の額縁に飾られた“全身入れ墨が彫られた人の皮”を指し、皮の主こそ以前手術した人物だと言うと、ブラックジャックは『香取仙之助』の名が浮かびます。仙之助は“旧式ヤクザ・最後の1人”と言われ、7千人の配下を持つ大親分でしたが、2年前に亡くなります。
仙之助は「腎臓癌」でしたが手術を嫌った故、彼の妻や側近がブラックジャックを呼びました。仙之助の入れ墨は、ブラックジャックを驚かせる程、全身のすみずみまで掘られていました。入れ墨に少しでも傷が付くと値打ちが下がる、それが手術を避けていた理由でした。
仙之助の妻から“入れ墨の無い所を切ってでも手術して欲しい”と無茶なお願いをされつつ、ブラックジャックは渋々引き受けます。
手術前に“入れ墨に傷が付けば、7千人の身内が黙っちゃいねえよ。”と語る仙之助に麻酔がかかります。ブラックジャックのメスが仙之助の背中をパクリと裂き体内から癌を取り出し、手術は成功します。配下に睨まれつつ仙之助の妻に守られながら、そこを後にしました。
医学部標本室でブラックジャックと今会っている男は仙之助の息子・洋一で、米国へ留学していたものの母親(仙之助の妻)が亡くなった事を機に帰国しました。彼も仙之助の入れ墨に傷が付いた事が許せませんでした。
そして、“傷跡を確かめる時が来た”と壁から額縁を下ろし、“入れ墨の皮”を隅々まで見ますが、傷(手術の跡)は一つも見当たりませんでした…。
スター誕生
人気若手女優の杉並井草に対し、“熱愛の噂がある”とマスコミが注目し聞きつけるも、彼女は決して口を開きませんでした。井草はある丘の上にある家が見える場所に別荘を構え住んでいました。
彼女がずっと眺めていた家の主が実はブラックジャックで、井草にとって“人生を変えてくれた恩人”で、彼に恋い焦がれていました。そしてスターになった今、自分の思いを伝えようと、マネージャー及川の反対を押し切り、ブラックジャックを訪ねます。
井草が初めてブラックジャックを訪ねたのは、5年前に実家から家出しやって来た時でした。目的は“綺麗な顔に整形し女優になりたい”との事です。ブラックジャックはその言動にあきれた様子で、“人間の顔形には個性があり、それが美しいものだ。”と、整形に反対しました。
それでも彼女は実家に帰らず、ブラックジャックは彼女を整形する事になり、“作られたマネキンに会う気は無いから、顔が変わったら二度と私の前に二度と現れないでもらいたい。”と通告します。
彼女は小さな芸能プロダクションに入り、芝居や歌をみっちり学んでいました。そこの事務所の社長さんが彼女の“金の卵を産む?”実力に目を付け、『美容整形』をする様にいってきます。
女優として名誉を手にしたお礼を言いたく、ブラックジャックのもとを訪れていた井草の目に留まったのは、暖炉の上にあった整形前の“昔の写真”でした。それを手にした時、ブラックジャックが“その娘は死んだ、魅力的な子だった。”と言いました。
間もなくして、マネージャー及川が“雑誌社がやって来た”と連れられて、その場から立ち去ります。しかし井草の心の中では、何かが変わっていくのに時間はかかりませんでした…。
ブラックジャック【手塚治虫文庫全集】5巻ネタバレ
シャチの詩、病院ジャック、奇胎、水とあくたれ、サギ師志願、魔王大尉、道すがら、幸運な男、犬のささやき、友よいずこ、古和医院、侵略者、奇妙な関係、帰ってきたあいつ、ピノコ西へ行く、雪の訪問者、浦島太郎、クマ、死者との対話が収録されています。
病院ジャック
ブラックジャックが6歳の男子の手術を開始しメスを入れた直後、機関銃を持った覆面の男が手術室に侵入し“手術の中止・患者に手を付けない事”を要求してきます。
そして、彼のボスらしき男が放送マイクで『この病院を我々が占拠し、諸君と患者が人質だ。これから1時間のうちに日本政府が、我々の要求をのまない時は、手術中患者の命はないだろう』と言ってきます。
時間が刻々と迫る中、医師達の必死の説得や抵抗も空しく、振り払われてしまいます。
そうしたなか、再び放送マイクから組織のボスが『日本政府の裏切りで計画は失敗、報復処置として病院の電源を爆破する』と言い出します。
手術室にいた覆面男もその場から立ち去る直前に外側から機関銃をぶっ放します。手術室の入り口は塞がり、室内の電気も消えて真っ暗になってしまいます。
それでもブラックジャックは、『オペは続ける』と言ってきます…。
魔王大尉
米軍のケネス大尉が治療の為に部下達により運ばれ、ブラックジャックのもとへ向かっていました。その頃、ブラックジャック宅では数人の幼い子供達が来ていました。
彼等は日本人に引き取られたというベトナムの孤児で、この子達が住んでいた「グチャン村」の親や村人達はベトナム戦争時、ケネス大尉率いる米軍に火炎放射器で焼き殺されてしまったそうです(『グチャン事件』としても、日本の新聞にも取り上げられました)。
子供達は、家族を皆殺しにしたケネス大尉を(治療してまで)助けないでと訴えて来ます。
しかしブラックジャックは、“『医者』である以上、助けを求める患者を助けなければならない。また、その為のお金を貰って何が悪い⁉”と答えます。
すると子供達は逆上し、“ケネス死ね、先生も死んじゃえ!”と、ブラックジャックに石を投げつけ、ケネスらが乗った車が来ると同時に、その場を去ります。
ケネスと幹部らがブラックジャック宅を訪ね、ケネスはベッドで横になっても自らが“魔王大尉”として国の英雄だった事を自慢げに話す一方、ベトナム戦争で脳に打ち込まれた弾丸により命の危機にさらされていました。
