『ゴールデンカムイ』第23巻は、鶴見中尉ら第七師団のもとで協力はしないと話す谷垣に対し、鶴見からある衝撃的な内容を告白されます。
一方杉元やアシㇼパ達は、白石が所持していた砂金のサンプルを頼りに目的地へ向かいますが…。
漫画『ゴールデンカムイ』23巻には第222話~第231話までが収録されています。
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漫画『ゴールデンカムイ』22巻ネタバレや無料で読む方法など|杉元たちの逃走!
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目次
第222話 刺青人皮
療養中の鯉登少尉、及び月島軍曹のもとにはインカラマッが傍におり、彼等の運勢を占っていました。この日の運勢は鯉登が「吉」、月島が「凶」でした。その頃谷垣はや菊田に対し、軍とは関わりを持たない、金塊探しも政権転覆も向かない事を言及します。
それに対し鶴見は、インカラマッについて話し彼女は網走にはもういない、別の場所へ移したと言いました。更に鶴見から“谷垣源次郎の子を宿している”と告げられ、谷垣は戸惑います。
そのうえで、鶴見は“を連れ戻せば、お前もインカラマッも解放すると約束する。谷垣…お前なら杉元佐一に警戒されずに近づけるはずだ”と話し、谷垣を自分達のもとへ引き戻そうとします。
一方、杉元達は雪山の中で今ある刺青人皮を頼りに、金塊の暗号を解いていました。死んだ松田平太が脱獄囚だった事に戸惑いはあったものの、新たに刺青人皮を手に入れる事ができて、本来の目的に立ち戻れたと杉元は言います。
それは、“俺たちは、もっとでっかい埋蔵金を探すんだって目的にね”という事でした。
永倉や土方らが住居に戻って来ると、門倉達が花札に熱中している隣で、尾形が横になっていました。土方は、網走監獄から今日まで何をしていたかと、尾形に尋ねます。
尾形によると、網走監獄でアシリパがのっぺら坊を父親と確認するも、のっぺら坊や杉元に流れ弾が当たり倒れます。そして、キロランケがアシリパを連れて逃げたのを尾形が付いて行きます。
アシリパを女囚人ソフィアに合わせる(ソフィアが暗号を解くきっかけになるのではと期待)為に、樺太へ渡ります。
しかし、追って来た杉元によりキロランケは殺害され、アシリパも杉元のもとへ連れて行かれ、尾形もその際に負傷したとの事です。また尾形は、樺太での“土産”が二つあると言ってきます。
一つは、ウイルクとキロランケの昔の仲間であるパルチザンの女首領ソフィア・ゴールデンハンドの情報です。彼女は必ずアシリパを奪いに日本へやって来ると考えられ、鶴見中尉達とは別に厄介な勢力になると尾形は言います。
もう一つは、“アシリパはどうやら暗号を解くカギを思い出したということ”だと告げます…。
杉元達とっては埋蔵金を見つけ出すという“大きな夢”となる一方で、谷垣にとっては鶴望達に協力せざるを得ない複雑なものとなり、あらゆる心情が交差している事がこの回で表されていると思われます。
第223話 二階堂 元気になる
鯉登や月島のもとへ二階堂一等卒が勢いよくやって来ます。彼の元気な様子を鯉登が指摘すると、有坂閣下から貰った新薬のおかげだと二階堂は答えます。続いてやって来た有坂閣下が、自分の友人である薬学者・長井が開発した「メタンフェタミン」という薬だと説明します。
そして、有坂が“この薬は売れるよ絶対!!”と言う目の前で、二階堂が机の上で棒を右手の指の間を素早く突いてみたりと、元気振りを披露します。また、医師である家永が鯉登を診断し経過は良好と告げつつも、鯉登のツヤの良い肌に見とれ、思わず彼の腕に噛みつこうとします。
