漫画『ゴールデンカムイ』第16巻は、杉元がアシㇼパ達を探し、樺太での旅の途中でサーカス一団と出会い、杉元達も公演に出演する事に…⁉
一方アシㇼパやキロランケ達は、既に日本とロシアの国境近くまで来ており、地元・少数民族の協力で国境を越えようとするも、命の危機にさらされます…。
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ロシア式蒸し風呂が大事件に…漫画ゴールデンカムイ15巻ネタバレや感想など
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目次
第151話 ジャコジカたち
杉元達が、大泊から北東に位置する樺太アイヌの村に滞在する事となった頃、アシㇼパやキロランケ達は旅の道中で『麝香鹿』に遭遇し、尾形が猟銃で仕留めます。そしてキロランケが、麝香鹿の股間と臍の間にある「麝香嚢」を切り取ります。
アシㇼパ達がその臭いに戸惑いつつ、キロランケは昔の自分やアシㇼパの父親・ウイルクが樺太を放浪していた故に、（麝香鹿が“定位置の寝床”を持たない習性から）“ジャコジカ”と呼ばれた事を告白します。
更にキロランケは、ウイルクが麝香鹿を初めて獲った際に『ホホチリ』（ガラス玉を繋げた三角飾りで樺太アイヌ男子が前髪に付け、一人で獲物を獲ったら外す習慣があった）を切り落とした事も話します。
彼のホホチリを、（幼い頃の）アシㇼパへ“共に狩りに行く”時まで彼女に付けさせていた事も話します。“麝香鹿のお陰で知らないアチャ（父）に会えた気がして、知らないアチャ事が一つ思い出せた”というアシㇼパの言葉に、キロランケは“そうか良い事だ”と意味深な反応を示します。
その頃、土方・永倉・牛山の3人は釧路におり、刺青をしていた囚人・土井新蔵が網走監獄で隠し持っていたという、小さな欠片の様なものを持って行きました。現地の人間に見せるもそれが何か分かる者はいませんでした。
しかし途中出会ったアイヌ季節労働者の男から、その欠片が『エトゥピリカ』（“嘴が美しい”海鳥）の嘴の部分である事を知らされたうえ、土井新蔵に関する有力な手掛かりを聞かされます…。
シカによって“美味しい・そうでない”という分類がされるんだなと意外性を感じました。
また『ジャコウジカ』のさばき方等、細かい部分まで描かれており、徹底的に描かれていると思いました。
第152話 人斬り
土方達は根室へ向かい、地元アイヌの村までやって来て、村長から土井新蔵こと“人斬り用一郎”がここに住んでいた事を聞かされます。村長によると、土井新蔵は約30年前にこの村へ来てアイヌの女性と結婚、しばらく静かに暮らしていたそうです。
しかし、今から8年前に彼に“恨みがある”という日本人が来て、土井の妻を人質にさらっていきます。その後、土井は妻をさらった日本人を殺害し網走監獄へ収監されるも、妻が病気で老い先短い事を知り、脱獄します。妻を見取り、近くの漁場で働いているとの事です。
一緒に漁場で働く者が、土井に名前や故郷等について尋ねても、“何だったかな…？”と答えず終いだそうです。そんなある日、皆で食事をしている最中に土井のもとへ数人の強面の男達がやって来ます。
そして、“貴様が『人斬り用一郎』か？”と一人が土井の上着を捲ると、上半身には刺青が描かれていました。それを確認すると、もう一人が“『池田孫七郎暗殺事件』を覚えているか？父の仇だ死んで詫びろ”と、長刀を取り出し、土井に迫って来ます…。
どんなに力や名誉のある者も、時の流れと共に衰え忘れ去られていくものか、土井新蔵の生涯を通して感じられます。けれども、思わぬ場面で実は“過去に○○だった”という秘密が明かされるのも面白いと思います。
第153話 京都