ブラックジャックが、手術の際に“自分が望む立会人をつけたい”と言って来たのに対し、ケネスは全く恐れる事なく、手術へ臨みます。しかし、そこからケネスにとって状況が180度変わる事となる“恐怖の時”となっていきます…。
友よいずこ
本間丈太郎医師が、クロオ(子供の時のブラックジャック)の手術に立ち会っていました。顔の片側は事故で剝がれていて、
新しい皮膚の移植が必要でした。
『皮膚がないと、クロオくんは手術できません。』本間の助手が、見舞いに来たクロオの同級生やその保護者にそう尋ねると、皆一目散に帰ってしまいます。そんななか『ぼくの使っていいよ』と、1人の少年タカシが名乗り出て来てくれ、彼はタカシの親友でした。
タカシは混血児でクロオと皮膚の色が違いましたが、“難は急げ”という事で本間と助手はタカシを連れて手術室に急ぎます。その後手術は無事成功し(皮膚を提供したタカシが先に退院)、クロオは辛いリハビリに耐えていきました。
成長したクロオは医科大学へ進学、自身の外見で周りから白い目を見られつつも、親友タカシの行方を捜していました…。
侵略者(インベーダー)
サトルは、二ヶ月程前から腹部が膨れだしみるみる大きくなり、更には尿が赤くなり、危機感を感じた母親が彼を病院へ入院させます。しかしそのうち優しかった母親をはじめ、田口主治医、看護師がサトルに対しよそよそしい態度を示す様になります。
母親・田口主治医・看護師に対し、サトルは(寝床にある『宇宙人・侵略者』関係の本を読んでた影響もあり)“侵略者(インベーダー)なんだ!だまされないぞ!”と思う様になります。
主治医が彼の状態を見ようとすると、サトルは反発し逃亡、“誰か助けて!”と叫び逃げた先にはブラックジャックの目の前で意識を失います。意識を失った際の夢の中、“サトルの病室へ『君の味方』だ”という者に病院の外へ誘われ、崖の様な所に着いたところで目が覚めます。
そこは病院の寝室で、田口主治医・他の医師や看護師達が大きな医療器具の準備していました。サトルは“僕をいよいよ実験台にするんだな、そうはさせないぞ!”と、ベッドから這い上がり器具を壊そうとしたりして暴れます。
そこへブラックジャックが入って来て、サトルを殴ります。田口主治医らはサトルをかばうなか、ブラックジャックは“こうしなければ静まらない”と言ったうえ、サトルに体の本当の状態を告白し始めます…。
浦島太郎
大正13年に炭鉱で大きな爆発があり、多くの犠牲者を出しました。そのうち5人の炭鉱員が救助されたものの、全員意識不明の重体でした。その1年後に3人、5年後にもう1人が意識が戻らぬまま、帰らぬ人となります。
しかし、救助されたうちの一人であるCさんのみが“生き続けて”いました。Cさんは当時15歳の少年炭鉱員として、同じ坑内で働く父親へ弁当を届けに行き、事故に巻き込まれました。この時に父親も亡くなり、母親も彼の意識が戻らぬまま、病死しました。
Cさんは、日本がその後歩んで来た戦争の記録・戦後・経済成長等を全く知らずにずっと眠り続け、もはや“骨と皮”の状態になっても生き続けていました。
そこへ目を付けたのがドクター・キリコで、事故以来1歳も老けていない“70歳”の肉体に戸惑いつつも、彼はCさんが眠る病院を訪れ同院の医者に“生きる望みを絶たれた人間は、楽に死なせてやった方がよっぽど良い”と「安楽死」を勧めます。
ただこの日はCさんの手術を行う事が決まっており、それもドクター・キリコのライバルであるブラックジャックが行う事となっていました。ブラックジャックの前にキリコが現れ、“もうCの面倒は見切れないぞ”と、何が何でも安楽死を行おうとします。
ブラックジャックは、キリコの行動を阻止しようとCさんの手術を決行します。
しかしそれは、“歴史には逆らえない”事を痛感せざるを得ない、悲しい結末となります…。
小さな悪魔
小学生のジュンが家に帰ると、母親の顔色が悪く、ふさぎ込む様に椅子に座っていました。
ジュンの父親が母親の容態を診てもらおうと、連休で空いている病院が無く、ブラックジャックのもとへ行く事にしました。
ジュンの母親は妊娠五ヶ月でしたが、「異常妊娠(胞状奇胎)」である事が分かります。更に子宮に奇胎が潜り込んだものが変化し、癌に似た悪性腫瘍になりかかっている為、子宮も取り除く必要があるとの事です。父親の決死の願いで母親の命を優先、三日後に手術するとブラックジャックが言いました
しかし弟や妹が生まれる事をとても楽しみにしていたジュンは、父親から“母親のお腹の赤ちゃんが死んだ事・もう赤ちゃんを産めない”事を告げられたうえ、手術室でバケツ一杯に入った(赤ちゃんになるはずだった)胞状奇胎を目にし、現実が受け入れられず悲しみに暮れます。
そのジュンの悲しみは、やがて“あいつが赤ちゃんを殺したんだ!”というブラックジャックへの憎しみへと変わっていきます。そして父親に内緒で、子供ながら恐ろしい計画を考え実行しようとしていました…。
ブラックジャック5巻の感想まとめ
“インベーダー”等を取り入れているところに、当時の流行や時代背景を感じ取る事ができます。
また、話の中でブラックジャックが“医者は患者の為なら、時には悪魔になる事もある”という台詞が印象的かつシビアでした。
時には何かを犠牲にする事もある事がとてもリアルで、読む者に深く印象付けています。
ブラックジャック【手塚治虫文庫全集】6巻ネタバレ
6巻には、デカの心臓、タイムアウト、望郷、もうひとりのJ、U-18 は知っていた、ペンをすてろ!、不発弾、ハッスル・ピノコ、未来への贈り物、白い目、ハリケーン、悲鳴、曇りのち晴れ、三度目の正直、ディンゴ、きみのミスだ!、老人と木、座頭医師が収録されています。
きみのミスだ!