するとすかさず、月島が のこめかみに銃を向け“お前も刺青人皮にしてやろうか”と言いました。
その頃、尾形は、家永が第七師団に捕まったので、彼がかつていた自分達の場所も危ないのではと伝えます。永倉達がこの住居まで特定されていないのではと答えるも、鶴見中尉を舐めたらいけないと尾形は言います。
尾形は、鶴見が全ての滞在先を辿ってこの住居まで見つけ出すと言い出し、“死神から逃げ続けるのは簡単じゃねえ”と念を押します。
鶴見達からの追跡から逃れる為、土方や永倉達一同は札幌のはずれにあるお寺に移動します。着いた矢先、門倉は土方と永倉の二人に、看守仲間から聞いた話を伝えます。
網走監獄にて囚人の補填や監獄の再建等を兼ねて、樺戸監獄から囚人が大勢移送されますが、途中で何者かの待ち伏せに遭い数名が脱走したらしいとの事です。
その逃亡した囚人は、海賊房太郎の側近達だと言います。その男は強盗殺人55件をはじめ、傷害・放火・窃盗といった悪の限りを尽くす重犯罪者で、網走脱獄囚24人の一人との事です。その話を聞いた土方は、“海賊房太郎、あいつが動き出したか”と呟きます…。
妙な薬で普段から奇妙なキャラクターである二階堂が、よりハイテンションとなり滑稽で面白かったです。しかも何故か棒を指と指の間に刺す事で、元気な事を表現する単純さがかえって楽しかったです。
第224話 支笏湖
杉元とアシリパは雨竜川のほとりにて焚火をたき、食用のレタッチㇼ(白鳥)を捕まえるべく待ち構えていました。すると暗闇の奥からやって来た一羽の大きな白鳥と一緒に、用を足して戻って来た白石も戻って来て、白鳥&白石共に同じ位置になります。
そして互いに目が合い共に“コォーッ‼”と奇声を上げた瞬間、アシリパが木の棒で撲殺します。そして白鳥を鍋で煮て食すなか、白石は松田平太が持っていた砂金を取り出します。
その砂金は採れた川ごとに砂金を紙に小さく標本にして集めていました。生前、平太が“砂金にはそれぞれ「顔」があるといわれています。地質の関係で北海道すべての川で砂金が採れるわけではないんです”という言葉を杉元と白石は思い出していました。
遠い昔にアイヌ民族により掘られた砂金が一つにまとめて隠され、埋蔵金の隠し場所は秘密にされ続け、場所を知る者は僅か少数になり、その7人が“のっぺらぼう事件”で殺されました。
しかし、他にも埋蔵金の隠し場所を知る者がいる可能性があると白石はにらみ、その方法の一つとして“埋蔵金を識別してどこの川で採れたか、産地を割り出せばいい”と話します。その“識別”について、谷垣が以前話していた支笏湖の事を取り上げます。
しかし、北海道で最も深い支笏湖で見つけた砂金を識別し…という至難の業ともいえる白石の提案に、杉元とアシリパは納得できない様子でした。すると白石は、一つの砂金の標本を取り出します。包んである紙には“支笏湖 海賊さん”と書かれてありました…。
あらゆる修羅場をくぐり抜けてきた杉元も、さすがに鳥や動物の頭をまるごとかぶりつくのは苦手だとみられ、彼の様に困った時は笑って誤魔化すしかないのでしょうか?また不可能な事にも、笑顔で挑戦しようとする白石の貪欲さは底知れないと感じられました。
第225話 貧民窟
札幌にある「貧民窟」は豊平川に近い東地区にあり、そこは暴力や病気が蔓延するなかで、貧しい人々にとって酒や売春が“心の支え”でした。そしてまた現地の女性が、あるシルクハットにマント姿の男に寄り添い、色目づかいで声を掛けます。
その時、男がナイフを取り出し女性の首を切り裂き、その場は血まみれとなります。男のシャツの間からは刺青が見え隠れしていました。次の日にカメラマン、やじ馬が集まる中、警察の捜査が行われています。
