『マネーの拳』第1巻は、プロボクサーの花岡拳は現役引退後、幼馴染みのノブと自らの居酒屋を経営していましたが客足は伸びていません。そんななか花岡は実業家の塚原為ノ介との出会いがあり、彼から多額の投資をしてもらう機会を得ます。その後、花岡の努力も実り、居酒屋の売り上げも上昇し、新しい事業にも着服しようとしますが…。
漫画『マネーの拳』1巻にはRound1～Round8までが収録されています。
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目次
Round.1 ゴングの響き
プロボクサーの花岡拳は、世界フェザー級王座を4度防衛の後、自身の力に限界を感じ引退をします。
それから約1年後、花岡は自身の居酒屋を経営していましたが、客足は伸びていません。社員のノブと共に今後の事について話し合うも、良い案が出ません。
花岡としては、焼肉店を開店したいものの、良い物件や資金が無く、タレント業に専念したらどうかというノブの意見にも納得が行きません。
花岡に危険な橋を渡らせない様にするノブに対し、花岡は“商売より百万倍リスク高いボクシングで、頂点立ったんだぞ。実業家としても絶対成功してみせるべや。”と強く言い聞かせます。
後日、花岡はテレビ局にいました。そして、バラエティー番組に出演し自身のトークで共演者を盛り上げていました。また、同じ番組に実業家の塚原為ノ介も出演し、自身の豪邸や高級腕時計等の財産について紹介され、共演者を驚愕させました。
番組収録後、塚原は花岡に声を掛け、機会があれば自分の家に遊びに来る様に言います。すると花岡は、これからでは駄目かと尋ねると、塚原はあっさり承諾します。
花岡とノブは塚原の高級マンションに招かれ、自分の生い立ち、プロボクサーになってから引退までの経緯、引退後の商売が伸び悩んでいる事を、塚原に打ち明けました。そんな花岡に対し、“商売で絶対に失敗しない方法”があると塚原は言い、それは“商売をしないことだよ。”と告げます…。
第二の人生を歩むには勇気がいりますし、歩み始めてからも様々な困難が待ち受けている事が伝わっている様に感じられます。けれども、花岡の様に立ち止まらず自らアクションを起こす事により、思わぬチャンスも転がって来る事も伝わって来ました。
Round.2 秘伝開陳
花岡は、塚原から事業資金1億円を目の前で差し出されるが、“今経営している店を即刻閉めること、そして飲食業から徹底すること”を条件に出し、3分以内に決める様に告げられます。人生の選択を迫られた3分は花岡にとってとてつもなく長く感じつつ、刻々と過ぎて行きます。
時間は30秒を過ぎようとしていた時、花岡は“わかりました…この一億…いただきます。”と言い、隣にいたノブは驚きます。
続けて花岡は、今自分が入居しているビルのオーナーに貸付け金があるうえ、利息分をそのビルに抵当権を設定した事を話します。すると塚原は、花岡が今経営している店を閉めたくない事を察しつつ、“それで正解だ。”と言います。
更に花岡が言う“ビルオーナーへの貸付け金”の話も嘘だと塚原は言い、花岡には商売人として持つべき第一の極意を持っていると告げます。“それは…まず嘘つきである…ということだ。”と塚原は言い、“成功する者”と“失敗する者”の違いについて話し始めます。
初めは皆、誠実な商売を始めつつも、軌道に乗ると都合の良い嘘で固めた“ルール”を作り出しては押しつけ、（グラスにワインを並々と注ぎつつ）嘘で一杯になり、信用を失い市場から退場命令が出ると告げます。
大事なのは、“嘘を嘘のままでは終わらせない、それを真実に転化させてしまう。あるいはリセットして泡のように消し去ってしまう。本物の嘘つきは、嘘をつかない…ということだよ。”と言います。
花岡は、自分のこれまでの上手く行かなかった経営状況を振り返りつつ、“この一億、俺に投資して下さい。”と、改めて塚原に願い出ます…。