ある病院の主治医は院長の息子ですが、診察そっちのけでアイドル歌手『阿古賀礼子』に夢中で、テレビの歌声をテープレコーダーに収める程でした。
そこへ女性看護師が、何の注射を打てばいいか分からない患者がいると訪ねて来ます。その主治医はあろうことか、『こっちは忙しいから、ペニシリン二万単位でもうっとけ!』といい加減な返答をします。
その結果、患者の容体が急変し、『ペニシリン・アレルギー』を発生しショック死をしてしまします。
すると、病院の失態を恐れた院長・主治医親子はカルテやネガ等を消去し、注射を打った女性看護師に全て罪を着せました。“世間の敵”となった彼女は絶望に暮れ、思わず橋の上から電車が走る線路へ飛び込もうとしたところを引き留めたのが、ブラックジャックでした。
ブラックジャックは彼女の話を聞く事にします。すると、“彼等が証拠を残していない事”“院長の息子がアイドル歌手『阿古賀礼子』の熱烈なファンである事”を伝えると、ブラックジャックは思わず笑いだします。そして、彼女に『6ヶ月我慢すれば、奇跡を信じさせてやろう』と言い出します…。
老人と木
ブラックジャックが街中の行動を車で走っていると、突然一人の老人が飛び出して来て“ここは『通行止め』だから走るな”と言います。
更に一本のケヤキの大木を指し、“排気ガスや公害で枯れかかっている!”と説教をして来たので、ブラックジャックは一旦そこを退散します。
老人が木に登り毛虫の除去をしたりしていると、下の方で数人の男性が話しているのを見かけます。老人が男性陣に声を掛けると、彼等は市の職員で“高層ビルを建てる為に、この大木を切る”と聞かされ唖然とします。
老人はその場にいた職員をはじめ、役所のあらゆる部署に“大木切断”を止める様に説得するも、全く耳を傾けません。
そのケヤキの大木に執着する理由は、彼にとって“命の恩人”だからです。大正十二年に発生した大震災時も、この大木にしがみつき命を救われたそうです。
木を切られる前日、老人は大木を前に杯を交わし、“わしゃ先に行くぞ”と言い、木の枝に紐をかけ首吊り自殺を図ってしまいます。遠くで彼の姿を見守っていたブラックジャックが、メスを投げ首にかかった紐を切り落下した老人を連れて診療所(自宅)へ向かいます。
怪我の治療・手術は成功します。ただ意識が戻った際、彼が再び自殺を図ってしまうのではという不安がよぎります。老人が意識を戻すと、ブラックジャックに礼を言い、“ある場所に連れてって欲しい”と言ってきます…。
座等医師
砂嵐が吹き荒れる下町に1人、盲目の老人がやって来ます。そして一軒の貧しい家を訪ね、そこには病気で寝たきりの母親と子供が1人住んでいました。不思議そうに見る子供をよそに、彼は母親に近づき、針を一本取り出し、腹部に突き刺しました。
老人は母親に対し、これで病気は4、5日たったらケロリと治ると言って立ち去りました。
更にその老人は、偶然出くわしたブラックジャックに対し、『手術や薬だのに頼るなんて、くだらねえこった』と挑戦的な言葉を吹きかけます。
ブラックジャックが名を聞くと『ハリ師 琵琶丸』と答え、去って行きます。その後も琵琶丸は、東京や大阪の下町を訪れては針を刺し、多くの病患者の病を治していき彼の腕は評判となりました。
更に琵琶丸は、ある母娘が住んでいる団地の一室を尋ねて、手術する予定だという娘の体に針を刺します。その行為が最悪の事態を招いてしまいます…。
単なる医療ドラマというわけではなく、当時の流行や時事ネタもしっかりと捉えている事が分かります。
この巻でも、恐らくこの頃は時代劇「座頭市」がテレビ&映画共に人気だった頃だと思われ、それをモチーフにしたキャラクターも現れたりして、娯楽作としても楽しめると思いました(別の巻の話では「笑っていいとも!」を取り入れたネタもありました)。
また、普段はニヒルでクールなブラックジャックですが、感情をあらわにする場面も多かったので珍しい巻でもあるのかもしれません。
ブラックジャック6巻の感想まとめ
一見、強引な物語展開の様にも見えましたが、社会の理不尽さや人間が抱いている己の欲望が見え隠れしている様に感じられました。
また何かを成し遂げる為に、時にはリスク(犠牲)が伴うという辛い場面が描かれていて、そこがリアルでした。
ブラックジャック【手塚治虫文庫全集】7巻ネタバレ
7巻には、執念、殺しがやってくる、霧、青い恐怖、研修医たち、てるてる坊主、あるスターの死、夜明けのできごと、戦場ヶ原のゴリベエ、新堂、きたるべきチャンス、湯治場の二人、盗難、空からきた子供、金!金!金!、霊のいる風景、99.9パーセントの水、昭和新山、落とし物が収録されています。
あるスターの死
アメリカ・ビバリーヒルズでは、多くの映画俳優が屋敷を構えて住んでいます。しかし、富や名誉を手に入れたスターもやがて老いていき、時代の流れと共に存在すら忘れ去られてしまいます。
女優のマリリン・スワンソンもその一人でしたが、近年再び彼女の美貌と出演作品に注目が集まり始めていました。これに目を付けたある映画会社の社長が、スワンソン宅を訪れます。
しかし社長を招いたのは一人の老婆で、“女優マリリン・スワンソン”としての活躍から既に30年の月日が経っていました。それでも社長は、新作映画への出演の交渉を申し出ると、スワンソンは“お断りします!”と激怒、自分の人気を利用しようとした事が気に入りませんでした。
けれどもスワンソンは、社長が帰った後に一人泣き出し、“本当は出たかった…、大女優のマリリン・スワンソンだ!と囁かれて死にたい!”と呟きます。彼女は自分の屋敷を売却し、ブラックジャックのもとへ訪れます。
そして、“僅かな時間でも昔の若い姿に戻り、銀幕の世界へ返り咲きたい”と願い出ます。ブラックジャックがそれを断りますが、スワンソンが外へ出た直後、銃声が聞こえてきます。
何と彼女は、乗って来た車中で自殺未遂を図ります。
幸い急所は外れていたものの、彼女の“命をかけた執念”に押され、しぶしぶ手術を行う事となったブラックジャックでした。亡くなった若い女性遺体から骨を継ぎ足し、筋肉・脂肪を入れ、皮膚を移植する大手術でした。
“生理機能が衰えているからもって1年程で、直ぐにしわくちゃになってしまう”とブラックジャックから言われても、スワンソンは映画に出られる事が嬉しく映画会社社長に連絡します。
99.9パーセントの水
ブラックジャックのもとへドクター・キリコの妹が、ある患者を助けて欲しいと訪ねてきます。その患者とは彼女の兄、『ドクター・キリコ』でした。彼は人里離れた小島に一人でこもる様に療養していました。
ブラックジャックはドクター・キリコに対面、彼の膨れ上がった腹部を見て驚きます。彼を苦しめていたのは南米アマゾン上流に広がる『グマ』という伝染病です。
下痢・腹痛、そして肝臓が球体の様に膨れ上がり、ミイラの様に体がやせ細ってしまう恐ろしい病気です。