現場にやって来た石川啄木は警察から事件の状況を聞いたうえで直ぐ新聞記事にして、寺にいる土方達にも伝えます。事件を聞いた土方は、24人の刺青脱獄囚で心当たりはないかと門倉に聞くと、“(思い付く人物が)いますね”と答えます。
10年程前に横浜で遊女を刺し殺して網走監獄へ収監された男の事も含めて、今回の事件が犯人として、ここまで騒ぎを起こされると厄介だと土方は話します。
そして、“警察は躍起になって犯人を捜す、そしてあの第七師団のはぐれ者達もニオイを嗅ぎつけて来るだろう”とこれからの行方を捉えます。
一方オホーツク海沿岸にいる鶴見中尉率いる第七師団にも、札幌で起きた殺人事件の情報が出回っていました。また地元住民から、杉元やアシリパらが数日前にここへ来て“北へ向かう”と言った事を伝えました。
鶴見はこのままアシリパらの捜索を続けると告げ、菊田特務曹長には宇佐美上等兵を連れて札幌へ向かう様に指示します。菊田と宇佐美は互いに不満そうで、特に宇佐美は鶴見と別行動故にとてもガッカリしている様子でした。
鶴見は二人に対し、派手に動かない様に告げたうえで、自分も後に札幌へ向かうと言いました。
菊田は、今回の殺人事件がかなり大きく取り上げられたので、いずれ調べに来るであろう土方達に先を越されない様にしなければならないうえ、鉢合わせにも注意が必要だと警戒します。
それに対し宇佐美は、“だったら好都合ですよ、僕が皆殺しにしてすべてうばってやる。札幌へ囚人狩りだ”という、菊田とは真逆かつ危険な発想でした…。
北海道の“切り裂きジャック”に対して、鶴見ら第七師団や土方達はそれぞれどの様に攻めていくのか、予想が付かないです。特に宇佐美が、この逆境をむしろ楽しんでいるかの様な感じでますます物語展開に拍車がかかりそうです。
第226話 聖地
明治28年、日清戦争から戻って来た鶴見中尉は、新潟県新発田市にいました。そして鶴見のもとを訪ねたのは、まだ14歳の宇佐美時重でした。鶴見と共に練習していた道場の敷地に稽古の無い日も来てしまうと宇佐美は言い、“(ここは)僕らの聖地らすけ”とも告げました。
更に2年前にさかのぼり、12歳だった宇佐美は共に学校へ通っていた高木智春と一緒に道場に通い、鶴見との手合わせを行っていました。
ある日、雪道で鶴見と宇佐美が一緒になった際、宇佐美は学校を卒業したら父親の野良仕事を手伝わないといけないから、道場へ通えるか分からないと鶴見に告げます。
それに対し鶴見は“キミはもっともっと強ぇなる、続けんだれ”と宇佐美を励ますうえ、朝鮮半島に問題が発生し自分は道場へ通うのが難しくなると話します。
季節は変わり春となり、宇佐美と高木との道場での手合わせが終わります。宇佐美が道場からいなくなった後、高木が一人道場で座り込んでる様子を鶴見が尋ねると、“結局いっぺんもあいつ(宇佐美)に勝てねかった。おら…こん道場に通うんは今日で最後らんですがね”と落ち込んだ様子でした。
そして直ぐに高木は直ぐに道場の外にいる宇佐美のもとへ行き、自分は学校を卒業したら東京へ向かうから、宇佐美と手合わせるのも最後だと伝えます。すると宇佐美はその事を知っており、高木が自分との勝負に勝ちたい一方、友達である自分とは戦いたくない事を悟っていました。
そこで鶴見は、(道場主が鍵をかけて出て行った為に)敷地内で心置きなく勝負する様に提案します。“(宇佐美)時重に勝てればオラ…東京でもひとりで頑張れっと思うすけ”と思いつつ、涙ながらに宇佐美への勝負を挑みますが…。
嫉妬や妬みはつくづく人の人生を狂わせるものだと、この回を読んでも伝わって来ます。高木の純粋な行動、言動さえも宇佐美の前では“憎しみ”に変わってしまうので、手の付けようがないですね。
第227話 共犯