大きな選択を迫られた時の時間は確かに長く感じるのかもしれず、この時の花岡の様に僅か1分でさえも永久の様にさえ感じるかもしれませんね。かといって、優柔不断に決められないようでは歩んで行けない事も感じられます。
Round.3 正面対決
花岡は店の閉店後に、店長の鈴木と料理長の松島を呼びます。そして花岡は彼等に、今の店の経営状態が危ない事を話しつつ、“根本的な改革をする。”と言います。客が入らない理由として、この店に充満している“嘘”だと言い、“今からその嘘をすべてさらけ出す！”と告げます。
“嘘”とはどういう事かと聞くと、自分達が客に嘘をつきながら商売をしていないかと、花岡は答えます。また花岡は逆数が増えない理由として店に魅力が無いと指摘し、一番に“料理”だと言います。
この店の料理は、色々な店の物をパクっており、そんなゴマかしが見抜かれているのではないかと花岡は言います。そんな彼の言葉に渋い顔を見せた松島が、“ウソウソっていうけど、世間じゃ十分これで通ってるんですよ。”と口を挟みます。
また鈴木も、花岡が言う「嘘」も飲食業界では常識だと告げます。花岡に対しては知名度があるからタレント活動等で店の宣伝をする様に言い、店の事は任せる様に言い、“改革”に対しては耳を傾けず鈴木と松島はその場を後にします。
二人が帰った後、事務室にて花岡は苛立ちを覚えつつも、飲食業界のプロをナメていた事を悔やみます。鈴木と松島が自分達に協力する気がないと捉えた花岡は、“こっちにも覚悟があるべや”と次なる策に移ります…。
何か新しい事を始めようとすると、必ずと言っていい程に批判を受け、これまでの波風立てない様なスタイルをキープしようとするのが世間なのかなと思いました。新しい事を行う場合は、花岡が言う様な“覚悟”を持って行う必要があるのかなと思いました。
Round.4 改革の風
花岡は、バイト従業員の石貫を料理長に、佐伯をホール責任者に指名し、鈴木や松島を降格する事を全従業員の前で報告します。鈴木は驚きを示す一方で、松島は“面白ぇ…やれるもんならやってみろよ！”と冷静な目で見つめていました。
“さあ、第一ラウンドの戦闘開始だ！”と思いつつ、花岡は従業員一人一人に声を掛け協力をお願いしたのでした。
そして、再スタートした居酒屋「拳」ですが、初日は予算達成率58%と思う様に伸びず、苦戦します。
それでも花岡は、閉店後の話し合いにて全てのメニューを変更する事と、OL等の女性客をターゲットにヘルシーメニューを豊富にする事を提案し、これらを3日以内に実現させる様に言います。
とても3日は無理だと答える石貫に対し、“やるんだよ。お前もプロなら無理なんて言葉は二度と使うな。”と一喝します。また花岡は、ノブに全国の郷土料理をインターネットで調べて石貫をフォローする様に言います。
帰り際、ノブは何故石貫や佐伯を指名したのか花岡に聞くと、石貫は男前で佐伯は美人である事と、“経営者のカン”だと答え、信じるのは自分の閃きとカンだと告げます。
その3日後、ファッションも学んでいるという佐伯の手により、殺風景だった店の席がミニクッションを置く等して和やかな感じになりました。また石貫もまた、“嘘をつかない店”を目指し“本物にこだわり妥協のない仕事をしろ。”と言う花岡の言葉を受け入れ、確実に目付きが変わっていました。そんな花岡や従業員の熱意と行動により、店内は大繁盛となりました。すると花岡は感じていました、“風だ！いい風が吹いてきた！あの暗く澱んだ空気が消し飛んでいく！空気が変わっていく！やったぞ！これで店が生まれ変わる！”と。その矢先、松島が店を辞めると願い出て来ます…。
何か良い雰囲気を感じ取った、または依然と明らかに変わった時、ここでいう“風”の様なものを感じられる事はある気がして、とても心地良いのではないでしょうか。また花岡は苦難な状況にあっても、前向きな姿勢を行う事により“閃きとカン”が出てくるのかもしれません。