これまで何人もの学者がこの病について調べたものの、“肝臓に水が溜まる事”以外はハッキリとした原因が分からず、人から人へ伝染するという厄介なものでした。ドクター・キリコはひと月程前、この病にかかった富裕層の方を「安楽死」させたそうです。
病が伝染し帰国後に発病した様で、治療法を探し出しては肝臓の水を取ったりしました。しかし、直ぐに肝臓に水は溜まってしまい、この病が治らないと悟ったドクター・キリコはこの小島に一人向かう事にしました。
“楽に死なせてほしい”と自暴自棄の状態だったキリコに対し、ブラックジャックは彼が(自殺の為に)隠してあったダイナマイトのスイッチを切り、キリコに麻酔をかけます。そして部屋全体に熱湯で煮沸消毒をし始めます。
キリコを救う為、手術を始めると、彼の肝臓から思いもよらぬ原因が発見されました…。
ブラックジャック7巻 感想まとめ
「あるスターの死」に登場する年老いた女優もそうですが、何かを一筋に長く歩んできた場合、思わぬ事態でそれを手放さなくなった時は、とても辛いものだと思われます。
しかし、逆境を“チャンス”に変える事ができたら、その後の人生が楽しくなるのではないかと思います。
ブラックジャック【手塚治虫文庫全集】8巻ネタバレ
第8巻では、普段の日常生活でもし、考えられない様な出来事にどう向き合うか?という事が描かれている様に思えました。
普段ではあり得ない出来事に対し、ブラックジャックが登場人物に心に刺さる言葉をぶつけていきます。
また、事業家やスーツアクター等、様々な面で活躍する方が登場してきます。あらゆる分野で活躍する人物に対しても、ブラックジャックがそれぞれに合った熱いメッセージとメスが入ります。
そして社会的権力・欲望・人間のエゴが渦巻く中、ブラックジャックがその上を行く様に意表を突く“ただじゃ終わらせない”様な行動・言動をするところが見どころだと思われます。
8巻には…
やり残しの家、激流、ホスピタル、約束、フィルムは二つあった、失われた青春、コマドリと少年、音楽のある風景、B・J入院す、不死鳥、お医者さんごっこ、白い正義、上と下、気が弱いシラノ、本間血種、勘当息子、おとずれた思い出、リンチ、春一番、三者三様が収録されています。
ホスピタル
ブラックジャックは『中立病院』第二外科医局で、同じ医大を卒業した辰巳医師から相談を受け対面します。辰巳医師が受け持つ少年が天才的なピアノの才能を持っていましたが、『骨肉腫』に侵されていました。
辰巳医師は何とか、少年の腕を切断せずに済む治療法を探し当てます。しかし院長の王仁川医師は、少年の腕を見ただけで直ぐに“手っ取り早く切ろう、切らなければならない”と言ってくるような人でした。
『中立病院』は院長の王仁川医師が『東亜大学』卒業故に、『東亜大学』出身の医師達の集団で成り立っており、高い技術を持っていようが他の学校を出た医師は何も言えず、辰巳医師もクビになる事を恐れて何も言えませんでした。
初めは辰巳医師の相談に無関心でしたが、180度考えを変える出来事が起こります。それは病院内で、王仁川医師をはじめとする医師・看護師集団に対面した時でした。
王仁川医師が同じ大学を出た、本間丈太郎医師について皆の前で話し始め遂に愚弄する様に皆で笑いました。自分を救った恩師を侮辱されたからには黙っておれず、ブラックジャックは“もう一度言ってみろ!本間先生の事を何て言った⁉”と思わず飛びついていました。
ブラックジャックは再び辰巳医師のもとへ行き、“2、3日後にオペだってな、手伝うぜ!”と願い出ます…
病院内での権力争いがリアルに描かれた後にスカッとする終わり方が、テレビドラマ「ドクターX」の様な雰囲気で良かったですね。
失われた青春
ブラックジャックは石油王ゼット・リングの豪邸に招かれ、彼の要件は“金儲けに疲れた、運動と旅がしたい”との事です。顔・姿、そして指紋まで変え若返って“別人”になりたいという無理難題を言ってきますが、ブラックジャックは超高額費用で彼の手術を行う事となりました。
手術後、包帯が取れゼット・リングは見違える様な“イケメンの若い男”となっていました。そして、自分の肉体分析データをコンピューターに記録しブラックジャックと共に車で邸宅を抜け出し、“1年後に再会する”と約束し街中で別れました。
その頃、リングが会長を務める石油会社では、彼が失踪した事で大騒ぎとなり、“一年間旅に出る”という彼が残したテープレコーダーが社内に置かれているのみで、社員がFBIに捜索を依頼し始めていました。
一方、“ブラッド・ストーン”という若者として生まれ変わった”リングは、ライバル会社である『アブラハム石油』へ入社し、直ぐに得意先を20社も作る程の“敏腕ぶり”が評判を呼び、やがて「社長秘書」にまで抜擢されるまでになります。
しかし入社して1年、『アブラハム石油』社長に突然“会社を辞める”と言いだし、社長を困惑させます。リングが顔・形・全てを変えた本当の理由は、20年前に自身の恋人(社長夫人として結婚した彼女は1年前に死去)を奪った社長に復讐する事でした。
リングは社長の胸部を拳銃で撃ち抜き、その場を去ります。復讐は成功したかに見え、リングはブラックジャックのもとへ行き、共に邸宅の入口付近までやって来るも、そこでは予想だにしない事態が発生していました…。
音楽のある風景
ブラックジャックは、国際的外科医であるD国のチン・キ博士が新しい手術法を公開する外科学会に招かれる事となりました。会場で手術を行う際、“手術中、音楽をならせて頂く、ビートルズの『レット・イット・ビー』”と、不思議な事を言いだします。
しかし曲が流れると、チン・キ博士は巧みな手法で行い手術を終え、参加者を圧倒させました。会場帰り道にブラックジャックは、チン・キ博士に止められ、“『無免許医師』と評判の先生の手さばきを拝見する事が、来日目的です。先生宅へ参ろう”と、半ば強引に説得されます。
車中にて、チン・キ博士出身のD国について話題が上がります。D国では国策の為に他国の音楽・映像といったあらゆる芸術作品を観たり聴いたりする事を禁止していました。
それでもチン・キ博士は、密かに海外でレコードを買っては自宅で聴いていたところ、D国政府により、所持していたレコード・音楽に関する書籍・フィルムも処分されてしまいます。
以降は、自国の聴きたくもない音楽を聴かされ、鬱憤やストレスは溜まる一方でした。
D国を訪れる外国人からレコードを譲ってもらい、病院の地下室に隠していたものの、一日中監視の目がかかるまでになります。チン・キ博士は、監視を逃れる方法として手術室を改造、ステレオや防音壁を取り付けました。そして、手術時に好きな音楽をかけていました。
最初は音楽に聴き入れて手術に集中できなかったものの、そのうち慣れて逆に音楽無しでは手術できなくなるまでになってしまいました。ここまでの経緯を車中で話していると突然、道路で呼び止められます。