宇佐美との試合に挑んだ高木でしたが、宇佐美はそれまでの穏やかな表情が突如豹変し、怒りに満ちた顔で高木を投げ飛ばした後に彼の首を力いっぱい踏みつけ、失神させます。宇佐美の凶暴さに思わず止めに入ると、宇佐美は広い場所で行う様に言われたのだから行ったとだけ答えます。何故親友にこんな事をするのだと鶴見が聞くと、“親友ぅぅ?いつらたって「(鶴見)篤四郎さんとの時間」を邪魔しくさって”と、再び宇佐美が怒り狂ってこう告げます。
また宇佐美は、高木の父親が第二陸軍の上部で鶴見が目をかけていた事、高木が東京の陸軍幼年学校へ行く事、そして高木がこれらの事を言わないで見下していた事に関しては許すと宇佐美は言います。
しかし、道場内から聞こえて来た高木と鶴見とのやり取りは聞き捨てならないと言います。高木に対し、鶴見が“気持ちの強さは時重くんに負けてね。そん気持ちがずっとあんたば、ぜってに智春くんのほうが強えなっがな”と声をかけた事に我慢できないというのです。
宇佐美は、“僕にはそんらけらったんだでに!!篤四郎さんが僕を一番らと!!認めてくれていたことらけが!!僕のすべてらったてがんにッ”と、狂った様に鶴見に叫びました。
鶴見は“すまなかった”と宇佐美を抱擁し、道場で高木に言った言葉は、彼に諦めて帰らせる為だと伝えます。そのうえで“キミはずっと私の一番らんだれ”と鶴見が話すと、さっきでの怒りが嘘の様に笑顔になった宇佐美でした。
しかしその直後、高木の亡骸を見つめながら“共犯らいね、僕たち…”と、鶴見に確認するかの様に言います。その後、鶴見が乗って来た馬に蹴られて高木が死んだという事にし、その知らせを聞いた高木の父親が怒り狂って鶴見の馬を撃ち殺しました。
そんな過去の出来事を振り返りながら、宇佐美は“ここは僕が初めて人を殺した場所(僕の童貞喪失)ら。こん聖地へ何度も来ては、あん日のこと(僕と篤四郎さんだけの秘密)を思い出すんでがね”と、やや恥ずかしそうに語るのでした。
ただ鶴見は“自分の馬が高木を蹴り殺した”事で親からの恨みを買い、第二師団に居づらくなり、北海道へ左遷される事になったそうです。けれども、それによって自由に行動できるうえ、宇佐美の存在がこのまま潰れてしまうのは勿体ないとも言います。
そして、鶴見は“(北海道の)第七師団で待ってるすけな”と、宇佐美へ告げたのでした…。
常に鶴見に認めてもらえないと気が済まない宇佐美の思いが、殺人へと発展する“エゴイズム”は、現在でも有り得ると思いました。欲望は間違ったら、とんでもない方向へ進む事が強烈に表現されていたと思います。
第228話 シマエナガ
杉元・アシリパ・白石の三人は、松田平太が所持していた砂金サンプルの包みに記載されている採取場所「空知川」を訪れ、この流域に住むアイヌの集落をめぐり脱獄囚・海賊房太郎を追っていました。
その途中、杉元は羽を怪我した1羽のシマエナガ(北海道に生息する野鳥)を助けますが、深い霧に遭ったうえ、雪の坂から滑り落ちアシリパ達とはぐれてしまいます。
杉元は必死にアシリパを呼び求めるも会う事はできず、日が暮れ始め、仕方なく偶然にも倒れた大木でできた洞窟で一夜を過ごす事にしました。
薪を集めて火を起こしたなか、アシリパが以前作った「携行食」を食し、シマエナガにも分けて、一夜を過ごしました。翌朝、近くで物音がして杉元は目が覚めて、アシリパが来たのかと思い、慌てて外へ飛び出します。
しかし目の前にあったのは、大きなヒグマの足跡でした。もしそのヒグマが若いオスだったら注意が必要、大きなオスは中年だから無駄なケンカはしないと、「携行食」を食してはさえずるシマエナガに語りかける様に、杉元は一人で口にしていました。