Round.5 一億のカン
店が右肩上がりになり始めた時、花岡のもとへ塚原が訪ねて来ます。塚原は、店の経営改善に着手した花岡の様子を見に来たとの事です。
黒字にできるかどうかは2ヶ月後の事で、早すぎるのではと花岡が聞くと、“一瞬見ればそれが可能かどうかはわかる。”と塚原は答え、経営はスピードが命とも告げます。
塚原は活気づいた店の雰囲気を見て納得する様に“店の中に命の鼓動が響き血が脈々と流れ、まさにこの店は生きている！”と言います。
以前より店の状態は想像以上に良くなっていて、花岡の能力の高さが証明されたと判断した塚原は、“合格だ”と告げ翌日早朝に連絡するから訪ねて来る様に言い帰って行く。
その後、花岡はノブと二人で話し、話が早すぎて現実味が無いと気乗りしないノブに対し、花岡は塚原の話に乗ると言います。
勝ち抜くのが難しい飲食業界の中で新しい可能性に賭けてみたいうえ、飲食商売の基本である“正直で誠実”というのが性に合わないという花岡は、“もっと…でっかい嘘がつきてえ…”と告げ、己の野心を抱いていたのでした。
翌日、花岡とノブは塚原がいる競馬場まで足を運びます。本題に入ると言う塚原に対し、花岡は何故彼が自分への投資（1億円）を直ぐに受け入れたのか、理由を尋ねます。すると塚原は“私はね…天国に行きたいんだよ。”と答え、その言葉に花岡とノブは動揺しますが…。
塚原が“一瞬見てわかる。”と言った様に、店やそれぞれの場所に対し、生き生きしている感じは見る者にしっかり伝わって来ると思われます。それは、今の状況を楽しんでいる事で気持ちも周りに伝わってしまうのかなと思いました。
Round.6 過酷な条件
花岡は塚原から、新規事業としてホームレスを10人雇う事を提案され、戸惑います。その時、突然ノブが立ち上がり、塚原に投資の話は打ち切りにして欲しいと頭を下げて来ます。
花岡は驚き彼を止めようとするも、ノブは強引に花岡と共にその部屋から出て行きました。何故勝手な事をするという花岡に対し、“オラに断ってもらって内心ほっとしてんでねえが？”とノブは答え、花岡の心は揺らぎます。
その2週間後、居酒屋「拳」の売り上げは順調に伸びてる一方で、花岡とノブは焼き肉屋を開店する為に不動産業者と物件を探していましたが、中々予算に合った場所が見つかりません。
その合間に花岡は、かつて自分が所属していたボクシングジムを訪れ、自分が世話になっていたジムの会長を訪ねます。
会長は今ジムで売り出している新人の坂東を紹介し、彼を見てると花岡と似ていると言います。花岡もまた、トレーニングに励む坂東を見ながら、現役時代の自分と重ね合わせていました。
しかしふと近くにある鏡を見た瞬間、花岡は老いた自分が写し出された様に見え、“今の自分は生きてねえ…こんなの俺じゃねえ！もう一度戻るんだ、世界の頂点、目指していた頃の俺に！”と心の中でそう誓ったのでした。
後日、花岡は塚原と再会し、彼が提案した“ホームレスを10人雇う”事業を立ち上げる事を申し出ました。
塚原は、決断まで時間がかかったという経営者として反省すべき点として、一つのペナルティを花岡に課してきます…。
花岡とノブは幼馴染みとはいえ、全く対照的で前者はチャレンジャータイプで後者は安全に道を歩みたいタイプなのが伝わります。そんな行動も全然異なる二人の事を塚原は見抜いていたのかなと思えました。
Round.7 ホームレス選抜
塚原は新規事業を行うにあたり、ノブを解雇する様に花岡に言います。花岡は驚きつつ、その理由を尋ねます。塚原は、ノブが突発的な行動を起こすと指摘、切羽詰まって破れかぶれな行動に出る人間は商売に向かないとも告げ、連携を解消すべきだと花岡に言います。