車を止めたのはD国の役人で、チン・キ博士が病院の地下室で多くのレコードを隠していた事で『反逆罪』とみなされ、博士を強制的に連行していこうとします。その時、博士の容体が急変し、心筋梗塞でその場で倒れてしまいます…。
お医者さんごっこ
ガキ大将のコングはいつも、小学生のキートンを下校途中でつかまえ、からかいイジメていました。そんなコングには幼い妹・チャコがいて、彼女は病弱で寝込んでいて、彼女の病状は咳をすると血を吐く程までに、酷くなっていました。
チャコはコングに“ブラックジャックという先生を呼んで治して”と駄々をこねます。コングは(ブラックジャックを)見つけるから安心して病院に入院しろと言います。とは言っても、ブラックジャックが一体どこにいるのか、皆目検討が付きませんでした。
そこでコングは、またも下校途中のキートンをつかまえ、“ブラックジャックを演じて欲しい”と願い出ます。渋々引き受けたキートンにそれなりのメイクと衣装を着せ、チャコが入院する病院の寝室に向かいます。
コングと“ブラックジャック”になりすましたキートンがやって来るとチャコは時折、笑顔を見せました。そしてキートンは、医者っぽい仕草と語り口調で、その場をどうにか凌ぎました。
ところが、順調に“ブラックジャック”を演じていた矢先、チャコが“先生、シウツ(手術)して”と言い、キートンは戸惑います。その場にいたコングが“わがまま言うんじゃない!”と怒ると、チャコは泣きわめきます。
するとキートンは開き直った様に、“してほしければ手術代をよこせ!私の手術代は高くて1億円ぐらいだ、それでもして欲しいか⁉払えないと、手術はできない。医者は偉い人に見えるけど、金を儲けたい人間が沢山いる!だから憧れるんじゃない、くだらないから。”と、彼女に話しました。
するとその背後から“その通りだよ”という声がして、振り返ると本物のブラックジャックが立っており、“今のセリフ身に染みたよ。お前さんの言った言葉で、急に治したくなった、タダみたいな料金で。”と言ってきます…。
気が弱いシラノ
団地に住む青年・白野は、同じ団地に住む女性・ジュンとは3年前、音楽イベントで知り合います。彼女は病気で療養している為、度々白野が部屋へ訪ねていました。ジュンは同じ向かいに住むイケメン男性・栗須に思いを寄せていました。
白野とは対照的に、栗須は一度もジュンの見舞いに来ないうえ、白野が代筆で“栗須からの手紙”を書き、彼女に渡していました。せいぜい栗須が通りかかりで挨拶をする程度で、どうする事もできない白野はやり場のない怒りを覚えていました。
ある日、白野がジュンを訪ねると、意識が朦朧としている程に彼女の容体が酷くなっているにも関わらず、栗須は来ず彼の部屋の窓もずっと閉まったままでした。白野は激怒し、栗須の住む部屋まで行き、“やい、出て来い!”とドアの前で怒鳴ります。
すると隣人の住人が出て来て、“栗須が交通事故で亡くなった”事を告げられ、白野は唖然とします。なすすべもない白野でしたが、何とかジュンに元気になってもらおうとブラックジャックを訪ね、自分を栗須そっくりの顔に整形してもらい彼になりすまそうと考えます。
ブラックジャックは“何故、自分の思いを彼女に打ち明けないんだ⁉”と白野を叱責するも、整形手術には五千万円かかると言います。その一方で、“千円でできる方法”を白野に提案してきます…。
勘当息子
雪国の駅で電車が立ち往生し、一晩明かす宿を探す事になったブラックジャックは結局、山のふもとにある古い民宿に泊めてもらう事にしました。またこの日は、この民宿の女将さんの息子3人が『還暦祝い』の為に帰って来る日でした。
嬉しそうに食事の準備をしている女将さんのもとへ“息子3人とも仕事で帰れなくなった”と、電報の知らせが届きました。結局、女将さんとブラックジャック2人きりで食事とお酒を済ます事となり、淋しさのあまり女将さんはヤケ酒を飲んでいました。
そこへ1人の男性が尋ねて来て、戸を開けた女将さんが驚きます。もう1人の息子・四郎でした。『母さん…』『母さんと呼ばれる事はねえ、お前はもううちの子じゃねえんだ、何故来た』というやり取りの後、ブラックジャックの説得もあり女将さんは四郎を中へ上がらせます。
四郎は昔、勘当された故に家族にとって“死んだ者”とされていました。四郎とブラックジャックが食卓で話している間、女将さんは息子さんが子供時代の机がしまってある部屋に行き泣いていました。すると突然、女将さんが胸部を抱え苦しみ出します。
食卓にいた2人が駆け付け、ブラックジャックと母親を治したい一心で医者になったという四郎が女将さんの容態を見始めます…。容態の原因が『虫垂炎』と言い張る四郎に対し、ブラックジャックは『移動盲腸』だと言い『虫垂炎』の手術は無駄だと言います。
それでも突っかかる四郎でしたが、ブラックジャック『文句を言わず、私のやる事をよく見てろ!何しろ、タダで手術する事は滅多にない事なんだ』と冷静に答え、女将さんの体にメスを入れ始めます…。
おとずれた思い出
ブラックジャック宅に一人の女性がやって来て、ピノコが尋ねると“ブ…ラックジャ…ック…こちら…”とたどたどしく答えます。中に招かれ、彼女が被っていた帽子を脱ぐと、頭に巻かれた包帯からも血が滲み出ていました。
ブラックジャックが彼女を寝かせ包帯を取り容体を見ると、彼女が飛び降り自殺を図り失敗したものと捉えます。しかし彼女は、怪我の原因はおろか、自分が誰でどこに住んでいるのかさえ分からない、「記憶喪失」となっていました。
また、“コートのポケットに入っているお金で傷を治して欲しい”とも言ってきて、開けると中には大量の札束が入っていました。恐らくこの女性が上流階級の人間だと予想しつつ、ブラックジャックは頭皮の挫創・陥没骨折の手術に取り掛かかります。ピノコが女性の腹部に“手術跡がある”と言い、ブラックジャックは突然青ざめた表情になりつつ、無事に手術を終えます。
ブラックジャックは気づいていました、実はあの女性が前に「奇形嚢腫」の手術を受け、彼女の体内から取り出した「奇形嚢腫」からピノコが作り出された事を(第2巻『奇形嚢腫』参照)。その女性は以前ピノコを酷く嫌い、ここを去って行ったのです。
記憶が戻らない女性とピノコは共に家事をこなす等、“仲の良い姉妹”の様に関係が深まって行きました。しかしその関係も、残酷な運命により終わりを告げようとしていました…。
ブラックジャック8巻 まとめ
『音楽のある風景』ではつくづく自分達の日常生活が、いかに自由に表現できるのかを感じます。
国によっては、ちょっとした言動すらままならない場所もあったりするので、自由にできる事は良い事だと思いました。
また、社会的地位や欲望が絡むと人間はとてつもなく醜くなる様子がリアルに描かれていると思えました。
そこを見逃していない所が良いと思いました。また、『おとずれた思い出』の様に、時々続編的な作品が出て来るのも興味深いです。
ブラックジャック【手塚治虫文庫全集】9巻ネタバレ