続けて“戦争もオッサン達が最前線で戦えば良いんだよな。命令されても、誰も戦わなくてグダグダでみんな飽きて帰るかも…、未来ある若者が死ぬのはもったいないだろ?”と、杉元は自身の戦友の事を思い語るのでした。
二日、三日、一週間経っても霧は晴れず、アシリパ達にも会う事ができない杉元で、空腹のあまり神経もマヒしてきます。
そして、“おのれも(「携行食」を)ガツガツ食ってたくせに‼羽をムシって食っちゃうそ‼”とシマエナガに怒鳴りますが、直ぐに我に返り絶対に生きて山から脱出しようと言い“俺は不死身の杉元だ‼”と叫びますが…。
やはり杉元の様に、何日も“終わりのない状態”が続いていると、感覚がマヒしてしまうのでしょうか。冷静ささえも失われ、“不死身”という言葉も、ここでは脆くも崩れた様な感じがしました。
第229話 完璧な母
鶴見の指示で、谷垣は杉元やアシリパらを追い探し求めていましたが、自分は杉元を殺せる程の冷徹さを持っていないうえ、そんな事をしてもアシリパはいう事をきくはずがないと考えていました。
金塊争奪戦が終わるまでの間、アシリパらを捜索するフリもやろうと思えばできるが、いつこの戦いは終わるか分からず、インカラマッ、そして生まれて来る子供にも会えない。そう考えると、アシリパ達を探すしか選択はないと谷垣は思っていました。
その頃、小樽市内の病院にインカラマッがおり、妊娠9ヶ月程経った彼女のお腹はとても大きくなっており、いつ子供が生まれてもおかしくない状態でした。それまで彼女を見守っていた家永は、インカラマッの出産を手伝いたいと告げました。
その夜、部屋にインカラマッのもとを訪れたのは谷垣でした。強く抱きしめる彼に対し、“来てくれると分かっていました”とインカラマッは話しました。谷垣は、アシリパをフチ(祖母)のもとへ帰す事はできず、自分には逃げる道しかないと話します。
更に谷垣は、“でもせめてお前と生まれてくる子のそばにいたかった、危険を犯しても!!”と、覚悟の意を示します。
それに対しインカラマッも、“私がここに来て欲しいと願って…(彼女を探しに網走の病院を訪れていた谷垣へ)絵葉書を送ったのだから、覚悟は出来てます”と、目にうっすら涙を浮かべながら答えました。
その時、部屋の外から軍靴の足音が聞こえ、二人に緊張が走ります。人影が部屋の入口に止まると、谷垣は銃を構え少しずつその方向へ向かいます。そして、カチャリとドアを開け様とした瞬間、裸足の月島がドアを力ずくで蹴り上げながら入って来ました…。
谷垣に、命をかけて“守るべき存在”ができた時だと思え、彼の大きな心情の変化が見られました。その事は、直ぐに訪れる月島との戦いからも感じ取れました。
第230話 家永カノ
ドアをこじ開け入って来た月島は、谷垣を鶴見の“裏切り者”とみて彼に銃を向けます。その時、家永が背後に立ち月島の首に麻酔を注射します。しかし振り向いた月島が発砲し、家永の胸部を銃弾が貫通します。すぐに谷垣が応戦し、その場で月島との激しい肉弾戦となります。そして谷垣が月島に羽交い締めにされ、谷垣の頭部ギリギリ寸前の床に銃弾が発砲された瞬間、麻酔により月島は気を失います。家永は、月島が2時間は動けない、その間にできるだけ遠くに逃げる様に告げ、力尽きます。谷垣とインカラマッは急いでその場から去ろうとした時、目の前に鯉登が銃を構え立っていましたが、彼は二人に“行け”とだけ告げました。
谷垣とインカラマッは、一頭の馬に乗り逃亡し、山奥にある無人の廃屋に辿り着きます。インカラマッが苦しむ一方で、先程の月島との戦いにより谷垣も頭部や右足を負傷していました。しかし休む間もなく、既に月島が谷垣の血痕を便りに追って来ていました。
