漫画『アンゴルモア元寇合戦記』4巻ネタバレや感想など｜弥次郎の最後…

たかぎ七彦先生による鎌倉時代中期に起きたモンゴル帝国・属国の高麗による対馬侵攻の戦いを描いた『アンゴルモア元寇合戦記』。

第4巻は、蒙古軍が攻めて来て、戦いは益々激化の一途をたどるなか、迅三郎の目の前で共に戦った男の命が消えようとしていました。戦いの僅かな休息の中、迅三郎が眠りに就いていると、かつて御家人だった時に起きたある“事件”を夢にまで見ていました…。

第十三話

迅三郎達は道中で鉄砲玉を食らい、大打撃を受け、同時に蒙古軍が攻めて来ます。そして、蒙古軍兵士達は容赦なく対馬側の兵士を次々と殺害し、（彼等の将軍に見せる「戦利品」として）鎧を剥ぎ取ります。

そんな猛攻に対し、迅三郎は抵抗を続け“息がある者立てっ!!破れた入り口は俺が断ち塞ぐ!!”と言い、蒙古軍を斬ります。そこへ弥次郎や他の者達も加勢し、蒙古軍を囲みます。“袋のネズミだ、突き殺せ!!”と迅三郎が叫ぶと同時に、一同は一斉に攻撃を仕掛けます。

一方、輝日は遠く陰に隠れ、蒙古軍将軍のウリヤンエディの背後から弓を放ちます。“仕留めた!!”と思ったのも束の間、彼の部下達が自らそれぞれの手や腕で弓矢を受けます。

そして、他の部下達が直ぐにウリヤンエディを囲み、攻撃してきた方向に向けて弓を打とうとしますが、ウリヤンエディが止めます。彼は遠くから見えた、輝日を見て一目惚れ“是非とも手に入れたい”と言い、彼女を捕まえる様に部下達に告げます。

その頃、蒙古軍との戦いに決着が着いた迅三郎達はその場を立ち去ろうとします。すると、またも前から蒙古の大群がやって来ます。弥次郎が弓を構えるが、蒙古の兵士が一人、大きな筒の様なものを構えていました。その瞬間、筒の穴から防弾が発射され、弥次郎の胸部に射ぬかれます…。

戦場における“死”は、映画やテレビのようなカッコイイものではなく、無惨としか言いようがないものに感じられます。また蒙古側の身を割いてでも上の者に尽くす痛々しさは、ある意味“洗脳”に近いかもしれません。

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第十四話

迅三郎は、蒙古の凶弾により命を落とした弥次郎の亡骸を前に“これからの男だった”と告げ、首を斬り落とします。そこへ輝日がやって来て、蒙古の将軍を仕損じた事を報告します。そんな彼女に、迅三郎は“こっちは大将を失った、阿比留弥次郎殿”と言い、彼の首を差し出します。

輝日は弥次郎の首を持ち上げ、“…父上兄上の御首と違い、まだ温もりが残っておられる”と涙します。迅三郎らと同行し、蒙古軍の動きを探っていた　が顔を出し、佐須の蒙古（高麗軍）が動き出したと言い、近くまで来ているとも告げます。

白石達は、“我らは対馬という火のついた鍋の中を小魚よ、どこへ逃げようが結局煮て食われる”と言います。それに対し迅三郎は、“これは天祐（「天の助け」の意味）かもしれん”と答え、自分達を追う“二種類の蒙古（蒙古と高麗）”が鉢合わせとなったらどうなるかと告げます。

また迅三郎は、髪型、服装、戦のスタイル等から、国府から来た蒙古軍と佐須にいた蒙古軍とは違い、言葉も通じ合っていないと指摘します。そのうえで、迅三郎は“（蒙古軍達の）混乱に乗じて今日をやり過ごせる、そうなれば皆が命と替えて稼いだ時が活きる”と告げます。