第9巻では家族関係、または友情や恋愛といった、固く結ばれた絆について描かれている作品が多いと思われます。
毎回登場する1~2組にブラックジャックが鋭い言葉を語る一方、救いの手を差し伸べている様にも感じられます。
『ブラック・ジャック 手塚治虫文庫全集』9巻には…
モルモット、助っ人、命のきずな、あつい夜、身の代金、闇時計、信号、死への一時間、鯨にのまれた男、土砂降り、通り魔、ご意見無用、おとうと、猫上家の人々、六等星、アヴィナの島、キモダメシ、肩書き、銃創が収録されています。
土砂降り
ある離島で診療所の内科医をしている清水きよみのもとへ、ブラックジャックが尋ねてきます。ブラックジャックは以前、彼女の兄である清水幾男医師から医療面で大変世話になり、その時の“お礼”として自分のメスを渡しに来ました。
しかし幾男医師本人は一年前、島が豪雨に見舞われた際、子供達を非難させようとし崖崩れの犠牲となり、亡くなったとの事です。きよみは自分が内科医であるうえ、(ブラックジャックの)宝物は受け取れないと、メスを返しました。
次の日まで帰りの船便が無い為、ブラックジャックはきよみの診療所で泊まる事にします。
その夜、島の住民が次々と「食中毒」を訴えて来ます。きよみはブラックジャックへ患者の治療に協力を願い出るも、“中毒は内科の分野で、自分は外科”と、耳を傾けませんでした。
きよみは仕方なく一人で各患者の家を周っては診察し、ヘトヘトになり診療所に戻ると、そこには“今度はこっちの出番だ”と(崖から落ち怪我をした)小学校校長の手当てをしているブラックジャックの姿がありました…。
アヴィナの島
某国ランチャ・ランポ島では毎年、海の絶壁から飛び込むダイビングの儀式『ビキ・ビキ』が毎年行われ、海に飛び込み海中から貝を見つけ取り出して来た者は、島の王の娘と結ばれる事となっていました。
参加者の一人・クナは、王の娘アヴィナと結婚を誓い合うまで愛し合っていましたが、彼はダイビングの練習中、全身に大きな怪我を負ってしまいます。ダイビング本番までの完治は絶望的とみられ、アヴィナにクナは別れを告げます。
その頃、ランチャ・ランポ島へ出張に来ていたブラックジャックにアヴィナが、クナを助けてくれと申し出ます。ブラックジャックは、全身包帯で巻かれたクナの手当てが酷い、ろくに接骨していない“ヤブ医者”だとも言いました。
そこへ“クナを手当てした”島の大僧官が来て、医学も学んだと告げるも、ブラックジャックは“そんなものは無意味だ”と言い返します。大僧官は憤慨し“もし完全に戻ったら、治療費を払おう。だが少しでも後遺症が残ったら、おぬしの口を引き裂き、舌を引き抜くがよい!”と言います。
ブラックジャックはクナの手術を始めますが、複数の骨折があるうえに、肺に一部くい込んでいる状態で行われていました。手術は無事に成功するも、ブラックジャックはクナにダイビングをさせない様に警告します。
しかしクナは、反対を押しのけて愛するアヴィナの為、ダイビングへ参加する事となります。
ところが、アヴィナとクナが結ばれる事を気に入らない王と大僧官は、二人を引き裂こうと『ビキ・ビキ』の日にある企みを計画していました…。
ブラックジャック【手塚治虫文庫全集】10巻ネタバレ
10巻には、一ぴきだけの丘、小うるさい自殺者、命を生ける、ある老婆の思い出、二人三脚、二人目がいた、腫瘍狩り、ゴーストタウンの流れ者、浮世風呂、種電車、すりかえ、助け合い、20年目の暗示、がめつい同士、消えさった音、海は恋のかおり、山猫少年、しめくくり、ブラック・ジャック病、落下物が収録されています。
二人三脚
小学校の運動会で『親子二人三脚』が行われ何組か順調に走っている中、1組の親子だけ他と差を付けられ“最下位”の状態でした。“ビリッカスだァ~”と泣き出す子供を励ましながら、温かい拍手の仲で何とか、ゴールまで辿り着きました。
10年の月日が流れ、この親子の息子・昭吾は非行グループのメンバーとなっており、父親の手を焼いていました。昭吾の属するグループが標的とする相手は、ブラックジャックでした。
ブラックジャックを(患者から高額の治療費を要求する)“人民の敵”と捉え、まず昭吾はブラックジャック宅に脅迫状を送り付けたものの、無視されます。続いて、ブラックジャックのもとへ電話を掛けて金を請求するも、完全にシカトされます。
すると昭吾ら一味は、時限爆弾を用いてブラックジャック宅を爆破させようと企みます。息子・昭吾の後をつけていた父親でしたが、逆に後をつけられた一味の一人に襲われその場で気を失います。
父親の姿を見て昭吾は戸惑いつつ、一味と共に車へ時限爆弾と紐で縛った父親を乗せ、“哀れな最後だな”と言います。自動でブラックジャック宅に突っ込み爆破する様に車を走らせるも、昭吾が車へ飛び乗り“親父、早く出ろ!”と叫びブレークを踏み、大爆発を起こします。
一味はその場から慌てて逃げ出し、爆発に気付いたブラックジャックが家から飛び出すと、大破した車と重傷を負った昭吾と父親が倒れていました。父親は最後に息子の名を言い残し、その場で息絶えます。
しかし、息子・昭吾は助かる見込みがあるとし“久し振りにマラソン手術になるぞ”と長時間にわたり彼を救う為の手術が開始されました…。
山猫少年
某南国奥地の研究所で活動するトリュフォー医師に招かれたブラックジャックは、同研究所で引き取っている「小頭症」(頭蓋骨が極端に小さく育った状態)の少年を見て欲しいと言ってきます。
研究所地下室へ行くと、檻の中で犬の様に吠える裸の少年がいて、ブラックジャックが檻に入り近づくと、叫び声と共に襲いかかって来ます。トリュフォー医師によりますと、彼は“オオカミ少年”で育ての親は山猫らしいとの事です。
村人によると、10年程前にこの周辺で洪水があり、その生き残りではないかと言われていて、山狩りが行われた際に捕らえられたと言われています。少年の頭は押し潰された様に平たく脳髄が圧迫され、IQが僅か30~40だそうです。
ですので生存能力は殆ど無く、ブラックジャックは“このままだといずれ死んでしまうから、生命を救ってやらなければ”と話し、トリュフォー医師も学会に報告すれば医学に役立てられると言います。
警戒し暴れる少年の隙を狙ってブラックジャックが麻酔をかけ、手術を開始します。頭蓋骨が陥没している状態が分かり、「人口頭蓋」や「代用血管」を用いたりして、手術は無事に終わります。
その後は日々少年の様子を記録し始め、警戒心はあるものの、彼の知能は著しく高まり言葉も徐々に話し話し始めます。しかしその後、迎えたのは少年にとっても、ブラックジャックにとっても、切ない結末でした…。
しめくくり
人気作家・井中大海は連載小説『未知の世紀』を大ヒットさせ、多くのファンを獲得し、映画・ドラマ化もされる程の人気作品となりました。しかし井中は末期の「膵体癌」に侵され、この作品連載も途絶えたままでした。