そして谷垣が廃屋の扉を開けた瞬間、月島が銃を発砲、谷垣はインカラマッに裏口から逃げる様に言います。谷垣は自らの銃で応戦するも、それを銃弾をかわした月島が谷垣に飛び込み、またも激しい肉弾戦へ突入します。
月島が谷垣の頭部を激しく殴りつけたのに対し、谷垣は月島の体を持ち上げ、力ずくで廃屋の外へと投げ出します。
谷垣が外へ出ると、馬の隣で待機していたインカラマッが声をかけます。馬に乗り逃亡する谷垣とインカラマッ目掛けて、月島の発砲は続き、谷垣の右肩に銃弾が命中します。
奥の雪山まで着き、月島から逃れた二人でしたが、今度はインカラマッが破水したと告げます。これ以上無理をかけられないとして、馬を置いて、谷垣はインカラマッを抱えて進む事にしました。
“頑張れインカラマッ、辛抱してくれ、大丈夫だ!!俺がついてるから、頑張れ!!全部上手くいくから…!!”と、谷垣はインカラマッを励ましながら、先へ先へと必死に走ります。そして、辿り着いた先は…。
鶴見の命令で動き、ちょっとした障害(ここでは家永による麻酔)はびくともしない月島に、谷垣は目を付けられてしまったのかなと思いました。そんななかでも谷垣とインカラマッ、二人の関係はますます熱くなっている様に感じられました。
第231話 出産
谷垣がインカラマッを抱きかかえ辿り着いた先は、アシリパのフチ(祖母)が住むコタン(住居)でした。
ここは第七師団の兵士が見張っていないか谷垣が不安を抱くも、間もなくやって来たアイヌの女達が兵士には酒を飲ませ、子供が顔を踏んでも起きないくらい酔いつぶれてるから大丈夫だと話します。
仰向けに座らせたインカラマッの下半身に布を被せ、隣に寄ったフチは彼女の体に触れ、男か女か調べているとの事です。フチは19歳の頃からお産を助ける百戦錬磨のイコインカㇻマツ(とりあげ女)と言われており、アシリパの時も立会いました。
インカラマッをフチ達に託して、ここに向かっているであろう月島を山で迎え撃つと告げます。そして猟銃を手にコタンの入口へ向かうと、目の前に月島が現れ猟銃を取り上げ、谷垣を蹴り飛ばします。
“俺だけ殺せ、インカラマッやフチたちには何もするな”と訴える谷垣に対し、“お前は選択を間違った”と銃を向けます。その時、馬に乗りやって来た鯉登が月島を止めに来ます。
“「脅し」は実行しなければ意味がない”と言い、もし邪魔をするなら鶴見中尉を裏切った事になると、鯉登にさえ銃を向ける月島でした。すると鯉登は“銃を下ろせ、これは上官命令だ。私は鶴見中慰殿と月島軍曹を見届ける覚悟でいる”という言葉に月島は心が一瞬揺れ動きます。
また鯉登は、月島が以前語った“鶴見中慰殿の行く道の途中で皆が救われるなら別に良い”という言葉に同意見と言い、もし自分や父親が利用されていても構わないと話します。
一方で、鶴見に本当の目的があるなら見定めたいとも話し、その先に納得する“正義”が無ければ、後悔と罪悪感にさいなまれると告げる鯉登でした。
それに対し月島は、自分はもう遅い、多くの者を殺してきたうえ、大切なものを捨てて来た、自分の仕事をやるしかないと答えます。“その厳格さは捨てたものの大きさゆえか?”と鯉登から聞かれた月島の脳裏には、かつて恋した女性の事がよぎっていました。
インカラマッが月島が思う女性の行方を占おうとした時、彼女は痛みで苦しみ出し、もう生まれる直前だと言われます…。
血生臭い武器を持った男達の前でも、一切動じないアシリパのフチの冷静さに力強さが伝わって来ました。またインカラマッの子供が生まれる直前になり、谷垣や月島達が出産の手伝いをアイヌの女から指示され、タジタジになるところは、ちょっと面白かったです。
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