花岡はそれを拒否する資格が無い為に承諾するも、花岡からも提案を申し出ます。それは、ノブに飲食部門を任せ、新規事業には関わらせないというものです。
塚原は承諾するも、“ただし…これだけは予告しておこう。いずれ君は彼と決別する時が来る。その覚悟だけはしておけ。”と念を押す様に花岡に言いました。
その後、花岡はノブと二人で話し、ノブも新規事業の件を承諾します。またノブからも、新規事業と今やっている店（居酒屋）の財務は完全に分別する条件を告げると、花岡はそれを受け入れ完全分離で行き、いずれは店の経営権はノブに譲渡する事を約束しました。
翌日、花岡は多くのホームレスが集まる河川敷におり、新規事業の為の第一歩を歩もうとしていました…。
花岡の今後の事についてハッキリすると、ノブも飲食業に専念すると延べた様に、モヤモヤ感がなくなると新しい行動に一歩踏み出しやすくなるのではないでしょうか。不透明や曖昧なままですと、不安ばかりが残りそうですね。
Round.8 事業への一歩
花岡によって集められたホームレス数人は、特にこれと言った仕事は決まっておらず、それぞれ「花岡企画」と書かれた上着を着て恵比寿駅前にて黙々と掃除を行っていました。なかには、昼間から自動販売機で買った酒を飲んでいる中高年の男もいました。
花岡は事務所にて、今回集まった一人一人のプロフィールを見ては溜め息をつきます。また彼等の人件費、事務所の家賃、諸経費等の出費を考え、新しい事業を立ち上げる事に焦りながらも、良いアイディアが思いつきません。
花岡が再びホームレス従業員のもとに行くと、酒を飲んでいた中高年男性・小池を責し、近くにいた日高に監視してる様に指示します。
更に花岡は、“お前らもそうだ！クズ野郎から抜け出したかったら、ちゃんとまともになれ！まず真人間になって、仕事はそれからだ！”と周りの者に強く言い聞かせます。そう言うと、花岡は一同に解散と言い、日高に事務所を締めて帰る様に告げます。
その頃、居酒屋「拳」では佐伯がノブに花岡が最近見かけない事を聞くと、花岡が新しい事業を立ち上げそれに専念するから暫く来ない事をノブが話し、佐伯は少し寂しそうな表情をしていました。
一方、花岡は事務所に忘れ物を取りに来て、部屋のドアを開けた瞬間、人の気配を感じます。そして誰かがその場から逃げ出そうとし、花岡が捕まえたのはホームレス従業員の一人である西野でした。
西野を一旦、事務所内の椅子に座らせ何故この様な事をしたか花岡が問い詰めると、明日が手形の期日でこれを乗り切れば工場をやり直せるのではと思い、金目の物がないかとつい事務所に侵入してしまったとの事です。
その話を聞いた花岡は首を傾げます。実は彼が履歴書に書いていた“会社をリストラされた”というのは嘘で、縫製工場（受注生産）の二代目社長だったそうです。
しかし経営難で多額の負債を抱えてしまい、家族からも逃げられてしまったと西野は言います。西野に対し、花岡は今更どうしようもないから工場はあきらめる様に言います。
西野が帰った後、花岡は一人で考えますが、多額の負債がある工場を買い取っても将来性が無い、思わぬチャンスがあるとも考えにくいとも思っていたとはいえ、何か頭に引っかかるものがありました。
そんなとき、“起業家として必要な素質はなにか。それは一生衰えないカンとセンスだ。”という塚原の言葉を思い出し、“そうだ、カンだ！なにかを感じたことは確かだ。”と花岡は思わず立ち上がります。
そして次の日、西野含む「花岡企画」従業員達の前で、花岡が起こした行動は…。
西野が履歴書を偽った様（本当はダメですが）に、初めて会う人に本当の自分をさらけ出す事は結構勇気がいるのかもしれません。けれども勇気を出した事で、思わぬ展開がめぐって来る事もあるのかなと感じられました。
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