彼が入院する病院医師から、ブラックジャックへ癌手術の依頼がありました。初めブラックジャックは(井中は高齢であるため)大手術には堪えられないと断ります。ブラックジャックはふと、売店で売っていた『未知の世紀』を購入し、病院の屋上で読んでいました。
物語は“幼い頃に両親を殺され、妻や子供の命までも奪われた孤独な刑事・相模が、家族や幸せを奪った国際犯罪組織との対決に身を投じていく…”というものです。しかし、“相模と組織の首領・ゾーリンジャーとの最後の対決”の直前で物語が途絶えていました。
後から屋上に来た病院医師も、“全国の読者が結末を待ってるか分かるだろ?”と言われ、“続きを書かなきゃならないハメになったな”と手術室に向かいます。癌は様々な所に移転して、胃・膵臓・十二指腸・等あらゆる部位を切除する大手術となりました。
ブラックジャックから“生き延びて2~3週間”と言われた井中は、“それだけあれば十分です。生き延びる事は素晴らしい事です、この感動を無駄にはしません。”と答えます。そこから井中は最後の力を振り絞り、『未知の世紀』の結末の執筆に取り掛かります…。
ブラックジャック【手塚治虫文庫全集】11巻ネタバレ
『ブラックジャック』11巻では、物語により時代を感じさせるものもありました。
たとえば『人形と警官』での、交通安全を表示させたりする人形(工事現場の誘導用はありますが)が、最近見かける機会が減り、時代の流れを感じます。
また、身近なものから話を大きく展開させる手塚治虫先生のスゴさがわかるかと思います。
11巻には…
家出を拾った日、未知への挑戦、ある女の場合、人形と警官、鳥たちと野郎ども、山小屋の一夜、裏目、コレラさわぎ、山手線の哲、戦争はなおも続く、カプセルをはく男、黒潮号メモ、ピノコ・ミステリー、もらい水、密室の少年、動けソロモン、ポケットモンキー、刻印、台風一過、人生という名のSLが収録されています。
人形と警官
一人の若い巡査が、団地近くの道端で自分と同じ様な姿の警官の人形が倒れているのを目撃します。彼はその人形警官に親しみを感じたのか、起こしてあげると“俺の弟分になれよ”と言って以降、通りかかる度にその人形に話しかけていました。
その巡査は道路交通整理もしていましたが、彼の手を焼いていたのが、この道をよく走っていたブラックジャックでした。免許証や身分証の提示を求めても、はっきりした身分を明かさない(医師免許を持っていない)、ブラックジャックの対応が難しかったとの事です。
その間、巡査が“弟”として慕っていた人形は度々、近所の子供達に悪戯されたり、顔に落書きされたりして、その度に巡査が綺麗にしてあげていました。同じ団地に住む母親は息子へ“人形へ話しかけたりして何かおかしいよ”と言っても、彼は聞く耳を持たない状態でした。
そんなある日、彼が団地近くで昼寝をしていると、突然物音がして起き上がると、遠くで2人組のチンピラが、警官人形を倒したり蹴り飛ばしたりしていました。それを見た巡査は激怒し、信号機も見ずに彼等を追いかけた為、猛スピードで走る車に撥ねられてしまいます。
病院に運ばれ“大出血を伴う危険な手術”故、ブラックジャックに依頼、彼は引き受けます。
大量の輸血の覚悟が必要とする大手術でしたが、無事終了します。
またこの後、巡査には“運命の出会い”が待っていました…。
鳥たちと野郎ども
ブラックジャックは、南イタリアのある村の標識すら無い道を車で走っていました。理由は、1人の患者の治療を依頼された為でした。そして一軒の古い家に辿り着き、ドアを開けるとそこには無数の鳥が迎えました。
更に奥から猟銃を構えた1人の老人が出て来て、彼の孫・トニオを診て欲しいと言っていきます。トニオは左腕を銃で撃たれたらしく、何故ここまで放っておいたのかとブラックジャックが聞くと、医者が地元やくざ『エレルモ』を恐れ、ここへ来たがらなかったそうです。
金にならない土地が治療費替わりであるうえ、面倒な事に巻き込まれたくないと感じたブラックジャックは、その場から立ち去ろうとします。すると走り去ろうとしたブラックジャックの車前方へ、一斉に鳥達が塞ぎ、鳥達もトニオを心配している様でした。
“とうとう二束三文の土地と引き換えにオペするハメになっちまった”と言うも、トニオの手術は無事成功します。老人が言うには、この干潟地(海岸部で干出・水没を繰り返す平らな砂泥地)は先祖代々から、手放さず住み続けているとの事です。
しかし、この土地に石油の鉱脈がある事を突き止めたエレルモが強硬手段を使ってまで土地を売る様に脅し、トニオもその犠牲に巻き込まれました。土地について話していると、エレルモ一味がやって来て、家の窓にいた老人が彼等の銃弾を浴びてしまいます…。
人生という名のSL
走行中のSL機関車の中、ブラックジャックが席に座っていると、1人の車掌が寄って来て“(この電車は)随分空いてるな”“他の車両にはお客さんもチラホラ乗っているので行きませんか?”“ここでいい…”という会話を繰り返された後、車掌はその場を後にします。
しばらくすると“先生…”という声が聞こえ、振り返るとブラックジャックのかつての恋人・如月医師(“めぐみ”という女性でしたが「子宮癌」に侵され、ブラックジャックの手術により救われるも子宮をはじめ、女性としての気管を切除、今は半ば“男性”として活動)がいました。
互いにこの列車に乗るまでの経緯等を話した後、如月医師は“これだけは変わりません。先生を愛しています、あれからずっと。先生、お幸せに。”と言い、その場を立ち去ります。
次に“相変わらず正義感ぶってるキザな男だ!”と聞き覚えのあるセリフと同時に現れたのが、ブラックジャックのライバル、ドクター・キリコです。彼は“面白い人を見せよう”と車椅子で運ばれて来たのが、タイ・ミャクチャ族の182歳の老人です。
この老人はパリ・ロンドン・ニューヨークで数回、延命治療が行われてきました。老人は言葉にならないうめき声を発していましたが、キリコが言うにはこの老人は“頼むから殺してくれ”と言っているとの事です。
キリコは、“あの老人は俺の所で、安楽に死なせてくれと頼んだ。これから“安楽死”を施すぜ”と、その老人を連れて去って行きます。ブラックジャックは“殺すな!”とキリコの後を追いかけますが、既に彼の姿はありませんでした。
ブラックジャックが辿り着いた部屋にいたのは、何と亡くなったはずの恩師・本間丈太郎医師でした…。
ブラックジャック11巻の感想まとめ
『人生という名のSL』では、ブラックジャックがこれまで関わった人物が同じ列車の中で“走馬灯”の様に現れるのが、とても幻想的でした。
人生最後の日はこの物語の様に、思い出深い方と懐かしい対面をし、天国へ向かう事はある意味“理想的”かもしれません。
ブラックジャック【手塚治虫文庫全集】12巻ネタバレ
第12巻では、物語上では第三者的な人間に“花を添えている”パターンが多い事が感じられます。