土井新蔵こと“人斬り用一郎”が自身をつけ狙う男達に怯む事なく切り倒そうとした時に、現れたのは土方と牛山でした。そして土方の銃や牛山の怪力と共に、“天誅！”という叫び同時に土井の居合斬りが炸裂します。そして、土井はその場から逃げ去ります。
土井の強さに牛山は仲間に入れたらどうかと土方に言うも、土井の言動・行動に違和感を覚えていた土方でした。年齢を重ねた土井は、“人斬り用一郎”としての若かりし頃と現在の老いた自分との区別がつかない錯乱状態となっていました。
更に土井が逃走中、目の前に遭遇した一頭の鹿を“自ら師と仰ぐ人物”と区別できない程にまでになっていて、“日本を変える為に血生臭い仕事も請け負ったにも関わらず、最後には見捨てられ切腹を命ぜられた”理不尽さを涙ながらに訴えていました。
しかし、そんな彼のもとへ土方がやって来ると、“俺は疲れたよ、長く生き過ぎた”と、同じ激動の時代を生きた土方に打ち明けるのでした…。
若き日と変わらない剣の技を披露するも、同じ時代を生きた土方だからこそ、土井の違和感に直ぐに気付いたのかな？と思いました。周りから見ると奇妙な行動に見えるものの、時代の流れに自身が見捨てられる事を認めたくない思いが行動として現れていたのでしょうか。
第154話 残り時間
土方が土井の腹を斬り、“今楽にする”と刀を取り出します。しかし土井は、“このままでいい。自分は天下国家の為に大勢殺したが、この土地へ流れ着いて『人間』（アイヌは“人間”と言う意味でもある）として自分だけ平穏に生き、申し訳ない”と答えます。
そんな土井に対し、土方は“（自分は）死ねなかった事を負い目になどしていない、役目があるから生き残った”と言い返します。更に、土井の目前に微笑む妻の幻影が現れた後、海鳥が飛び立っていきました。
一方杉元達は持っていた“刺青の写し”等が入った鞄を置き引きされ、犯人である一人の少年を追いかけていました。しかしこの少年はかなり身軽で、建物の壁や屋根へと、次々と走り抜けていきます。
杉元や鯉登達も負けじと少年を追いかけ、辿り着いた先は曲馬団（サーカス団）『ヤマダ一座』のテントでした。鞄を盗んだ少年は一座が引き取っていた子供・長吉で、直ぐに団長が杉元達へ謝らせます。
一座が樺太での公演を控えている事を耳にした杉元は、（アシㇼパを見つけ出すのに手っ取り早いと考え）自分達も樺太公演へ出演させるように団長へ申し出ます…。
土井の死に方を見ていると、“人生の終わり方”について重く考えさせられる様な気がします。そんな場面から一転し、杉元達が“エンタメ”の世界へ切り換わり温度差が激しつつ物語の世界に入り込めます。
第155話 ヤマダ曲馬団
杉元は、曲馬団の樺太公演へ（血のりが吹き出る刀を用いた）『ハラキリショー』として出演させろと強引に（鞄を盗んだ長吉を警察へ突き出すと脅してまで）要求します。ちょうど出演者数名が体調不良で出られなくなった時なうえ、長吉は何故か鯉登に目を付けます。
早速テントの中で練習が行われ、出演者が披露したアクロバット芸（一人が下で寝転がり大小の重ねた樽を足で回し、もう一人が樽の一番上で片足を挙げてポーズをとる）に対し、鯉登も樽の上で倒立技を見せるという抜群の身体能力で周囲を驚かせます。
更に自転車を使った芸に対しても、杉元や谷垣が乗りこなす事さえ苦闘している一方、鯉登はこれまた簡単に操り、“こいつは軽業の天才だ！”と座長を唸らせます。やがて、杉元は『ハラキリ芸』を、谷垣と月島は曲芸の脇で踊る『少女団』へ加わる事を言い渡されます。
『少女団』の踊りの練習の際、振付師からボロクソに怒鳴られっぱなしの谷垣と月島でした。辿り着いた場所で酷い仕打ちを受け、本来の“アシㇼパを見つけ出す”という目的さえも失ってしまいそうな谷垣でした。
そんな彼に対し、月島は“これもアシㇼパを見つける事に繋がれば、やる意味はあるだろ？”と声を掛けたのでした…。