それに対し、迅三郎を批判する兵士もいて、そんな都合良く行かないと言うも、その言葉を迅三郎はあっさり一蹴します。そして“鍋の小魚とは面白い、小魚だろうと、暴れに暴れりゃ、万に一つ鍋が返って火が消えるかもしれん”と、迅三郎は蒙古達との戦いに更なる思いを燃やすのでした…。

“鍋の中の小魚”だろうが暴れて見せるという、迅三郎の“挑戦的精神”は図り知れないと思います。分野にもよりますが、チャレンジ精神の強い人が羨ましいと思います。

第十五話

一同が寝静まった夜、迅三郎も眠りに就くなか、自分が御家人だった時に起きた「事件」の夢を見ていました。それは、二年八ヶ月前に鎌倉で起きた事です。

御家人だった迅三郎は、北条時宗の親戚である名越時章と将棋の手合わせをしていました。朽井（迅三郎）家は名越家と二代にわたり、親交と恩義がありました。

そんなある日、時章から迅三郎は自分の父親、朽井汰三郎と将棋の手合わせをしなかったのかと尋ねられるも、迅三郎は“顔も覚えていない”と答えます。

迅三郎が父・汰三郎を最後に見たのは五歳の時で、義経流の修行で鞍馬山へ放り出される日の朝でした。自分とは違い体が弱くずっと寝込んでいた兄を、汰三郎は怒鳴り付けていたとの事です。

その話を聞いた時章は、“（親子して）腕前は違えど、将棋の指し方はよう似とるぞ”と迅三郎に告げます。その場を後にしようとした迅三郎に対し、時章は“しばらく当家に来るな”と言います。

名越家は執権の時宗に目をつけられていると言い、家同士のわだかまりも受け継がれてしまい、そこへ迅三郎に顔を出してもらいたくないとの事です。

“我らは諍いの口実を微塵も与えたくないのだ”と言い、子供や孫にも恵まれた時章は今の暮らしを守りたいとしながら、迅三郎と縁を切りたいという事ではないと告げます。

すると時章に対し、“太刀を腰にさげてこそ抜かぬと申せます、くれぐれも太刀までお捨てになりませぬよう”と告げ、その場を後にします。しかし、その時章が望む穏やかな生活も、脆くも打ち砕かれようとしていました…。

名越時章の様に、平穏な日々がいつまでも続けばいいのにと思う時がありますが、やっぱり思う様に行かないなとつくづく感じます。それは周囲の出来事や、自分自身の私情等も含まれると思われます。

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第十六話

森の中にて川の水で顔を洗う輝日の前に無数のホタルが飛び交います。そんなホタル達に紛れるかの如く、奥の方で一人の老人が立っていました。老人は輝日に自分を覚えていないかと聞くと同時に迅三郎はいないかと尋ねます。

名乗り出た迅三郎に対し、老人は“面構えがダメじゃ、下卑ておる、長嶺の申すとおりじゃ”と告げます。自分について来る様にと迅三郎に促し、「御所」まで案内すると言います。

その場を後にする直前、老人は“貴様の如き牢人流人が、「帝(みかど)」と直に口を利ける機会を得ただけでも分不相応（ふさわしくない事）と心得よ”と告げます。迅三郎は、ここのところ耳にする「安徳帝」を名乗っているかと尋ねると、老人はそれを教えると答え、その場を後にします。

輝日が“安徳帝の曾孫”だと聞いていた迅三郎は、老人が言った事を知っているのかと聞くも、“そう言い聞かされていただけだ”と輝日から言われ、老人の後を追う事にした迅三郎でした。

外見とは裏腹に、驚異的な脚力で駆け出す老人を迅三郎が追いかけ、幾つもの鳥居がある岩山までたどり着きます。そして、その奥へ入った迅三郎を待っていたのは…。

迅三郎は老人の出会いにより、ここからとても幻想的な世界へ入り込んで行くかの様に感じられます。森の中で飛び交っていたホタルが、なおそれを引き立てているかの様でした。

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