各人間の波乱に満ちた人生にブラックジャックが顔を出し、破綻した方向へ進まない様に、ブラックジャックが陰ながらサポートしている様にも見えます。
『ブラック・ジャック 手塚治虫文庫全集』12巻には…
身代わり、復讐こそわが命、虚像、骨肉、再会、話し合い、されどいつわりの日々、B・Jそっくり、過ぎさりし一瞬、流れ作業、短指症、笑い上戸、オペの順番が収録されています。
虚像
とあるビルの会場にて、『平松小学校』の同窓会が行われ、(ブラックジャック含む)卒業生や教師が多く参加していました。そんななか、かつて生徒達が慕っていた『志摩先生』が出席しなかった事で卒業生たちはガッカリします。
その先生は校長の不正を暴こうと、校長室の金庫を開けた為、学校を辞めてしまいました。そこで同窓会場にいた卒業生達が、『志摩先生』を見つけもう一度“卒業式を行う事を思いつきます。そしてブラックジャックへ、『志摩先生』を探し出す役目を一方的に提案しました。
ブラックジャックは仕方なく、彼を探し始めた結果、『ペンペン荘』という安アパートに住んでいる事が分かります。部屋の扉を開けると、そこには昔の面影は一切無い、かなりやせこけた男性が布団で横たわっていました。
彼は麻薬中毒かつ末期状態でした。ブラックジャックは部屋から探し出した『供血者手帳(今でいう『献血者』を記入した手帳、また1960年代までは血液を売る事も行われていた)』により彼が『志摩洋平(43歳)』である事が分かります。
ブラックジャックは志摩をアパートの地下室に閉じ込め、彼の体内から薬物を抜き取ろうとします。そして『同窓会で決めたんだ、お前さんを呼んでもう一度卒業式をやる』という事を伝えます。
しかしあろうことか、志摩は一瞬のスキを見てドアから逃げ、アパートの高台まで上がり、身を投げ出してしまいます…。
再会
配送員のアキラは運転中、誤って路上にいた若い女性を撥ねてしまいます。アキラが急いでその女性を救急病院まで運ぶと、その場にいたブラックジャックが応急手術をしました。
彼女は数ヶ所骨折や内出血がある重傷で、腸も挫創(転倒や打撲等による損傷)がある中での手術となりました。腸には大きな血腫があり今切り取ると大出血を起こす故にそのままにし、“いつか再度手術をしたい”とアキラにも報告します。
アキラはベッドで寝ている女性に謝罪、そばにいたブラックジャックは彼女に住所・名前を尋ねるも思い出せず、一時的な“記憶喪失”となっていました。記憶が戻るまで、アキラのアパートに住まわせ、彼自身は会社で寝泊まりする事となりました。
アキラは彼女の治療・生活費を稼ぐ為、より仕事に専念する様になりますが、依然彼女の記憶は戻らぬまま時は流れます。いつしか二人は惹かれ、“君が好きだ”“あなた好きよ”と言い合う程の恋仲となっていました。
出会って1年目の日、アキラが少し出かけている間、彼女が家事をして足元にナイフを落とした瞬間、以前の記憶を戻したと同時にアキラとの記憶が消え、住んでいたアパートから立ち去り、二度と戻る事はありませんでした。
アキラはその事で自暴自棄となり夜の街へ繰り出す様になります。数年が経ち、違法賭博にまで手を出したアキラは、賭博場を仕切る組織の幹部となっていました。そこへ警察の手入れが入り、アキラをはじめとする組織が摘発されます。
アキラは裁判に掛けられる事となりますが、裁判長がかつての“彼女”であり、アキラは目を疑います。一方で、冷たい目の彼女はアキラの事を全く覚えておらず、罪を認めていたアキラへ判決を下そうとします。
そんな時、被告人(アキラ)の新たな証人として現れたのがブラックジャックでした…。
話し合い
某高校の無理教諭は、彼が受け持っていたクラスの一際手を焼く男子生徒・〆沢から目を付けられていました。その日もクラスメイト全員のテストの答案用紙を奪い、橋の下へ来る様に挑戦状を無理教諭に送ります。
約束通りに来た無理教諭に対し〆沢は、目の前で答案用紙に小便をかけたうえ教諭をその場で袋たたきにしてします。校長は、学校としても〆沢をこのまま放っておくわけにいかず、退学にすべきだと言いますが、無理教諭は“もう少し時間をください!”と説得します。
そんな彼に“同窓生”のブラックジャックが訪ねて来ますが、会いに来た用事は“十二年前の手術代を払ってほしい”との事でした。しかし彼は、“その時(中学時代)は、本間って医師に治してもらったんだ。何であんたに払う義理があるんだよ!”と憤慨します。
するとブラックジャックは、本間医師の診察記録を調べ手術代が未払いだった事が分かったので、同窓生としてやって来たと言いました。その時授業開始のベルが鳴りますが、ブラックジャックは“今日の終わりまで待つからね。”と授業に向かう彼に嫌味っぽく言います。
授業中に〆沢は教室内で煙草を吸い、教諭や他生徒への妨害をしていました。無理教諭は暴言交じりの注意で〆沢を怒らせ、〆沢は“放課後まともに出られると思うな”と彼を脅します。
下校時、無理教諭がいない事に気付いたブラックジャックは、彼が体育館の裏へ行った事を他の生徒から聞かされます。そこへ行くと、〆沢を中心とした数人の不良生徒らにより、叩きのめされ倒れている無理教諭の姿があり肋骨が5本も折れていました。
無理教諭の怪我の状態を見ようとしているブラックジャックに対し、〆沢は余計な手出しはするなと言ってきます。更に〆沢は、“そんな先公、一匹や二匹死んだってどうって事ねえよ!”とまで言ってきます。
ブラックジャックは“死ぬという事がどういう事か、味合わせてやる!”と、取り出したメスを投げつけ〆沢の喉に突き刺します。それでもなお抵抗する〆沢に対し、再びメスを投げ今度は顔の中心部(鼻辺り)に刺さり、〆沢はその場で倒れ込みます。
周りの不良生徒達は逃げていき、ブラックジャックは“急所は外してあるが、苦しさと死ぬ程の痛みだけは味わってもらうぜ。”と〆沢に言いました。救急車もやって来て、ブラックジャックは一番怪我の状態が酷い無理教諭、喉や気管を負傷した〆沢の2人をその場で治療しました。間もなく病院に運ばれ、〆沢は“死にたくねえよ”と死への恐怖をベッドの上で訴えていました。
隣のベッドには、全身を包帯で巻かれた無理教諭が寝ており、真横でブラックジャックが立ち見守っていました。ブラックジャックが“教師になった理由”を無理教諭へ聞くと、十二年前、自分が不良生徒だった時から今日までの経緯を話始めます…。
ブラックジャック12巻 感想まとめ
この第12巻の殆どの話でのブラックジャックは、出番が少ない様に思えました(特に『再会』では、出て来るのが最初と終盤のみです)。
しかしながら、(あくまでこの作品の主役であると同時に)それぞれの回に登場するメインキャラクターをサポートする重要人物である事が分かります。
ブラックジャック本人は、天涯孤独の身である事が伺えます。
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