鯉登の意外な運動神経の良さが披露されますが、ある意味芸能界と似ているかもしれません。何かしら人を惹きつけるものを持っている人がグングン羽ばたいていく…感じが共通していると思われます。
第156話 不死身の杉元 ハラキリショー
杉元は、自身の演目『ハラキリショー』のノウハウを座長から学びます。刀で和紙を斬り“本物”である事を（観客に）見せ、腕・足・腹部に“清め”の水をかけ、（紅の染料が入った）刀を付けると血が噴き出した様に見えるという事です（和紙を斬った部分だけ鋭い歯）。
杉元は早速練習を始め、“南無阿弥陀仏！”“痛だだだッ”と大袈裟な演技をするも、もっと格好良く優雅に振舞う事を座長から注意されます。一方鯉登は次々芸をこなし、出演女性陣からも一目置かれ、座長も“華がある”と太鼓判を押します。
その様子が気に食わない杉元が文句を言うも、“その程度の気概で『この街に杉元の名前を轟かそう』など、片腹痛いわ！”と、逆に鯉登から一蹴されたのでした。杉元は仕方なく、自身の『ハラキリ』芸に専念するしかありませんでした。
そして、『大独楽』（回る巨大なコマが突然真っ二つに割れ、少年が出て来る）へ出演願望を申し出るチカパシ、相変わらず振付師に怒鳴られながら『少女団』の踊りに励む谷垣と月島、互いに複雑な思いや意欲を持ちつつ、いよいよ樺太公演の時が迫って来ました…。
谷垣は心が純粋である事が伝わり（振付師に散々怒鳴られ、陰で泣いている場面等）、好感が持てます。また杉元は、“ハラキリ”の練習で大袈裟な演技をするところから、自分を見せたい思いがあるのかな？と感じ、共感する点もなくもないです。
第157話 樺太島大サーカス
会場に大勢の観客が集まり、座長のイキのいい掛け声と共に曲馬団・樺太公演の幕が上がりました。客席でエノノカが見守る中、谷垣・月島出演の『少女団』の踊り、チカパシの『大独楽回し』が不慣れながら次々行われ、客席から拍手が沸きます。
鯉登も竹の宙吊りに続き綱渡りをこなすも、綱の上に自身が敬愛する鶴見中尉の写真がある事に気付きます。鯉登は“キエエエッ”という雄叫びと共に、綱から梯子・自転車・空中ブランコと、鶴見の写真を追いかけ飛び回り、宙返りで着地し写真を手にします。
客席からは割れんばかりの拍手が沸き、座長も“軽業の神様はおわした…”と感極まって涙します。『少女団』の踊りも無事に終了し、振付師から“よかったわよ”と言われホッとした様子の谷垣でした。
そして、公演の“大トリ”である杉元の『ハラキリショー』が行われようとしており、杉元も“オレは生きているぞ、アシㇼパさんに届け…”という思いを胸に抱いていました。
しかし、“杉元が鶴見の写真を盗み出し、自分の芸を邪魔した”（実際は月島が仕掛けた事で、これにより鯉登が会場でより力を出し、鯉登に嫉妬する杉元も意地になり『ハラキリ』に精を出すと考えた）と思い込んだ鯉登が、とんでもない行動を起こします…。
鯉登に対し“真剣にすり替え”までやるか⁉と思うほど、嫉妬や怒りは人を狂わす事が伝わって来ました。それ以前に、月島の良かれと思ってやった事が火種となったので、行動は慎重に選ばなければならない様ですね。
第158話 大トリ
公演の大トリである『ハラキリショー』が始まり、客席から“斬れ！”という声が飛び交い、杉元が“痛だだ”という叫びと共に刀で腕を斬りつけます。すると、（本来なら水に溶けた紅い染料が出るはずが）実際に腕が切れ、血が噴き出します。
杉元によって（鶴見の写真を使い）芸を邪魔されたと思いこんだ鯉登が怒り、仕返しに鯉登の軍刀（真剣）とすり替えてしまったのです。刀が真剣と分かり焦る杉元ですが、演技を続け右足を斬りつけ、当然そこからも（本物の）血が吹き出ます。
そしてその場でしゃがみ込み、“アシㇼパさんを見つける為だ…！”と腹部を斬りつけようとした時、杉元の前にロシア人の男が一人、そしてその後にもう一人現れます。杉元の前に立ったロシア人が銃を向けた瞬間、杉元が刀を振り、銃ごと手が斬り落とされます。
後のもう一人のロシア人も銃を発砲するも杉元は即座に避けて、刀を投げつけます。観客からは全て“ショーの一幕”と見られ拍手喝采、『少女団』の踊りでフィナーレのもと、“大盛況”で幕を下ろします（この間にロシア人の遺体を回収）。
ロシア人に狙われたのは、実は杉元ではなく曲馬団・座長の方でした。彼は元陸軍将校で、裏ではロシアの情報を日本陸軍・特務機関へ報告していた故に、ロシア政府から狙われ、殺し屋が送り込まれたとの事です。
樺太公演にてアシㇼパやキロランケらを見つけ出す事ができなかった杉元達でしたが、座長から有力な手掛かりを入手します…。
どのステージでも“思わぬハプニング”は起こりうるものですが、それを逆手に取る事ができたら“最高のステージ”になるのではないでしょうか。どうにでもなってしまうのが、エンターテインメントの面白さですね。
第159話 ウイルタ民族
アシㇼパやキロランケらは、杉元達がいる豊原より北に位置し国境に近い町『敷香』まで来ていました。彼等が山中を歩いていると台状に建てられた数本の丸太の上に、四角い木の箱が置いてありました。
キロランケが言うには“ウイルタ民族の天葬”が行われていて、木の箱は“棺”だとの事です。また樺太には、3つの少数民族（樺太アイヌ・ウイルタ民族・ニヴフ民族）が生活、木や丸太の上に棺を乗せ“天葬”を行うのがウイルタ民族（近年、改宗し“土葬”に変わりつつある）との事です。
その時、尾形が猟銃を発砲、エゾシカを撃ったと言うも、樺太にエゾシカはいないとキロランケが言います。その通り、撃った先で倒れていたのはトナカイで、首には木の棒（足の脛に当たって行かない為）が付いた首輪がしてありました。
“首輪してるって事は、誰かが飼ってるトナカイなのかな？”という白石の言葉通り、近くにウイルタ族の天幕、数匹のトナカイと老人が一人いました。老人は、“トナカイを殺したならトナカイで返してくれ、飼いトナカイで返せないなら山トナカイ狩りを手伝って償いなさい”と言います。
それに付け加える様にキロランケも、アシㇼパの父親が昔、尾形と同じくウイルタ民族の飼いトナカイを撃ち山トナカイ狩りへ行った事をアシㇼパへ話します。アシㇼパは“何かアチャ（父）の事を思い出せるかも”とキロランケ達と山トナカイ狩りへ同行する事にします…。
感想：何気に尾形が銃を発砲した事で、周囲の人間がややこしい問題に巻き込まれている様な気がします。まあそれによって、物語展開がより幅広いものになっているのですが…。
第160話 回境
尾形がウイルタ民族の飼いトナカイを撃った償いとして、山トナカイ狩りへ向かったキロランケ達でした。警戒心が強く仕留めにくい山トナカイでしたが、尾形は次々山トナカイの群れを撃ち、“この地から山トナカイがいなくなる…”と同行したウイルタ民族の男達を驚かせます。
その夜はウイルタ民族の天幕内にて、仕留めた山トナカイの肉や脳みそ、はたまた飼いトナカイの乳を使った料理を皆で楽しみつつ、キロランケが“本当の目的”をウイルタ民族の老人へ協力をお願いします。
キロランケ達は（樺太の国境を越えて）ロシアへ入国しようにも旅券申請の余裕も無い為、『密入国』という手段を選ばざるを得ませんでした。国境周辺で日本やロシアの国境守備隊に見つかったら面倒になるも、樺太の遊牧民族は国境を行き来する事が黙認されていました。
そこで、キロランケ達はウイルタ民族に変装し国境を越えようとしますが、既に彼等の行動に目を付け、国境付近で命を狙っているものがいたのでした…。
トナカイというと“クリスマス”のイメ―ジが強いのですが、この時代は“生きる財産”として使われていた事が分かります。この事から、 “弱肉強食”の時代背景が伝わりました。
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